8 / 14
08.可愛いって言われたくて
しおりを挟む
【受けに可愛いって言われるのが好きで女装する攻め×可愛い攻めを自慢したくて連れ歩く受け】
「えっ、今日もめちゃくちゃ可愛い! もう女の子より女の子じゃん!」
玄関に迎えに来てくれた彼が、興奮気味に褒めてくれる。
「えへへ。褒められたくて頑張っちゃった。メイクの動画見ていっぱい練習したんだよ」
家を出る1時間前から。肌のお手入れなどを含めれば何日も前から、ボクはこの日のために準備をしてきた。すべては、目の前の人に「可愛い」と言ってもらうために。
「メイクも服も最高に可愛いよ。俺だけが見てるのもったいないから、今日もいい?」
「もちろん。そのつもりだったし」
女装趣味に目覚めた直後は、この姿で出歩くなんて考えられなかった。多少は性に寛容な社会になったとはいえ好奇の視線を向けてくる奴もいるかもしれないし、こいつに言うのすら本当は躊躇っていた。でも、勇気を出して「こいつだけになら……」と自分の趣味を打ち明けたとき、彼は軽蔑の眼差しもなく純粋に「可愛い!」って褒めてくれた。そのせいかおかげか、この姿の自分に自信がついてしまったのだ。
今では、女装した日はこいつの彼女として街に繰り出すのまでがセットになっている。
「じゃ、いこう」
玄関を一歩出た先から、手を繋いで歩き出す。
ただ可愛いものが好きなだけで、別に女の子になりたいとかではないと思っていたけれど、こいつに女の子扱いされるこの時間は好きだった。次の女装のために服やアクセを見て回ったり、男2人では普段は敷居の高いデートスポットに足を運んでみたり。
キラキラを浴びて、自分たちまで輝いていくような錯覚を起こした。
「あー、ごめん、ちょっと待ってて」
彼がトイレに行っている間は、外で待つことになる。さすがにこの格好ではどちらのトイレに入るのも憚られたからだ。ただ1人になると、厄介な虫も寄ってくる。
最初の頃はそんなに可愛く見えているのかと少し嬉しくなったりもしたが、今はただただ鬱陶しいとしか思えなくなってしまった。
「さっきから見てたんだけどおねーさん可愛いね~。冴えない彼氏なんか置いてさ、俺らと遊びに行かない?」
「行かない。お前らに可愛いって言われたくて努力してるんじゃねぇんだわ」
そんな不快感情のせいで、つい強い言葉を言ってしまう。
「は? なんだよその口の利き方。調子乗ってんじゃねぇぞ」
あまり当たってほしくなかった予想通り、彼らはボクの言葉に逆上してくる。この格好の時は女の子らしく過ごしたいからあんまりケンカはしたくないのだけど、向こうから仕掛けてくるなら仕方がない。
いきなり飛んできた拳を受け止めて、腹に向かって膝を蹴り上げる。
「女の子に向かっていきなり殴るのはどうかと思うけど?」
「いって……」
殴りかかってきた男はフラフラするのを見るやいなや、背後にいた2人の戦意がそがれるのを感じた。
「どうする? ボクまだ暴れたりないからケンカしたいならしてあげるけど」
そんなことを言ってしまうくらいには乗り気だったのに、彼らはケンカ慣れしているというよりはただのナンパ師だったようで、「くそっ」とだけ吐き捨てて逃げて行ってしまった。
ボクのことを「可愛い」って言ってくれるのは、彼だけでいい。むしろ彼以外からの「可愛い」は、気持ち悪くさえ感じる。
「ただいま」
「もー、遅いよ。また変な奴に声かけられたんだから」
「そんなに経ってないじゃん! でもそんな短時間で声かけられちゃうなんて、やっぱり誰の目から見ても可愛いんだね」
他の人の賞賛なんて要らないのに。
でも、そう言えば今の関係性を崩してしまいそうで、ぐっと飲み込んだ。
「えっ、今日もめちゃくちゃ可愛い! もう女の子より女の子じゃん!」
玄関に迎えに来てくれた彼が、興奮気味に褒めてくれる。
「えへへ。褒められたくて頑張っちゃった。メイクの動画見ていっぱい練習したんだよ」
家を出る1時間前から。肌のお手入れなどを含めれば何日も前から、ボクはこの日のために準備をしてきた。すべては、目の前の人に「可愛い」と言ってもらうために。
「メイクも服も最高に可愛いよ。俺だけが見てるのもったいないから、今日もいい?」
「もちろん。そのつもりだったし」
女装趣味に目覚めた直後は、この姿で出歩くなんて考えられなかった。多少は性に寛容な社会になったとはいえ好奇の視線を向けてくる奴もいるかもしれないし、こいつに言うのすら本当は躊躇っていた。でも、勇気を出して「こいつだけになら……」と自分の趣味を打ち明けたとき、彼は軽蔑の眼差しもなく純粋に「可愛い!」って褒めてくれた。そのせいかおかげか、この姿の自分に自信がついてしまったのだ。
今では、女装した日はこいつの彼女として街に繰り出すのまでがセットになっている。
「じゃ、いこう」
玄関を一歩出た先から、手を繋いで歩き出す。
ただ可愛いものが好きなだけで、別に女の子になりたいとかではないと思っていたけれど、こいつに女の子扱いされるこの時間は好きだった。次の女装のために服やアクセを見て回ったり、男2人では普段は敷居の高いデートスポットに足を運んでみたり。
キラキラを浴びて、自分たちまで輝いていくような錯覚を起こした。
「あー、ごめん、ちょっと待ってて」
彼がトイレに行っている間は、外で待つことになる。さすがにこの格好ではどちらのトイレに入るのも憚られたからだ。ただ1人になると、厄介な虫も寄ってくる。
最初の頃はそんなに可愛く見えているのかと少し嬉しくなったりもしたが、今はただただ鬱陶しいとしか思えなくなってしまった。
「さっきから見てたんだけどおねーさん可愛いね~。冴えない彼氏なんか置いてさ、俺らと遊びに行かない?」
「行かない。お前らに可愛いって言われたくて努力してるんじゃねぇんだわ」
そんな不快感情のせいで、つい強い言葉を言ってしまう。
「は? なんだよその口の利き方。調子乗ってんじゃねぇぞ」
あまり当たってほしくなかった予想通り、彼らはボクの言葉に逆上してくる。この格好の時は女の子らしく過ごしたいからあんまりケンカはしたくないのだけど、向こうから仕掛けてくるなら仕方がない。
いきなり飛んできた拳を受け止めて、腹に向かって膝を蹴り上げる。
「女の子に向かっていきなり殴るのはどうかと思うけど?」
「いって……」
殴りかかってきた男はフラフラするのを見るやいなや、背後にいた2人の戦意がそがれるのを感じた。
「どうする? ボクまだ暴れたりないからケンカしたいならしてあげるけど」
そんなことを言ってしまうくらいには乗り気だったのに、彼らはケンカ慣れしているというよりはただのナンパ師だったようで、「くそっ」とだけ吐き捨てて逃げて行ってしまった。
ボクのことを「可愛い」って言ってくれるのは、彼だけでいい。むしろ彼以外からの「可愛い」は、気持ち悪くさえ感じる。
「ただいま」
「もー、遅いよ。また変な奴に声かけられたんだから」
「そんなに経ってないじゃん! でもそんな短時間で声かけられちゃうなんて、やっぱり誰の目から見ても可愛いんだね」
他の人の賞賛なんて要らないのに。
でも、そう言えば今の関係性を崩してしまいそうで、ぐっと飲み込んだ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる