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「そ……それは……、」
生前、お前に嫌われていたからだよ!と声に出しそうな勢いになるがグッと堪える。
グレン王子と俺が付き合っているのが気に入らなかったセドリックは、王子がいない隙をついて俺に嫌がらせを仕向けていた。勿論、俺は大人な対応でセドリックを無視していたが…。
「………。」
セドリックは身分が高いらしく、親のコネでグレン王子の傍についたと聞いた。
生まれ変わっても、セドリックの位置は俺を虐めるいじめっ子という立場なのか疑問に思った。
「なぜ何も言わないんだ……?」
「えっ………と、、、」
言葉が喉に詰まる。雰囲気や威圧が凄いという訳ではない。どことなく違和感があった。
「すいません!!」
「…?」
奴隷市場の見世物として外に出されていた少年が俺の横で勢いよくセドリックに向かって頭を下げた。俺は、なぜそいつが頭を下げたのか分からず首を傾げた。
「こいつの代わりに……謝ります!!」
そいつは頭を下げながら俺に指を指した。
思わず俺は「はぁ?!」と驚いた。
「なぜ謝る……?」
セドリックは目を細めながら少年に聞いた。
「今の時間、巡回の仕事をされているんですよね。それなのに、僕達のような奴隷に貴重な時間を使わせてしまったのと、こいつが何か失礼な事をしたんじゃないかと思い……」
俺を庇った少年の声が震えている。
震えるのも無理はない。最近は、兵士達が奴隷に暴力を振るうという事件が相次いでいるからだ。気に食わなければ最悪殺され、動物たちの餌となる。
「…………。」
セドリックは少年の必死の謝罪に何かを考え込むような仕草を見せた。
顎に手を置き、片手で肘を支えている…。あれは何かを企んでいる仕草だった。
「……王子……」
ボソリと呟く。本当なら既に此処、奴隷市場で俺と王子は会っているはずだった。それなのに、現れたのは王子ではなく…セドリック軍団長。
生前とは違う行動を起こしたら、未来が変わるというのだろうか。
「王子に……グレンに会えない訳じゃないよな……。」
そう考えるとズキ…と胸が苦しくなる。
「どうした。」
今度はセドリックの後ろから声が聞こえてきた。
懐かしい人の……俺の、会いたかった人の声だ。
「グレン王子。」
セドリックが慌てて後ろを振り向き頭を下げる。
「………っ」
王子の面影は俺が死ぬ前のあの頃と変わらず残っていて幼いが、大人びていた。
「奴隷市場か……。禁止したにも関わらずまだ、やっていたのか。」
俺たちの身なりや手錠を見て、王子は眉をひそめた。
「ひとまず怪我をしている者に手当をしろ。」
そう指示を出すと、頭を下げていた少年の所へ近づいていき「もう大丈夫だ。」と笑顔で話しかけていた。
生前、お前に嫌われていたからだよ!と声に出しそうな勢いになるがグッと堪える。
グレン王子と俺が付き合っているのが気に入らなかったセドリックは、王子がいない隙をついて俺に嫌がらせを仕向けていた。勿論、俺は大人な対応でセドリックを無視していたが…。
「………。」
セドリックは身分が高いらしく、親のコネでグレン王子の傍についたと聞いた。
生まれ変わっても、セドリックの位置は俺を虐めるいじめっ子という立場なのか疑問に思った。
「なぜ何も言わないんだ……?」
「えっ………と、、、」
言葉が喉に詰まる。雰囲気や威圧が凄いという訳ではない。どことなく違和感があった。
「すいません!!」
「…?」
奴隷市場の見世物として外に出されていた少年が俺の横で勢いよくセドリックに向かって頭を下げた。俺は、なぜそいつが頭を下げたのか分からず首を傾げた。
「こいつの代わりに……謝ります!!」
そいつは頭を下げながら俺に指を指した。
思わず俺は「はぁ?!」と驚いた。
「なぜ謝る……?」
セドリックは目を細めながら少年に聞いた。
「今の時間、巡回の仕事をされているんですよね。それなのに、僕達のような奴隷に貴重な時間を使わせてしまったのと、こいつが何か失礼な事をしたんじゃないかと思い……」
俺を庇った少年の声が震えている。
震えるのも無理はない。最近は、兵士達が奴隷に暴力を振るうという事件が相次いでいるからだ。気に食わなければ最悪殺され、動物たちの餌となる。
「…………。」
セドリックは少年の必死の謝罪に何かを考え込むような仕草を見せた。
顎に手を置き、片手で肘を支えている…。あれは何かを企んでいる仕草だった。
「……王子……」
ボソリと呟く。本当なら既に此処、奴隷市場で俺と王子は会っているはずだった。それなのに、現れたのは王子ではなく…セドリック軍団長。
生前とは違う行動を起こしたら、未来が変わるというのだろうか。
「王子に……グレンに会えない訳じゃないよな……。」
そう考えるとズキ…と胸が苦しくなる。
「どうした。」
今度はセドリックの後ろから声が聞こえてきた。
懐かしい人の……俺の、会いたかった人の声だ。
「グレン王子。」
セドリックが慌てて後ろを振り向き頭を下げる。
「………っ」
王子の面影は俺が死ぬ前のあの頃と変わらず残っていて幼いが、大人びていた。
「奴隷市場か……。禁止したにも関わらずまだ、やっていたのか。」
俺たちの身なりや手錠を見て、王子は眉をひそめた。
「ひとまず怪我をしている者に手当をしろ。」
そう指示を出すと、頭を下げていた少年の所へ近づいていき「もう大丈夫だ。」と笑顔で話しかけていた。
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