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しおりを挟む隣の部屋には1人で寝るには大きいであろうベッドが置かれている。凛ちゃんの写真に映っていた水色の枕を見つけたことで悔しさが湧いてきて、目の前の男を睨んだ。
「そうだよ。ここで凛ちゃんも俺の女になったの。圭もこれからそうなる予定だから」
ベッドに投げ込まれた瞬間に、転がって逃げをうつ。このまま上に体重をかけられては、非力な自分では逃げ出せないことは分かっていた。どうにか彼から逃れることはできたものの、彼がいるのはドア側で、自分がいるのは窓側だ。
「あーもう。嫌がる子をいじめるのは好きだけど、逃げられるのは好きじゃないの。大人しくしてくれないと、彼女の写真流しちゃうよ? ネットにも学校にも。もう二度と学校行けなくなっちゃうね」
「そんなことしたらお前だって立場悪くなるだろ」
「俺がそんなこと気にする常識のある人に見える? それに、彼女の心はもう壊れかけてるから、俺が頼めば『同意だ』って言ってくれるんじゃないかな」
彼女の写真はタチの悪い脅しだとは思ったが、本気で流出するつもりだとは思っていなかった。誰だって犯罪の証拠は隠したがる。彼女と付き合っていたことは周知の事実だったわけだし、目の前の男も本気でそれをしたら無傷では済まないはずだ。
でも、こいつはどこかおかしい。常識のある人に見えるかどうかの問いの答えは、「見えない」だった。傷つくのは、彼女だけかもしれない。
「何すればいいんだよ」
「さっきも言ったじゃん。俺の言うことを聞いてくれればいいの。これからずっとね。あ、高校の間は学校とかにはちゃんと行かしてあげるし、家にも帰してあげるから安心して」
そんな当たり前のことを安心材料と考えてしまえることに不安が湧くのだと、反論したくなる。不安はあったが、自分のために動いてくれた彼女の人生が自分の手にかかっているのであれば、受け入れざるを得なかった。
「ほら、そこに寝転んで」
なんで僕なんかが標的になったんだろう。僕がいなければ彼女は傷つくことはなかったんじゃないだろうか。どう考えても悪いのは目の前の男のはずなのに、自分が加害者になったかのような意識にさえなってくる。
「まぁ最初は寝転んでるだけで許してあげるね。恥じらっていろいろしてくれる姿も見たいけど、それはもう少し慣れてからね」
男の声をシャットダウンするように目をつむる。もう彼の存在を感じたくなかった。
「目つむると感じやすくなるって言うけど、それが目当て? かわいいね」
絶対にそうでないと分かっているはずなのに、揶揄ってそんなことを言ってくる。今、心臓発作でも起きて倒れてしまえばいいのに。そんなあるはずもないことを考えた。
「じゃあ、触るよ」
シャツの中に手が潜りこんできて、お腹をさわさわと触られる。満足したかと思えば、服と一緒にその手は頭の方へと上がってきて、上半身を裸にさせられた。
早く終われ、早く飽きろ。そんな気持ちで目をつむりながら、何も反応をしないように努める。驚く姿すら見せるのが癪だった。
「まぁ開発してないと上半身の感じ方はそんなもんか。これから覚えてこーね」
お腹の中心をつうっと指が滑り、そのまま下半身へとたどり着く。そこは男にとって急所とも言える場所だった。触り方はお腹と同じはずなのに、くすぐったさの中に変な感じが紛れ込んでいる。
「あは、目をつむる力が強くなったね。気持ちいいのを鎮めようとしてるのかな?」
何も感じない人形みたいになってやろうと思うのに、男の指の動きはいやらしさを増していく。それでも反応をしない僕に焦れたのか、ズボンとパンツが下げられ、それが直接外気に、そして彼の指に触れるようになった。
「ふっ、つ……」
先端や裏筋の気持ちいいところを的確に押さえる手の動きに、声が出ないまでも息があがっていく。なんとかその変化が分からないようにと、強く唇を噛みしめて顔を背けた。
「かたくなってきたね」
どんなに隠そうとしても、男の手に握られているそれは彼の目に触れたままだ。自分の感情を受け取ってくれない自分の体に、嫌気がさす。
「我慢はよくないよー。そんな圭もかわいいけどね」
容赦なくそれを扱かれ、どんどん快感が高まっていく。
「んんっ、……はぁ、はぁ、くそっ」
気付けば快感の波に溺れて、嫌いな手の中でイっていた。
「これからいろんなこと覚えてこーね、圭ちゃん」
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