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しおりを挟む湊さんとこういう関係……恋人関係になったのは、少し前のことだった。自分も今年はもう20歳で、世間からすれば「大人」というレッテルを貼られる年齢だ。もう1人暮らしを始める人だっている年齢だということも知っている。だから、これ以上お世話になるのも申し訳ないと思い、家を出た方がいいのではないかという話を持ち出した。
湊さんはそんな僕の提案を嫌がった。湊さんはみんなに愛されている癖に少し寂しがりなところがあって、2人での暮らしを知ってしまったからには、1人でする生活なんて考えられないと言った。そして、僕のことを「好きになってしまった」とも言った。
僕は中学校までしか学校に行っていなくて、それまでにそういった経験もなかったから、「好き」という気持ちがどういうものなのか分からなかった。ドラマや小説ではよく描かれているし、たくさんインターネットも調べたけれど、あまりピンとこなかった。そうしてこう提案されたのだ。
「『家族兼恋人』って関係で生活をしてみよう。僕がたまに恋人にしかしないことをするから、それに対して『嫌だ』と奏斗が少しでも思ったら家族に戻る。そうじゃなかったら、そのまま受け入れて」
あまりにも真剣な目をしていたものだから、その言葉にうなずいた。うなずいてしまってからは、今みたいな行為やその先の行為を湊さんとするようになった。今まで家族みたいに接してきたはずなのに、顔が綺麗すぎるせいか不思議と嫌悪感はなく、拒否をしないままにズルズルとこの関係性を続けてしまっている。
「ベッド行こう、奏斗」
まだ髪も乾ききっていないのに、「もう耐えられない」というような欲情を目に浮かべながら湊さんが誘う。みんなに愛されている湊さんが、自分だけに見せるこの表情に、少しだけ優越感を感じる。
「やっ、あぁっ!!」
湊さんは普段は優しいのに、こういう時だけはガツガツしている。前戯は時間をかけてくれるからありがたいのだけど、一度いれてしまうとタガが外れるらしかった。自分よりも大きいのに、一生懸命に自分を求める姿が可愛くて、頭をよしよしと撫でてやる。
顔をあげた幸せそうな瞳が目に入って、ぎゅっと心臓がはねた。
湊さんといると、「自分だけ」が嬉しい独占欲が湧くし、相手の全てを可愛いと思ってしまうバグが発生する。そして何より、相手の幸せそうな表情で、自分もあったかい気持ちになれる。
――あぁ、たぶんこれが「好き」なんだろうな。
今日もそう思いながら、気絶するように眠った。
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