5 / 5
05
しおりを挟む「ここ、やだ」
祐介と知らない人の情事の後を残した寝室なんて入りたくない。そう思って抵抗しようとするのに、祐介の方が体格もよく力も強いため逃げられない。
背中をドンと押されて前のめりになってしまえば、ベッドに横たえられるまでにそう時間はかからなかった。
「さみしかったら俺に縋ってこればよかった。それを待ってずっと見せつけてたのに、他の男に縋ったの?ありえないでしょ、俺の方が、ずっと遥のこと好きなのに」
祐介の言っていることはよく分からない。見せつけてたって何。縋るって何。分からないけれど、1つだけ嘘だと感じる部分があった。
「好きなんて、嘘じゃん」
もう彼はとっくに自分のことなんて好きではないはずだ。だからこそ浮気なんて真似ができるのではないか。そう思うのと同じくらい、「好き」とまだ思っていてほしいと願っていたはずなのに、口から出たのは疑念に塗れた言葉だった。
彼はそれを肯定も否定もせず、ただ大きなため息をつく。
「ほんと人ってめんどくさいよね。自分の価値観が相手に伝わるとは限らなくてさ。まぁ、いいよ。理解してもらえないのは知ってるから」
――ただ、体に分からせてやればいい。
そんな漫画みたいな決めゼリフを言ったかと思えば、無理やりに服を脱がそうとしてきた。
「なにす、やめっ……!」
抵抗しようとすればするほど向こうの力も入り、ついにビリっと布の音が鳴る。一度亀裂が入ってしまえば後は簡単で、ズボンは見るも無残な姿になった。
「あーあ、遥が抵抗するから破れちゃった」
お前のせいだろ、と言ってやりたかったのに、彼の目を見た瞬間にその声は喉の奥に引いた。それは眼光がとても鋭い、怒りと欲の混ざった目だった。
見とれているうちに、ついにパンツまで脱がされてしまう。
「そうだね、もっと早くこうすれば良かったね。我慢なんて俺ができるわけなかったんだよ。遥の代わりなんて、どれだけ抱いても満たされないし」
敏感なところに彼の手が近づいてきて、ぎゅっと握られる。冷たい手が、心臓に突き立てられた刃物に似ていて、息がひゅっと鳴った。
「萎えちゃってる? でも大丈夫、いっぱい練習したからね」
もしかして、練習って今までの浮気のことを言っているのか。体を触られながら他の人との情事を匂わせる発言に不快感が増す。なのに、彼の言葉通りそのテクニックは高いもので、じわじわと怖いという気持ちが他の気持ちに変わっていくのが分かった。
「はな、せ」
上に下にスライドされたり、先端をぐりぐりといじられたり。自分でするよりも強い力加減のそれは、的確に快感を呼び起こした。
気持ちよくないはずなのに、気持ちがよかった。
「はなさないよ、気持ちよくなってね」
目の前から祐介の顔が消えたかと思えば、自分の股の間に彼の顔がうずめられている。
付き合ってからハグと、いってもディープキスまでだったはずなのに、あろうことか彼はそれを舐めるという行為を選んだ。
「ん、やめ……っ、やだ」
「ひもいーい?」
きっと気持ちいいかを尋ねられたのだと思うが、それに声は返せそうになかった。「気持ちよくない」と返したいのに、あったかい口の中が気持ちよすぎて、今しゃべったらあられもない声を出してしまいそうだったから。
どんどんと高まっていくのが分かる。もう無理だという意思表示で彼の頭を離れさせようとしているのに、一向に離れてくれる気配がない。
「や、も、ダメ……んんっ!!」
最悪だと思った。人の口の中に射精をしてしまうなんて。無理やりされているのだからこちらには非がないと分かっていても、申し訳ない気持ちが湧いてしまう。
「ごめん……」
「なんで謝るの? 俺は遥のが飲めて嬉しいのに」
* * *
フェラに始まって、それからも様々な方法で攻め抜かれた。
最後までされることはなかったものの、後ろは「確認」という名目でいじられた。
今まで身体的接触をしてこなかった分、暴力的な快楽に翻弄されっぱなしだった。
「他の人を代わりにするのはやめる。その代わり、これから全部、遥が俺の欲を受け止めるんだよ。ずぅっと、愛し合おうね」
それは願っていたことのはずなのに、呪いの言葉のようだった。
25
お気に入りに追加
59
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)


【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?
いぶぷろふぇ
BL
ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。
ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?
頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!?
「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」
美形ヤンデレ攻め×平凡受け
※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです
※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる