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第七話 A HAPPY NEW YEAR’S EVE!!!!〜美味しいご飯を、みんなで一緒に〜前哨戦!

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――魔王城 大広間――
(それは、年末も差し迫って来た十二月の事)
(大広間でのみんなが集まってのお夕飯も終わり、談笑や読書、食後のお酒やデザートを楽しんでいた時の事だった…)
ヒルガオ:「ちゅうもーーーーーーーーくっ!」
(魔王城のメイド長であるヒルガオは突然立ち上がり、大きな声を上げる)
(大広間にいた魔物達は「なんだなんだ?」と、立ち上がったヒルガオに目を向けた)
ヒルガオ:「うむ!
 さて皆よ!もうすぐ大晦日じゃ!」
魔王城で働く魔物:「あーもうそんな時期かー」
魔王城で働く魔物:「一年がはえーなー」
魔王城で働く魔物:「なー」
ヒルガオ:「ほれそこ!しみじみとするのは早いぞ!
 儂等には重要なお役目があるじゃろーがっ!」
エキナ:「重要なお役目…ですか?
 えと、昨年はそういった事は…」
魔王:「まぁ去年は色々と大変だったからね、城下町を巻き込んだお役目は無かったんだー。
 王都…まぁ他の場所もそうだけれど、毎年大晦日から年始の三日間、色んな所でどんちゃん騒ぎのお祭り騒ぎ状態になるんだよー」
エキナ:「どっ、どんちゃん騒ぎのお祭り騒ぎですか…!?」
イキシア:「おうよ。
 ただみんな酒やら場酔いやらテンション青天井やらで理性がぶっ飛んででなー。言葉では言い尽くせない程すんごい状態になるんだ」
タイム:「ですので、私達魔王城側も王都にいる『アリウム』のメンバーと連携して、行き過ぎた騒ぎの警戒や鎮圧に当たっているのです」
エキナ:「ま、魔界の年末年始はそんなに凄いんですね…想像も出来ないです…!」
魔王城で働く魔物:「人間界では違うのん?」
エキナ:「はいっ!
 人間界…というかルクスカリバー王国では、親しい関係の方達だけで、静かに、厳かに過ごす事が慣わしになっています。
 ですから、大晦日から一月四日ぐらいまでは、人間が大勢いる王都の城下町でも人はまばらなんです」
魔王城で働く魔物:「あー…それだとちょーっと魔界の大晦日は騒がし過ぎるかもしれないわねー…」
魔王城で働く魔物:「確かに。
 王都中もんの凄い事になるからなぁー…」
魔王:「そ、そうだよね…もんの凄い事になるからね…。
 エキナ姫、年末年始はどこか静かな場所で静養する?」
エキナ:「いいえっ!とんでもありませんっ!
 そんな楽しいお祭りに参加しない訳にはいかないですっ!
 私も、もあいよろしかったらでいいので、是非参加させて頂ければっ!」
魔王:「…(ボソッ)ねぇねぇ」
魔王城で働く魔物:「(ボソッ)なんすか魔王様」
魔王:「エキナ姫、無理して…無さそうに見えるけれど、どうだろう…?」
魔王城で働く魔物:「(ボソッ)魔王様、エキナ姫の表情を良くご覧下さい。
 …こんなにもぺっかーと表情を明るくしているエキナ姫、そうそう見られませんよ?
 いやー眼福眼福」
(魔王城で働く魔物はありがたやーありがたやーとエキナ姫に手を合わせている)
(エキナ姫の表情も目も、きらきらぺっかーと輝いていた)
(そりゃもう「あ、本当に楽しみにしてるなこりゃ」と周囲が確信出来るぐらいには輝いている)
魔王:「…………えと…それじゃあ、エキナ姫もお祭りに参加…っていう事で良いかい?」
エキナ:「はいっ!
 楽しみです…どんな年末年始になるんでしょう…とってもとっても楽しみです…!」
(エキナ姫はるんるんとしている。今にも踊り出しそうだ)
(それをみんなはあったかーい目で見守っていた)
ヒルガオ:「と言う訳で、明日役割分担をするから、必ずこの時間この場所に来るんじゃぞー」
全員:『はーーーーい』
エキナ:「…あの、魔王様」
魔王:「ん?」
エキナ:「役割分担って、どうやって決めるんでしょう…?
 やっぱり適性とかもありますし…ちゃんと話し合いで決めるんでしょうか…?」
魔王:「くじ引きだよー」
エキナ:「くじ引き!?」



――魔王城 大広間――
ヒルガオ:「はいちゅうもーーーーくっ!
 大晦日から年始に掛けての役割を決めるぞーーーーいっ!並べーーーーっ!」
(翌日の夕食後、ヒルガオはそう言ってテーブルにドンッ!と上から手を突っ込むタイプの箱を置いた)
(相当年期が入っているのか、「宴会出し物」や「班決め」、「遠足の座席の順番」といった文字がいくつも書かれ、二重線で消されている)
(我先にと一列に並ぶ者もいれば、タイミングを見計らっているのか、それをぼーっと見ている者、並ばない者もいた)
エキナ:「ほ、本当にくじ引きなんですね…」
魔王:「みんなが色んな役割を出来る様に、っていう意味でこうしているんだよねー。
 それと帰省組もいるから、参加しない魔物達もいるよー」
エキナ:「な、なるほど…」
魔王:「…ん、魔物も少なくなったし、そろそろ並ぼっかー」
エキナ:「はっ、はいっ!」
(ちなみにエキナ姫と魔王は「あ、並ぶの落ち着いたかな…?」というタイミングを見計らって並ぶタイプで、エキナ姫も魔王ものんびりと最後尾に並んだ)
エキナ:「どんな役割になるのでしょう…楽しみです…!」
魔王::「結構いろんな役があるよー。
 ちなみに僕は去年迷子案内係だったねー。
 まぁ色々あったけれど…どんな役割であっても楽しんでねー」
エキナ:「はいっ!」
(遠くの方で、先にくじを引いた魔物達の声が聞こえる)
魔王城で働く魔物:「…ちょっと待ってメイド長『屋台開業:店長』って何これ」
ヒルガオ:「なんじゃそれ」
魔王城で働く魔物:「えっ」
ヒルガオ:「えっ」
魔王城で働く魔物:「この紙ってメイド長が入れているんじゃないの?」
ヒルガオ:「儂が何もせずとも入ってたんじゃが、皆が入れた物では無いのか?」
魔王城で働く魔物:「えっ」
ヒルガオ:「えっ」
イキシア:「あー…ちょっと見せてくれ」
(イキシアはくじ引きの箱を叩いたりひっくり返したりを繰り返し)
イキシア:「…………確かこいつ先代の魔王様が作ったもんだよな?」
(箱の中をじぃっと覗き込んだまま、そう呟いた)
魔王城で働く魔物:「その筈なのー」
ヒルガオ:「何か分かったかの?」
イキシア:「…………底に手を突っ込んだ存在の運命を読み取って最適な役割を自動生成出来る魔術陣が描かれてる」
魔王城で働く魔物:「お、おお…」
魔王城で働く魔物:「運命を読み取るって…超上位どころの騒ぎじゃない魔術じゃないのかそれ…」
ヒルガオ:「あーーーー…………で?どうするかの?
 流石に屋台開業は難しそうじゃし、選び直しても…」
魔王城で働く魔物:「…選び直す?…あたしの運命を読んで与えられた役割を?…ふふふ…このあたしに面白い事を言うのね…!
 屋台を引いた魔物達ッ!あたしについて来なさいッ!
 王都一の売上を叩き出すわよぉぉぉぉッ!」
全員:『おおおおおおおおおおおおおおおッ!』
魔王城で働く魔物:「流石です姉御!」
魔王城で働く魔物:「一生付いて行きます姉御!」
魔王:「…………っていう感じだから、まぁ、その…何が来てもあんまり気落ちせずに…ね?」
エキナ:「あっ、はっ、はいっ!」
(…やがて、魔王の番が来た)
(魔王は手を突っ込み、がさごそと中身を漁って)
魔王:「…………ぜぇぇぇぇぇぇぇいっ!」
魔王城で働く魔物:「やっぱ掛け声みんなやるよなー」
魔王城で働く魔物:「やりたくなっちゃいますからねー」
魔王城で働く魔物:「僕並んでいる時なんて言おうかいつも考えてるんだー」
魔王城で働く魔物:「それあたしもだわー同志!」
魔王城で働く魔物:「同志!」
ヒルガオ:「魔王よ、何が出た?」
魔王:「…………迷子案内係だ…」
魔王城で働く魔物:「引き直して下さい魔王っ!」
魔王城で働く魔物:「流石にあんな事になるのはこりごりです魔王っ!」
魔王城で働く魔物:「とっとと手ぇ突っ込んで引き直せ魔王様っ!」
エキナ:「(後ろの魔物に)何かあったんですか…?」
魔王城で働く魔物:「去年魔王様が迷子案内係で親御さんを探していた子が、実は千年前墓所に封印された超高位の精霊で…暴走したその子を浄化する事になったんですよねー…」
魔王城で働く魔物:「本当に大変でした…その精霊の力を利用する輩まで現れた上に、最終的には魔王城半分吹き飛びましたし…」
エキナ:「えっ」
ヒルガオ:「はよ引き直せっ!運命が定まる前にっ!」
魔王:「うっ、うんっ!………………………………………………………………迷子案内係だ」
魔王城で働く魔物:「嘘だろ…」
魔王城で働く魔物:「そんなんありかよ…」
魔王城で働く魔物:「これが…運命の強制力…!」
魔王城で働く魔物:「魔王様、本当に…ほ、ん、と、う、にっ!気を付けて下さいねっ!?」
魔王:「頑張る…頑張るけれど…はぁ…」
(トボトボと列を外れる魔王の背を、イキシアはぽんぽんと叩いた)
ヒルガオ:「うむ、次はエキナじゃのー」
エキナ:「うっ、うんっ!」
(エキナ、ずぼっと箱の中に手を突っ込み)
エキナ:「…うりゃあああっ!」
(最初に手に触れた紙を、思いっきり引き抜く)
(…………手の中にある、紙に書かれた役割は)
エキナ:「…………『当たり』?」
魔王城で働く魔物:「(エキナが引いた紙を覗き見て)…本当に当たりって書いてある」
魔王城で働く魔物:「(紙をあっちゃこっちゃいじくって)むしろそれしか書いてないっすね」
エキナ:「…………ほ、本当にこれ、どうしよう…!?」
ヒルガオ:「うむ…きっと何か意味があるとは思うのじゃが…本当に分からんのぉ…」
魔王:「あー…えと…それじゃあエキナ姫には年末年始を楽しんでもらおうかな。
 エキナ姫、魔界の年末年始は初めてだし、なんかそうした方が当たりっぽいし。
どうかな?」
エキナ:「は、はぁ…」


――魔王城 廊下――
(くじ引きから一週間後)
(今日も今日とて魔王城は騒がしい)
魔王城で働く魔物:「そこー!あんまり道に荷物広げなーい!」
魔王城で働く魔物:「衛生管理者どこー!?出店について聞きたい魔物がいるそうなんだけれどー!?」
魔王城で働く魔物:「『アリウム』メンバーとの第一回会議は午後二時からだー!
 各役割の代表は必ず出席しろよー!」
エキナ:「(洗濯物カゴを抱えて)賑やかだねー」
ツキミ:「(洗濯物カゴを抱えて)十二月は毎日お祭り騒ぎみたいなもんだからねー」
サザンカ:「(洗濯物カゴを抱えて)…ごめんね、エキナ姫。洗濯物のお手伝いさせちゃって…エキナ姫の役割は、楽しむ事なのに…」
エキナ:「充分に楽しんでるよ?
 ほら、私、お手伝いも楽しいからっ!」
ツキミ:「…そう言って貰えると、本当に嬉しい」
サザンカ:「…有り難い」
エキナ:「そっ、そんな事無いよーっ!」
ツキミ:「…そういえばエキナ姫、ちょっとずつ敬語外れてってるよねー」
エキナ:「あっ…………ごっ、ごめんなさいっ!
 思わず気が緩んでしまって…!」
サザンカ:「…全然大丈夫。
 むしろ、すっごく嬉しい」
ツキミ:「だねっ!」
エキナ:「?」
ツキミ:「だって気が緩むって事は気を許してくれているって事でしょ?」
サザンカ:「…光栄な事」
エキナ:「…こ、このままで良い…のかな…?」
ツキミ:「全然大丈夫!」
サザンカ:「…おーるおっけー」
エキナ:「…あ、ありがとう!ツキミちゃん!サザンカちゃん!」
ツキミ:「うっ!」
サザンカ:「…眩しい…眩し過ぎる…」



――魔王城 中庭――
エキナ:「…私に何か出来る事は無いかな…?」
ツキミ:「エキナ姫って本当に働き者だねー」
サザンカ:「…尊敬」
(昼食のサンドイッチを食べながら呟くエキナに、昼食を食べ終わってお茶を飲んでいるツキミとサザンカがほんわかと呟く)
(ちなみにエキナはたった今十五個目のサンドイッチを食べ終わった所だ)
エキナ:「ルクスカリバー王国にいた時もそうだったんだけれど、何かしてないと落ち着かないんだー…」
ツキミ:「エキナ姫の爪の垢を煎じて飲ませたい…」
サザンカ:「…ツキミの頭の中に誰の顔が浮かんだか分かった気がした…」
ツキミ:「んーーーー…………あっ、それじゃあ何でも係とかどう?」
エキナ:「何でも係?」
サザンカ:「…いつもこの時期、どこもかしこも人手が足りない。
 エキナ姫の凄さは折り紙付き、エキナ姫がそういう役に着いてくれたら嬉しい」
エキナ:「…………私に、そんな大役、勤まるのかな…」
ツキミ:「んーーーー…………分かんないっ!」
エキナ:「そっ!…………そう、だよね…」
サザンカ:「…ツキミは後でしばいておく。
 …今までこの時期には、そういう役を任せられる者も、そういう役のノウハウもなかった。だから全部未知数。
 …だから、エキナ姫には、そのノウハウを作って欲しい。
 未知なる道の、先駆者になってくれたら、嬉しい」
ツキミ:「そうっ!それが言いたかった私もっ!」
エキナ:「…………ありがとう、ツキミちゃん、サザンカちゃん。
 よっ、よーしっ!魔王様に打診してみるっ!」
ツキミ:「その意気その意気っ!」
サザンカ:「…ふぁい、おー、エキナ姫」
エキナ:「…でも…突然そんな事をするって言って…魔王様…困らないかな…そもそもこんなお話、通るのかな…?」


――魔王城 魔王執務室――
魔王:「うん是非お願いこちらとしても渡りに船というかぶっちゃけもうただただ感謝感激雨霰なんだよねああ任命書類ねそれならそこら辺に僕の契約印あるから何でも係やりますっていうのと名前一筆書いて勝手に印押して貰えれば良いから後は他のみんなとうまく連携取ってなんかあったら全部僕の責任にして良いからね!」


――魔王城 廊下――
エキナ:「…大丈夫だった…あとなんか大変そうだった…」
ツキミ:「それじゃあレッツゴーッ!」
サザンカ:「ゴー」



――魔王城 魔王執務室――
(深夜)
(魔王城の中にある、魔王の執務室)
ミソハギ:「…魔王城側との連携は上手くいっているみたいだな」
(紅茶を飲みながら、『アリウム』のリーダーであるミソハギは、資料に目を通しつつ、そう呟く)
魔王:「うん。
 茶菓子が無いとかお茶が温いとかトラブルはあったみたいだけれど、みんな、お祭りを成功させたいっていう気持ちは本物だから。
 …それにエキナ姫も頑張ってくれてる」
ミソハギ:「他の『アリウム』のメンバーから聞いた。
 何でも係だったっけか?大したもんだ」
魔王:「だねー。
 阿鼻叫か…………個性的な面々が揃う中でみんなの仲介役、お手伝いをこなしてる。
 …本当に、エキナ姫には頭が上がらないよ」
ミソハギ:「…なぁ、前に話した事、覚えているか?」
魔王:「ジャムバターコッペパンが美味しかったって話?」
ミソハギ:「ああ魔王んとこの魔界通信で紹介して貰ってからなかなか良い売上だ。感謝する。
 うん違うからな?それのちょっと後の話だからな?」
魔王:「ああ、そっちか。
 返事はした。僕はエキナ姫を信頼している」
ミソハギ:「そこも違うな。
 …あの後、人間界にいる『アリウム』の協力者を使ってヴィレイ村について調べた結果、やはりヴィレイ村には半魔半人が住んでいたみたいだ。
 …そして、消えた。
 住人諸共…まるで始めからそこには何も無かったかの様に」
魔王:「…何があったの?
 村一つが無くなるなんて大事の筈なのに、ミソハギの言葉は随分とふんわりしている。
 …正直に言えば、詳細がなんにも分からないんだけれど…」
ミソハギ:「…情報が無い。ヴィレイ村に関するありとあらゆる情報が徹底的に消されている。
 今回調査を行った時も、あらゆる情報網を使い、更に『アリウム』に所属している能力者達を総動員してもヴィレイ村の跡地を見付けるだけで一ヶ月掛かった」
魔王:「…残留思念すら、無かったの?
 それすら、抹消されていたの?」
ミソハギ:「イベリスも戦々恐々としていたよ…こんなにも生き物の痕跡が消された場所は初めてだって。
 …ヴィレイ村の件、背後には大規模…いや、超規模な組織が関わっているとみて間違い無いだろうな」
魔王:「…そこに、エキナ姫が関わっているのか…」
ミソハギ:「…続けるか?調査」
魔王:「…運命がそれを許してくれるなら」
ミソハギ:「回りくどい。バレない様にやれって事だろ?
 任せろ。隠密暗躍は『アリウム』の十八番だ」
魔王:「…お願い。
 大っぴらに動けないから、僕しか動けないけれど…僕に出来る事は、最大限するから」



――魔界 城下町――
スミレ:「あとは…メイド隊の方達から頼まれた洗剤に、屋台部隊の紙皿の発注、それとイキシアさんの原稿用紙ですかねー」
エキナ:「ご迷惑をお掛けしてすいません…せっかくの非番の日に…」
スミレ:「何言ってるんですかっ!
 こうしてエキナひ…じゃなかった、エナさんのお手伝いが出来るなんて光栄ですよっ!
 それに非番って言ってもどうせ図書館に籠もって本を読むだけですからねー。
 こうしている方がよっぽど有意義ですっ!」
エキナ:「…ありがとうございます、スミレさん。
 本当に…本当に、ありがとうございますっ」
スミレ:「いっ、いいいいいいいやあ良いんですよ良いんですよっ!」
(大晦日まで、あと七日)
(エキナはスミレと共に城下町にいた)
(理由は魔王城の面々から依頼された物)
(エキナは何でも係として、こうして城下町に買い出しに出ていたのだ)
(ちなみに城下町ではエキナはエナと名乗り、兎の獣人になっている)
(魔界では希少な人間種であるエキナがいる事で、間違い無く発生する混乱を可能な限り避ける為だ)
アスパ:「あっ!お姫様はっけーんっ!」
ラガス:「こんにゃろー!なんの様だお姫様ー!」
ミソハギ:「(こそっ)アスパ、ラガス、この方は魔王城にいるエキナケア・ルクスカリバーでは無く魔王城で働いているエナさんの体でいくと前に話しただろ」
アスパ:「あっ!忘れてたっ!」
ラガス:「めんごっ!」
(ちなみに城下町の魔物達はエキナ=エナと知っており、そんな事はする必要は本当は無い)
(が、なんとなく事情は察せたので、城下町の魔物もエキナをエナさんとして接している)
ミヤコ:「エナ、久しぶりだな」
アサガオ:「ご無沙汰しております、エナ様」
エキナ:「ミソハギさん、アスパちゃん、ラガスちゃん、ミヤコさんにアサガオさんも、こんにちはっ!
 なんだか勢揃いです…っ!」
ミソハギ:「俺は『アリウム』の動きもあるし、ワルグのパン屋でも祭に参加するからなぁ」
アスパ:「てんてこ舞いだー!」
ラガス:「わちゃわちゃだー!」
エキナ:「ほ、本当にお忙しそうですね…」
ミソハギ:「いや、去年に比べて魔王城側との連携も取れているし、エナが色々と負担してくれているから、だいぶ楽になっているよ」
ミヤコ:「…………まぁ、良いんじゃねーの?」
アサガオ:「お力を貸して頂いて、本当に感謝していますよ、エナ様」
エキナ:「そう言って頂けて本当に嬉しいです…!」
ミソハギ:「それにこいつも、エナに礼が言いたいそうだ」
エキナ:「こいつ…?」
(エキナが首を傾げると、ミソハギ達が分かれる)
エキナ:「…アマリリスさん…!?」
アマリリス:「はい。実際にお話するのはお久しぶりですね、エナ様」
(そこにいたのは、リラータ村村長のオーク、アマリリスだった)
エキナ:「どっ、どうして王都に!?
 …もしかして、リラータ村で何かあったのですか!?」
(アマリリスとはリラータ村の事について、時折手紙のやり取りをする仲になっていた)
(しかし、近々にも手紙のやり取りをしたが…村長が王都に来なければならない程リラータ村が逼迫している、とは書かれていなかった)
(…書けない程…直接来なければならない程、逼迫しているのだろうか…?)
ミヤコ:「あー…エナ、考えている事はなんとなく分かった。
 とりあえず血の気が引いて真っ青になっているから一回深呼吸しろ」
アスパ:「吸ってー!吸ってー!」
ラガス:「吐いてー!吐いてー!」
アサガオ:「そして村長の後ろを良く観察して下さい」
(エキナ、ミヤコの言う通りに深呼吸をし、改めて村長の背後を見る)
(アマリリスの背後にはそこそこな大きさの屋台があった)
(時期が時期だ、屋台があるのは普通だろう。特段珍しい事では無い)
(…ただ…)
エキナ:「…………ポテトの屋台、ですか…!?」
(屋台には、そう書かれていたのだ)
(アマリリス、エキナの前に膝をつき、顔を伏せる)
アマリリス:「はい。
 あの後、リラータ村総出でポテトの量産を行った結果、一年掛けても食べ切れない程まで収穫する事が出来ました。…その事については、お手紙でご報告させて頂いたかと思います」
エキナ:「あっ、はいっ!」
アマリリス:「その中で様々な料理が生まれ、こうして屋台を出せるまでになったのです。
 こちらの屋台では私達の村で収穫したポテトを使って、様々な料理を、無料で提供しております」
エキナ:「む、無料で、ですか…!?」
アマリリス:「はい。
  私達がこの屋台を出店しているのは、ポテトの素晴らしさを世に広める為。そうする事で、より多くの飢餓に苦しむ村の助けとする為。
 そうする事が、魔界の為、魔物の為と思った次第に御座います。
 …その、最後にお手紙を出したすぐ後に屋台を出せると決まりまして…ご報告するのが遅れました。申し訳ありません」
エキナ:「…いえ…いえ…っ!
 凄いです…本当に、本当に凄いです…っ!
 良かった…本当に…本当に良かった…っ!」
(エキナはアマリリスの手を取った)
(エキナは知っている)
(リラータ村が、どれ程絶望の淵に立っていたのかを)
(リラータ村が、どれ程憔悴し切っていたのかを)
(…リラータ村が、どれ程…どれ程頑張ったのかを)
(だから)
アマリリス:「…………はい…っ!」
(顔を上げ、微笑むアマリリスを見て)
(リラータ村が、希望を見出せた事に)
(リラータ村が、顔を上げられた事に)
(…リラータ村が頑張った事が、こうして、実を結んだ事に)
(本当に、本当に、嬉しくなったのだ)



――魔王城 大厨房――
(十二月三十一日になる、ほんの少し前)
エキナ:「まっ、魔王様!?」
魔王:「へっ、へひはひへ!?
 ほーひはほほふはほははひっ!?」
エキナ:「…あの、飲み込んでからで大丈夫ですので…」
(エキナと魔王は、魔王城のメインキッチンにいた)
魔王:「んぐっ、んぐっ、ごくんっ…エキナ姫?こんな夜中にキッチンにどうしたの?」
エキナ:「…その、ちょっとお腹が寂しくなってしまって…。
 魔王様は…お夜食、ですか?」
魔王:「お仕事してたんだけれど、僕もお腹が減っちゃってねー。
 こーしてキッチンに侵入してお夕飯の残りをちょろまかしてるんだー」
(そう言って魔王は食べかけのサンドイッチ…なんの変哲も無いパンに、お夕飯で余った焼いた肉やチーズ、レタスを挟んだサンドイッチを見せた)
魔王:「色々冷蔵室にあったよー。
 エキナ姫もどお?」
エキナ:「は、はいっ。
 えと、ではその…い、頂きますっ」
(エキナ姫は冷蔵室の中に入って、様々な余り物とパンを持って出る)
魔王:「あ、火使う?ホットサンド、美味しいよ?」
エキナ:「え?でももう火は落ちて…」
(魔王城の厨房の火は薪式だ。就寝時は消されている)
(一度火を落とすと着火するまでに時間が掛かる。すぐに使うのは難しい)
魔王:「大丈夫大丈夫。
 サンドイッチ作ったらお皿に乗せて、僕の前に置いてねー」
エキナ:「は、はい」
(エキナはそう返事をして、大振りのサンドイッチを二つこしらえ、サンドイッチを乗せた皿をことんと置いた)
(魔王はサンドイッチを頬張ったまま、パチンと指を鳴らす)
(直後、皿に乗せられたサンドイッチから、ほかほかと湯気が立ち始めた)
エキナ:「す…………凄いっ!凄いですっ!
 火で焼いたのですか!?あ、でも、どこも焦げてないです…っ!」
魔王:「んー…焼いたっていうのとはちょっと違うかも。
 焼いた、っていうより、温めた、って言う方が正しいねー」
エキナ:「温めた…?
 焼いたとは違うのですか?」
魔王:「うん。
 良く寒い時って体が震えるでしょ?あれ、本能的に体を振動させる事で温めようとしているんだー。
 今回使ったのも同じ原理で、サンドイッチを構成する物質を振動させて温めたんだよー」
エキナ:「そ、そんな事が出来るのですね…流石魔王様…!」
魔王:「ささっ、冷めないうちにどうぞどうぞ」
エキナ:「あっ、はいっ!いただきますっ!
 んぐっ、んぐっ…もぐもぐ…ああ…あったかい…美味しいです…!」
魔王:「良かった良かった」
(エキナと魔王、隣り合って座り、もぐもぐ、もぐもぐと食べ進める)
魔王:「いよいよもうすぐだねー、大晦日」
エキナ:「そうですねー。
 どんな大晦日になるのか、想像も出来なくて、ちょっと不安で…でも、すっごく楽しみです…!」
魔王:「うーん毎年絶対何かあるからねー…なんなら朝まで」
エキナ:「朝までですか!?」
魔王:「うん。
 屋台のみんなも朝まで開店しているし、なんならそのまま三日間ぐらいお店開け続けているからねー」
エキナ:「ぱ、パワフルですね…」
魔王:「そうでもないよ?
 三日目なんかみんなグロッキーで、いきなり網で道端の草を焼き始めるし、それを普通に食べ始めるし、なんか良く分からない蛍光ピンクのドリンク飲んでわっほいってなってるし」
エキナ:「わ、わぁ…。
 で、でも、そんなのもちょっと楽しみですっ!」
魔王:「ちなみにそんな状態になっているの一部の魔物だけだからね?エキナ姫はちゃんと休んでね?」
エキナ:「あっ、はいっ!
 …でも、ちょっと限界まで楽しんでみたいです…」
魔王:「…あー…蛍光ピンクは良いけれどドロッとした紫色は絶対飲んじゃ駄目だからね?
 あれ飲むと一週間寝ずに動けるけれどその後十日はぶっ通しで寝る事になるからね?」
エキナ:「えと、多分そこまではいかないかと…で、でも気を付けますっ!」
魔王:「うんうん。
 みんなもエキナ姫と一緒に年末年始を過ごせるのを楽しみに……楽しみに…………」
エキナ:「…魔王様?
 どうかされたのですか?」
魔王:「えっ!?あっ!うんっ!大丈夫大丈夫なんでもないなんでもないっ!」
エキナ:「そ、そうですか…」
(エキナの言葉の後、エキナも、魔王も、何も喋る事無く、ただただ、もぐもぐとサンドイッチを食べるだけで)
(…そうして、エキナも、魔王も、サンドイッチを食べ終わり)
魔王:「…それじゃあ、もう行くね」
エキナ:「…………」
魔王:「…エキナ姫?」
エキナ:「…………魔王様。
 その、さっきの沈黙…なんですが…やっぱり、何かあるのかなって、思って。
 …さっき…何を、仰りたかったのですか…?」
魔王:「…………何も、無いよ。
 ただ…エキナ姫が、自分の家…ルクスカリバー王国で大晦日を過ごせなくて…それで良いのかなって、思っちゃって」
エキナ:「…魔王様?」
魔王:「…人間界にも魔物はいる。
 ルクスカリバー王国みたいに人間が沢山いる所ではおおっぴらには動けないけれど…陰ながらエキナ姫を護衛させる。
 絶対にエキナ姫の命を守るし、傷付けさせない。
 …どうにも出来なくなったら、魔界の全勢力、僕の魔力全てを注ぎ込んででも、魔界に帰還させる。
 …だから、大晦日…それに新年は、実家に…ルクスカリバー王国に帰した方が良いんじゃないかなって、思っちゃったんだ」
エキナ:「…魔王様…」
(…人間界に帰りたくないと言えば、嘘になる)
(二度と帰れまいと諦めていたから考えもしなかったけれど、帰れると…帰っても良いと分かったら、そう、思う様になった)
エキナ:「…………いえ。
 私は、帰りません」
(しかしエキナは、魔王に、そう返事をする)
(今の会話で、分かった事があった)
(…現状エキナは、命の危機にある)
(魔界にいるからこそ、エキナの命は守られていて)
(…ルクスカリバー王国に戻った瞬間、魔王が全力を尽くさなければならない程の、命の危機に陥る)
(…それが今のエキナの状態だと、理解した)
エキナ:「…その、確かに、帰りたくないと言えば、嘘になります。
 …けれど…けれど、魔王様がそう仰る程、私の立ち場が危ういなら…私はこの魔界に止まります」
魔王:「…あ…ごめん…僕余計な事を…っ!
 でっ、でもっ、もしかしたら何も無いかもしれないしっ!
 何かあっても絶対に、絶対にエキナ姫の事は守るからっ!」
エキナ:「…皆さんにそこまでご迷惑をお掛けしてまで、帰りたいとは思えないです。
 …だから…だから、全部が終わって、心置きなく帰れる様になって…そうなった時に、堂々と帰りたいんです」
(エキナはそう言って、魔王に笑い掛ける)
(魔王はその笑みを見て、ほんの少しだけ、悲しげな笑みを浮かべて)
魔王:「…うん。分かった。
 必ず…必ず、エキナ姫が堂々と、命の危険なんて微塵も感じる事無く、ルクスカリバー王国に帰れる様に、僕も頑張るから」
(そう、返事をした)
エキナ:「それに、本当に本当に、魔界の年越しも楽しみなんですっ。
 自分の知らない世界…未知の世界を見聞きして知る事が、本当に本当に、楽しみなんですっ」
魔王:「…………ん。
 そう言って貰えて、すっごく嬉しいよー。
 …って、もうこんな時間だ…っ!」
(時計を見ると、時刻はすでに深夜二時を越えていた)
(明日もいつも通りの時間ではあるが…明日はとてつもなく忙しい。休める時に休んだ方が良いのは明白だ)
エキナ:「あっ、ごっ、ごめんなさいっ!
 お仕事の途中なのに、お時間を取らせてしまって…!」
魔王:「良いの良いの。
 仕事よりエキナの方が何倍も大切だからねっ!」
エキナ:「あっ、ありがとうござ…………今私の事、エキナって…」
魔王:「…………ごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさい…っ!」
エキナ:「あっ、頭を上げて下さい魔王様っ!というかどうして土下座をっ!?」
魔王:「あのですねけっして呼び捨てにしたくてしている訳では無く無意識に呼び捨てになってしまうというかそのあのメイド長にはメイド長にだけはどうか内密に」
エキナ:「まっ、魔王様っ!
 そのっ、私っ、呼び捨てにされるの、嫌じゃないですっ!
 その、距離が縮んだ様な気がして…胸の中がほんわりとして…ちょっとこそばゆくて…すっごく嬉しい、です…」
魔王:「…そ、そっか…あ、ありがとう…」
エキナ:「……」
魔王:「……」
エキナ:「…………」
魔王:「…………」
エキナ:「……………………」
魔王:「……………………えっ、エキナ姫っ!
もっ、もう眠る時間なんじゃないかなぁーっ!」
エキナ:「はっ、はいっ!そっ、そうですねっ!
 それじゃあ私自室に戻りますっ!」
魔王:「うんそれが良いそれが良いっ!
 後片付けは僕がしておくからっ!」
エキナ:「はいっ!ありがとうございますっ!
 そっ、それでは失礼しますっ!おやすみなさいっ!」
魔王:「うんおやすみっ!また明日っ!」
(ぺこぺこと何度も頭を下げそそくさと厨房を後にするエキナの足音が遠くに行き、聞こえなくなった時)
魔王:「…………なんでこんなに顔が熱いんだ…………!」
(魔王ははぁぁぁぁと深いため息をつきながら、頭を抱え込んだ)


――魔王城 エキナ自室――
(エキナはベッドで横になっている)
(すやりすやり、穏やかな寝息を立て、微笑みながら、眠っている)
エキナ:「…………魔王様…………」
(寝言だろうか、エキナはそう呟き、ふにゃりと表情を緩めた)
(…どんな夢を見ているのか、それは、誰にも分からない)
(けれど、これだけら、確実に言えるのだろう)
(…エキナ姫が見ている夢は、とても、素晴らしい物だ、と)


――魔王城 監視塔――
イキシア:「なんで…なんでよりにもよって今日この日に…ッ!
 タイムッ!今すぐ魔王に伝達ッ!」
タイム:「どうしたイキシア、珍しく取り乱しているが…」
イキシア:「わかんねぇかくそったれッ!そんなんだからサザンカちゃんの気持ちにも気付けねぇんだこの筋肉馬鹿ッ!」
タイム:「?何故ここでサザンカが出て来る?」
イキシア:「あーーーーもう良いッ!っていうか重要なポイントはそこじゃねぇッ!
 魔王に伝達ッ!大至急だッ!寝てたら水だろうが魔術だろうがフライパンとお玉でガンガンやろうが叩き起こせッ!
 …空間…いや、次元に裂け目が出来てやがるッ!」
タイム:「ふむ。…………何を言ってるんだイキシアは」
イキシア:「とっとと行ってくれ頼むからぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」












――??????――
????:「…………どこだここ。
 …あ?なーちん?どこ行ったんだ…?」
(そうして、夜は更けていく)
(様々な思いを、思惑を、トラブルを乗せて)
(魔界は、大晦日を迎えて行くのだ)
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