君を変える愛

沙羅

文字の大きさ
5 / 7

05

しおりを挟む

「はなせ……!」
下着を脱がさせまいと抵抗していた腕が、頭上でまとめて押さえつけられる。
「何する気だよ、やめろ!!」
「ごめんね。でも、どうしても僕は、裕也を手に入れたかったから……」
暴れる僕をぎゅっと抱きしめた涼は、耳元でそう囁いた。その声が反省の色に満ちているのがわかって、嫌悪感や怒りが薄らいでいく。

そう、思っていたのに。

「大丈夫、すぐに気持ちよくしてあげるから」
顔をあげたあとの涼は、もう罪悪感など忘れてしまったようだった。ある意味で力強い目がじっとこちらを見る。その勢いのまま、僕の体からは完全に服が剥ぎ取られた。驚きとショックとで、事態を飲み込むことができない。

「やだ、なんでお前がっ、なんで……」
気を抜けば泣いてしまいそうで、せめてもの抵抗に顔を背けた。僕が予想していたのは涼がアルファかもしれないということまでだ。あのサイトのアルファのように、親友を、僕を、非道い目にあわせるなんてどうして予想できただろう。
「信じてたのに、どうして……!」

「ずっと、我慢してたさ」
自分もすべて服を脱ぎ終えた涼が、自嘲気味に言葉をこぼした。
「ゆーちゃんは、アルファのことについてどこまで知ってる?」
涼の手が、僕の身体の上を這う。僕に比べて彼の手の温度は低く、彼の手が触れている場所がはっきりと思い知らされた。

「一般人……ベータの認識ではアルファが支配者、オメガが被支配者って感じなのかな」
上から下へとゆっくりとその感覚が移動していく。この先の行動の意味を考えたくなかったのか、あるいはオメガ性が仄かな期待を生み出していたのか。僕は大した抵抗もできずに、ベッドに横たわっているだけだった。
「でも本当は違うんだ。アルファは運命の番にだけは逆らえない。僕にとってのゆーちゃんがそう」

涼のひとり言は、僕の反応を待たずに進む。僕もまた涼の言葉をBGMのように、特に意味を理解しないまま聞き流していた。
「なのにゆーちゃんはベータとして生きてるし、僕のことを友達としか見てくれないし。ずっとずっと、苦しかった」

涼の体が覆い被さってくる。今まで身体の上を滑っていた手が顎に添えられて、強制的に顔を合わせることとなった。
「ゆーちゃん、愛してる。出会った時からずっと、こうしたいって思ってた」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

至高のオメガとガラスの靴

むー
BL
幼なじみのアカリちゃんは男の子だけどオメガ。 誰よりも綺麗で勉強も運動も出来る。 そして、アカリちゃんから漂うフェロモンは誰もが惹きつけらる。 正に"至高のオメガ" 僕-ヒロ-はアルファだけど見た目は普通、勉強も普通、運動なんて普通以下。 だから周りは僕を"欠陥品のアルファ"と呼ぶ。 そんな僕をアカリちゃんはいつも「大好き」と言って僕のそばに居てくれる。 周りに群がる優秀なアルファなんかに一切目もくれない。 "欠陥品"の僕が"至高"のアカリちゃんのそばにずっと居ていいのかな…? ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】←今ココ  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

抗いΩと αモドキβの話。

叶崎みお
BL
体格も頭も運動神経もいい須夜崎は、αに近しいβとして「αモドキβ」と言われている。 ある日、クラスメイトのΩ・朝霞がαを抑えてテストで学年一位の座と聞かされて衝撃を受ける。悪目立ちした朝霞はαたちに絡まれたが、「自分をΩとして見ないでくれ」と突っぱねる姿を眩しく思い、さりげなく庇ううちに自分にだけ懐かれて──。 βとΩの話です。攻のα化はありません。ハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

俺が番う話

あちゃーた
BL
喧嘩に明け暮れていた俺の前にある日現れた謎のα。 そいつはとんでもない男で……。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

あなたが生まれてきた理由

万里
BL
28歳の学校用務員・保科宗一(Ω)は、母の勧めでお見合いに臨む。 顔に残る傷痕と、男性のΩという希少な性質から、恋愛に縁がなく、自分が誰かに好かれることなど考えたこともなかった。 ところが、料亭の一室で待っていたのは、同じ職場の公民教師・新田功史朗(α)だった。 穏やかで物静かな新田は、宗一の境遇を受け止め、驚くことなく「付き合ってみないか」と提案する。 戸惑いながらも、宗一はその言葉に心を動かされる。

生意気オメガに疲弊する

夕暮れ時
BL
両親に許嫁として紹介されたのは、貧乏家庭に住むオメガの同級生であり、顔合わせもせずいきなり同居生活開始!!。しかし、実際に会ってみれば相性は最悪、なにをするにも文句を言われその生意気っぷりに疲弊しそうになるが、生活を続けるうちに可愛く見えてくるようになり______、

今日も、社会科準備室で

下井理佐
BL
内気で弱気な高校生・鈴山夏芽(すずやまなつめ)は、昼休みになると誰もいない社会科準備室でこっそりと絵を描いていた。 夏芽はいつものように社会科準備室を開ける。そこには今年赴任してきた社会科教室・高山秋次(あきつぐ)がいた。 新任式で黄色い声を受けていた高山がいることに戸惑い退室しようとするが、高山に引き止められる。 萎縮しながらも絵を描く夏芽に高山は興味を持ち出し、次第に昼休みが密かな楽しみになる。

捨てた筈の恋が追ってきて逃がしてくれない

Q矢(Q.➽)
BL
18歳の愛緒(まなお)は、ある男に出会った瞬間から身も心も奪われるような恋をした。 だがそれはリスクしかない刹那的なもの。 恋の最中に目が覚めてそれに気づいた時、愛緒は最愛の人の前から姿を消した。 それから、7年。 捨てたつもりで、とうに忘れたと思っていたその恋が、再び目の前に現れる。 ※不倫表現が苦手な方はご注意ください。

処理中です...