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しおりを挟む「あっ、パソコン家に置いてきた……今日の講義ないとまずいよな」
「まだ帰ってもギリ間に合うんじゃね?取りに行ってこいよ。さすがにもう浮気現場に遭遇することもないだろ」
「そうだな。行ってくる!また学校で」
着替えや歯ブラシなどを用意するのに夢中で、次の日の講義のことをすっかり忘れていた。パソコンなんて主張の激しいものをなぜ置いてきてしまったのかと今なら疑問に思う。
急いで鍵を開けて、靴もぞんざいに脱ぎ捨て一段上がろうとしたその時、誰かに腕をぐっと引かれた。
「はるか、「ただいま」は?」
真っ暗なところから聞こえた彼の声は、今までに聞いたこともないくらい低い声だった。
「た、だいま」
なんで電気もつけずに家にいたの。っていうか学校はどうしたの。もういつもなら行ってる時間じゃないか。
色んな疑問が出てくるのに、強制された「ただいま」の言葉しか紡げなくなる。
「どこ行ってたの」
それは悪いことをした子どもを咎めるような声で、どうしてか罪悪感が湧いてくる。ただ僕は、これ以上傷つかないように逃げただけなのに。
「俺は、「早く帰ってきて」って言ったよね?」
だって、その言葉を送ってくる時は誰かをこの家に連れ込んでる時じゃないか。それを知っていて、どうして早く帰ってくると思うんだ。
色んな言葉が頭に動くのに、恐怖が体を縛って何も言えない。そんな僕にしびれを切らして、彼はイライラした口調でこう言った。
「言い訳もないの? 浮気でもしてきた?」
さすがにその言葉には我慢ならなくて、僕も強い口調で言う。
「それは祐介の方だろ! 毎度毎度この家に知らない人を連れ込みやがって!」
「……だから、浮気し返したの?」
「ちがっ!!」
違う、と言いたかったのに、その言葉は最後まで言えずに祐介の口に飲み込まれる。嘘なんて聞きたくないとでもいうように、深いキスが続いた。
「やめっ、い、き、できなぁ……」
キスなんて甘いものではない。それは相手を窒息するための技だった。どんどん息が取り込めなくなり、頭がぼーっとしていく。
「今日はもう、どこにも行かないで」
抵抗する力がなくなった頃、再びぐいっと腕が引かれる。たたらを踏みながら辿り着いた先は、最近あまり2人で寝たことのない寝室だった。
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