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10話
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「……」
「将軍?大丈夫ですか?」
王子の元を去った後俺は兵舎に戻り寝転んだが、全く眠れず朝を迎えた。朝食を終え、カインと昨日の訓練場で訓練をして休憩を行っている時、考え事をしていた俺の顔を心配そうに覗き込んできたカイン。
「あ、あぁ。大丈夫だ…」心配をさせたくないので笑顔で振る舞う。昨日のソラとグレンの距離の近さに少しだけ嫉いてしまった。
「……今日は訓練は無しにしませんか?」とカインの提案に乗ろうと考えたが首を振り「続けよう」と返事をした。
「大体の感覚は掴めた気がするんだ。まだ身体が成長していない分、身軽に動けるし…今のうちから力をつけておきたい。」自分の手を見つめながら開いたり閉じたりを繰り返す。
「将軍は昔から変わりませんね」と笑顔で言うカインに「当たり前だ」と微笑み返す。
「邪魔者は僕が消してやります」と意気込みながら堂々と言うカインに俺は慌てて口を塞いだ。誰かに聞かれたりでもしたら怪しまれてしまう。冷や汗をかきながら辺りを見回すが誰もいないことに安堵した。
━━━━━━━━━━「ねぇ…」
夕食の時間になりカインとは別行動で食堂に向かっている際、後ろから声を掛けられた。聞き覚えのある声に後ろを振り向くと小綺麗な服装に身を包んでいる髪の長い少年が立っていた。
「少し……話せる…かな?」
他の兵士をも虜にする艶のある肌。整った顔はとても幼く触れてしまえば壊れるのではないかという雰囲気に思わず見入ってしまった。
「ソラ………。」
「……駄目……かな?」
ソラの声にハッと我に返る。
(何を見入ってるんだ…。俺が好きなのはグレンだけだ。)
「いいけど、場所……変えようか」
兵士の沢山の視線に少し居心地悪そうにしているソラを見て、場所を変えて話そうと提案をした。
場所を静かな所に変えて俺はソラに話しかけた。
「見違えたね」
「そ、そうかな?……まだ着慣れてなくて恥ずかしいな…」
「元がいいから似合ってるよ」そう褒めるとソラは顔を赤くしてありがとうと礼を言った。
「そういえば…話ってどうしたんだ?」
「あっ…、えっとね……」
ソラのコロコロと百面相の様に変わる表情を見て俺はクスリと笑った。グレンがソラに惚れる理由が少しだけ分かったと同時に胸が苦しくなる。
「話し相手が……欲しいんだ…」
照れ臭そうに視線を下に向けながら話すソラ。
「……グレン王子は……?」
「仕事で忙しそうにしてるんだ。昨日は……少しグレン様に時間を割いて貰って散歩したんだ。」
「……」
「ひとりの時間って寂しいんだよね……。今までは話す人がいてくれてたからそこまでなかったんだけど…」
寂しそうに語るソラの瞳は少し悲しげだった。
「……わかった。話し相手になるよ。」
ソラの言葉に深く共感してしまった俺は、少し間を開け考えた後に話し相手になる事を承諾した。
「ほんと?!…ありがとう!」
瞬時にソラの瞳がキラキラと輝き出す。
「毎日ではないけど…」
「うん!全然いいよ!嬉しい!」
子犬のように喜ぶソラはとても可愛らしかった。
「えっと……、名前………」
(そういえば、まだ教えてなかったな…)
「慧羅だよ。」
「………。」
名前を教えた途端喜んでいたソラの顔が一瞬だけ引き攣り、ピタッと動きが止まった。
「…?」
どうしたんだ、と言いかけた時ソラは我に返り「何でもないよ!じゃあね!」と慌てて元来た道を走って戻っていった。
「将軍?大丈夫ですか?」
王子の元を去った後俺は兵舎に戻り寝転んだが、全く眠れず朝を迎えた。朝食を終え、カインと昨日の訓練場で訓練をして休憩を行っている時、考え事をしていた俺の顔を心配そうに覗き込んできたカイン。
「あ、あぁ。大丈夫だ…」心配をさせたくないので笑顔で振る舞う。昨日のソラとグレンの距離の近さに少しだけ嫉いてしまった。
「……今日は訓練は無しにしませんか?」とカインの提案に乗ろうと考えたが首を振り「続けよう」と返事をした。
「大体の感覚は掴めた気がするんだ。まだ身体が成長していない分、身軽に動けるし…今のうちから力をつけておきたい。」自分の手を見つめながら開いたり閉じたりを繰り返す。
「将軍は昔から変わりませんね」と笑顔で言うカインに「当たり前だ」と微笑み返す。
「邪魔者は僕が消してやります」と意気込みながら堂々と言うカインに俺は慌てて口を塞いだ。誰かに聞かれたりでもしたら怪しまれてしまう。冷や汗をかきながら辺りを見回すが誰もいないことに安堵した。
━━━━━━━━━━「ねぇ…」
夕食の時間になりカインとは別行動で食堂に向かっている際、後ろから声を掛けられた。聞き覚えのある声に後ろを振り向くと小綺麗な服装に身を包んでいる髪の長い少年が立っていた。
「少し……話せる…かな?」
他の兵士をも虜にする艶のある肌。整った顔はとても幼く触れてしまえば壊れるのではないかという雰囲気に思わず見入ってしまった。
「ソラ………。」
「……駄目……かな?」
ソラの声にハッと我に返る。
(何を見入ってるんだ…。俺が好きなのはグレンだけだ。)
「いいけど、場所……変えようか」
兵士の沢山の視線に少し居心地悪そうにしているソラを見て、場所を変えて話そうと提案をした。
場所を静かな所に変えて俺はソラに話しかけた。
「見違えたね」
「そ、そうかな?……まだ着慣れてなくて恥ずかしいな…」
「元がいいから似合ってるよ」そう褒めるとソラは顔を赤くしてありがとうと礼を言った。
「そういえば…話ってどうしたんだ?」
「あっ…、えっとね……」
ソラのコロコロと百面相の様に変わる表情を見て俺はクスリと笑った。グレンがソラに惚れる理由が少しだけ分かったと同時に胸が苦しくなる。
「話し相手が……欲しいんだ…」
照れ臭そうに視線を下に向けながら話すソラ。
「……グレン王子は……?」
「仕事で忙しそうにしてるんだ。昨日は……少しグレン様に時間を割いて貰って散歩したんだ。」
「……」
「ひとりの時間って寂しいんだよね……。今までは話す人がいてくれてたからそこまでなかったんだけど…」
寂しそうに語るソラの瞳は少し悲しげだった。
「……わかった。話し相手になるよ。」
ソラの言葉に深く共感してしまった俺は、少し間を開け考えた後に話し相手になる事を承諾した。
「ほんと?!…ありがとう!」
瞬時にソラの瞳がキラキラと輝き出す。
「毎日ではないけど…」
「うん!全然いいよ!嬉しい!」
子犬のように喜ぶソラはとても可愛らしかった。
「えっと……、名前………」
(そういえば、まだ教えてなかったな…)
「慧羅だよ。」
「………。」
名前を教えた途端喜んでいたソラの顔が一瞬だけ引き攣り、ピタッと動きが止まった。
「…?」
どうしたんだ、と言いかけた時ソラは我に返り「何でもないよ!じゃあね!」と慌てて元来た道を走って戻っていった。
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