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「じゃあ、一旦そうしようかな」
「うん、1回僕たちだけの世界に引きこもろう。戻りたくなったら戻ればいいんだから」
その日を境に、優が学校に行くことはなくなった。
時々優が戻った方がいいんじゃないかと不安になれば、周りの人から心無い言葉をかけられる恐怖を思い出させて説得した。もう噂なんてとっくに消えている頃だけど、「優が傷つくようなことがあったら僕も傷つく」と言えば、優はすぐに諦めてくれた。味方は僕だけしかいなくて、味方は僕だけがいればいいのだと言い聞かせた。
本当は僕だって学校を休んで優の側にいたかったけれど、優を社会に出す気はないから、2人分養っていけるための良い職に就けるようにと面倒な学校だって行った。
「おかえり、豊」
学校から帰れば、そう迎えてくれる優がいる。だからこそ、憂鬱な学校も行く気になれた。遅くなった日にはご飯なんかも作って待っててくれていて、なんならもう結婚でもしているみたいだった。
「ただいま、優」
靴を脱いでいれば、優が両手をひろげて待つ。僕はそんな優の胸へと飛び込む。
玄関先でハグをするのも、もう日課だった。外の世界で染みついた汚れを、優に抱きしめてもらうことで浄化するのだ。
「優……かわいい、シたい」
「え、でもご飯が……」
いつもならば大人しくご飯を食べるところだが、今日はどうにもイライラしたことがあって早く優に触れたかった。ハグなんかではその欲求は収まらなくて、優の全部が今すぐほしいと思ってしまう。
「ねぇ、ダメ?」
滅多に出さない甘えた声を出せば、「ダメ、じゃ、ないけど」と消え入りそうな声で返事がかえってくる。流されやすい優に心配になるが、もう僕以外がお願いをすることなんて一生ない。まぁ、家族くらいなら許すけど。
「じゃあベッド行こうか」
「え、待って、シャワー浴びないと」
「待てないから」
くるりと向きを変えさせて後ろからトンと背中を押してやると、ようやく優がしぶしぶと歩き出す。セックスに誘った時は、いつもこうだ。もう何回もしているのに、僕がいない間に準備だって万端にしておくくせに、毎回初めてみたいな態度をとる。まぁ、そこが可愛いところでもあるんだけど。
「ほら、早く。優だってもうその気になってるでしょ?」
ベッドの前でまた立ち止まる優にそう声をかければ、ゆっくりとした動作でベッドへと寝転んだ。
「豊も、来て」
布団をめくって、僕が入るスペースをつくる優。もちろんその誘いを断るはずもなく、優の横へと吸い込まれた。
「ちょっと硬くなってきてるね」
ジーンズごしに触れれば、もうそこが少し頭を持ち上げ始めていることが分かる。その気になっているのが自分だけではないということが目に見えて分かって、嬉しくなる。
「あんま言わないで。豊だってそうだし……」
遠慮気味にちょんと触られるのがもどかしい。もっと触って、という気持ちを込めながら優の手を掴み、自分のを握らせる真似をした。素直な優はそれに従って、僕の手が優のに移動した後も、やわやわと握る動きを続けてくれる。
優のを上下に動かして、少し液体が出てこればそれを先端へと塗ってやる。優は亀頭をいじられるのが大好きだから、こうするとすぐに気持ちよくなってしまうらしい。
「もう、待って、イっちゃうから……」
そう言われて待つ人間はあまりいないと思う。触っていない方の左手で優の頭を固定してキスをしながら、右手の動きをちょっと強めた。
「ああっ!」
そうすればすぐに白色の液体を吐き出す。優に似て素直なそれがすごく可愛い。でもそろそろ自分のも限界で、優のナカへと入りたくなる。
「優、うつぶせになってほしい」
一度イかされてすっかりその気になった優は、その言葉に素直にうなずき体を回転させる。ローションを出して両手で温めたあと、目的の窪みの周りにとろとろと塗りたくる。それだけで期待して感じてしまっているのか、優の息がどんどんと上がっていくのがわかった。
「豊、はやくっ」
まだ直接的な刺激は与えずに窪みの周りを右往左往していると、優から催促の声がかかる。その声に応じて、ナカへと一本、指を入れ込んだ。
「んんっ」
鼻から息が抜けたような声が優から漏れる。あたたかいそこは綺麗にされていて、かつ柔らかくて、恋人のいじらしさについ笑みが漏れた。
「なに、笑って」
「だってかわいーんだもん。僕のこと考えて、一人でいる間に準備してくれてるんだよね」
「……当たり前じゃん。僕だって豊と1つになりたいから」
照れながらも、大切だと大好きだとしっかり言葉にしてくれる優は本当に最高の恋人だと思う。1つになりたい、なんて殺し文句に息子は一気に元気になって、早く優のナカに入りたいと主張していた。
「ごめん、もう待てない。痛かったら言って?」
「ん、大丈夫だから。来て」
熱く硬くなったそれを、優のナカへと突き立てる。まだ十分にほぐしていないそこはいつもよりは狭かったけれど、ゆっくり腰を進めればだんだん形を思い出していくようだった。
「優、大好き」
全部入り切れば、体の距離がグッと縮まる。優のお腹に手をまわして、ぎゅっと力強く抱きしめた。もうずっとこうしていたい。本当に1つになって離れられなくなればいいのに、なんて思いながら。
「っ、僕も豊のこと、んあっ、大好きっ」
抱きしめられながらも小刻みに腰を打ち付けられて、優から気持ちよさそうな声が漏れる。それでも懸命に愛を伝えてくれる姿に、また一段と熱が高まるのを感じた。
「ナカに出していい? あとでちゃんと掻き出すから」
「うん、うんっ、ちょうだい」
もうこれ以上挿入らないってくらいまで奥に押し込んだ瞬間、熱が弾けたのを感じた。優もびくびくと痙攣していて、どうやらほぼ同じタイミングで達したようだった。
どちらからとなく最初の体勢に戻って、寝転びながら目と目を合わせる。気づいた時には強く体を密着させて、唇を貪りあっていた。
「一生、愛してるからね」
――これはもう離れられない、2人のお話。
「うん、1回僕たちだけの世界に引きこもろう。戻りたくなったら戻ればいいんだから」
その日を境に、優が学校に行くことはなくなった。
時々優が戻った方がいいんじゃないかと不安になれば、周りの人から心無い言葉をかけられる恐怖を思い出させて説得した。もう噂なんてとっくに消えている頃だけど、「優が傷つくようなことがあったら僕も傷つく」と言えば、優はすぐに諦めてくれた。味方は僕だけしかいなくて、味方は僕だけがいればいいのだと言い聞かせた。
本当は僕だって学校を休んで優の側にいたかったけれど、優を社会に出す気はないから、2人分養っていけるための良い職に就けるようにと面倒な学校だって行った。
「おかえり、豊」
学校から帰れば、そう迎えてくれる優がいる。だからこそ、憂鬱な学校も行く気になれた。遅くなった日にはご飯なんかも作って待っててくれていて、なんならもう結婚でもしているみたいだった。
「ただいま、優」
靴を脱いでいれば、優が両手をひろげて待つ。僕はそんな優の胸へと飛び込む。
玄関先でハグをするのも、もう日課だった。外の世界で染みついた汚れを、優に抱きしめてもらうことで浄化するのだ。
「優……かわいい、シたい」
「え、でもご飯が……」
いつもならば大人しくご飯を食べるところだが、今日はどうにもイライラしたことがあって早く優に触れたかった。ハグなんかではその欲求は収まらなくて、優の全部が今すぐほしいと思ってしまう。
「ねぇ、ダメ?」
滅多に出さない甘えた声を出せば、「ダメ、じゃ、ないけど」と消え入りそうな声で返事がかえってくる。流されやすい優に心配になるが、もう僕以外がお願いをすることなんて一生ない。まぁ、家族くらいなら許すけど。
「じゃあベッド行こうか」
「え、待って、シャワー浴びないと」
「待てないから」
くるりと向きを変えさせて後ろからトンと背中を押してやると、ようやく優がしぶしぶと歩き出す。セックスに誘った時は、いつもこうだ。もう何回もしているのに、僕がいない間に準備だって万端にしておくくせに、毎回初めてみたいな態度をとる。まぁ、そこが可愛いところでもあるんだけど。
「ほら、早く。優だってもうその気になってるでしょ?」
ベッドの前でまた立ち止まる優にそう声をかければ、ゆっくりとした動作でベッドへと寝転んだ。
「豊も、来て」
布団をめくって、僕が入るスペースをつくる優。もちろんその誘いを断るはずもなく、優の横へと吸い込まれた。
「ちょっと硬くなってきてるね」
ジーンズごしに触れれば、もうそこが少し頭を持ち上げ始めていることが分かる。その気になっているのが自分だけではないということが目に見えて分かって、嬉しくなる。
「あんま言わないで。豊だってそうだし……」
遠慮気味にちょんと触られるのがもどかしい。もっと触って、という気持ちを込めながら優の手を掴み、自分のを握らせる真似をした。素直な優はそれに従って、僕の手が優のに移動した後も、やわやわと握る動きを続けてくれる。
優のを上下に動かして、少し液体が出てこればそれを先端へと塗ってやる。優は亀頭をいじられるのが大好きだから、こうするとすぐに気持ちよくなってしまうらしい。
「もう、待って、イっちゃうから……」
そう言われて待つ人間はあまりいないと思う。触っていない方の左手で優の頭を固定してキスをしながら、右手の動きをちょっと強めた。
「ああっ!」
そうすればすぐに白色の液体を吐き出す。優に似て素直なそれがすごく可愛い。でもそろそろ自分のも限界で、優のナカへと入りたくなる。
「優、うつぶせになってほしい」
一度イかされてすっかりその気になった優は、その言葉に素直にうなずき体を回転させる。ローションを出して両手で温めたあと、目的の窪みの周りにとろとろと塗りたくる。それだけで期待して感じてしまっているのか、優の息がどんどんと上がっていくのがわかった。
「豊、はやくっ」
まだ直接的な刺激は与えずに窪みの周りを右往左往していると、優から催促の声がかかる。その声に応じて、ナカへと一本、指を入れ込んだ。
「んんっ」
鼻から息が抜けたような声が優から漏れる。あたたかいそこは綺麗にされていて、かつ柔らかくて、恋人のいじらしさについ笑みが漏れた。
「なに、笑って」
「だってかわいーんだもん。僕のこと考えて、一人でいる間に準備してくれてるんだよね」
「……当たり前じゃん。僕だって豊と1つになりたいから」
照れながらも、大切だと大好きだとしっかり言葉にしてくれる優は本当に最高の恋人だと思う。1つになりたい、なんて殺し文句に息子は一気に元気になって、早く優のナカに入りたいと主張していた。
「ごめん、もう待てない。痛かったら言って?」
「ん、大丈夫だから。来て」
熱く硬くなったそれを、優のナカへと突き立てる。まだ十分にほぐしていないそこはいつもよりは狭かったけれど、ゆっくり腰を進めればだんだん形を思い出していくようだった。
「優、大好き」
全部入り切れば、体の距離がグッと縮まる。優のお腹に手をまわして、ぎゅっと力強く抱きしめた。もうずっとこうしていたい。本当に1つになって離れられなくなればいいのに、なんて思いながら。
「っ、僕も豊のこと、んあっ、大好きっ」
抱きしめられながらも小刻みに腰を打ち付けられて、優から気持ちよさそうな声が漏れる。それでも懸命に愛を伝えてくれる姿に、また一段と熱が高まるのを感じた。
「ナカに出していい? あとでちゃんと掻き出すから」
「うん、うんっ、ちょうだい」
もうこれ以上挿入らないってくらいまで奥に押し込んだ瞬間、熱が弾けたのを感じた。優もびくびくと痙攣していて、どうやらほぼ同じタイミングで達したようだった。
どちらからとなく最初の体勢に戻って、寝転びながら目と目を合わせる。気づいた時には強く体を密着させて、唇を貪りあっていた。
「一生、愛してるからね」
――これはもう離れられない、2人のお話。
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