1 / 5
モンスターを倒しても経験値はゼロ
しおりを挟む
モンスターを倒しても経験値はゼロ。
何も得られない。
よってレベルもアップしない。
この世界の人達は、レベルなんて上りはしない。全ての人達は『Lv.1』からまったく数字が上がっていない。だから、Lv.1で冒険する者だらけだ。
でも、あまりにステータスが強くならないから、大半は逃げだしてしまう。冒険を途中で諦め帝国スティグマに戻ってくる。
諦めた表情の初心冒険者――いや、何度も見た顔が肩を落とし、今日も舞い戻ってくる。俺はその度に、彼らにこう言葉を送る。
『お疲れさん』
俺だってレベルは『1』のままだ。
人生十六年間、まったく微動だにしていない。おいおい、世界さんよ、いい加減にモンスターへ経験値を与えてやってもいいんじゃないか。
冒険者はスライムやゴブリンを倒すので精一杯だ。それ以上のドラゴンとかゴーレムとか強いヤツは討伐できないでいた。圧倒的なレベル差があるからだ。
「辺境伯様! 辺境伯のソレム様!!」
ぼうっと湖で釣りをしていると、銀髪のメイドが現れて俺の体をユサユサと揺らす。そんなに揺らされると魚が逃げるだろう。
この腰まで伸びる長い髪の少女は『アドア』と言って、長年屋敷に仕えてくれているメイドだった。とても可愛らしく、従順。俺の癒しのような存在であり、片想いでもあった。
「どうしたアドア。そんなに慌てて」
「今日もオークによる被害が出たんです」
「またオークか……」
スティグマ帝国の周辺に出現している高レベルのオークの事だ。ヤツ等は『Lv.30』ほどもあるらしく、人間とは『29』の差もある。向こうの方がステータスが上だから、剣で交えても一方的にやられて負ける。
実際にそんな被害が頻発していた。
平民の男たちは無惨に殺され、中には女性が襲われたという被害もあるとか何とか。まあ、酷い噂が絶えない。このままでは、国はどんどん被害が増えていく一方だろう。
俺は、釣りをしている場合ではないかもしれない。……辺境伯としての仕事はしていかないとかな。――少なくとも、皇帝陛下には『何とかしてくれ』と頼まれてもいた。だが、どうやってレベルを上げる?
そもそもの手段がなかった。
「どうなされますか、ご主人様」
「今のところ俺に出来る事はないかな。まー…、レベリングが出来ればなぁとは思うよ。でもさ、いくらモンスターを倒しても人類のレベルは『1』のまま。勝てっこないよ」
「諦めるんですか」
「人間、諦めも肝心だよ?」
「……【経験値獲得クエスト】があるとしてもですか?」
俺はそのままアドアの言葉をスルーした。特に疑問も抱かず、自然に。だが、ハッと頭が巻き戻る。
「経験値獲得クエスト!? なんだそれは、詳しく」
「実は……」
どうやら【経験値獲得クエスト】は、辺境の地にある小さな教会『シンシア教会』で受けられるらしい。何故、そこだけそんなクエストが受けられるのか分からない。分からないが、行ってみる価値はありそうだぞ、これは。
「凄いな、それが本当ならついに人類は初めてレベルアップ出来るワケか」
「ええ、本当ならですが……確証はありません」
「まあ、物は試しだろう。アドア、屋敷は任せるよ。俺は釣りでもしながら、そこを目指してみるさ」
シンシア教会は、徒歩でも一日は掛かるらしいからな。ゆっくり、のんびり向かって行こうじゃないか――。
何も得られない。
よってレベルもアップしない。
この世界の人達は、レベルなんて上りはしない。全ての人達は『Lv.1』からまったく数字が上がっていない。だから、Lv.1で冒険する者だらけだ。
でも、あまりにステータスが強くならないから、大半は逃げだしてしまう。冒険を途中で諦め帝国スティグマに戻ってくる。
諦めた表情の初心冒険者――いや、何度も見た顔が肩を落とし、今日も舞い戻ってくる。俺はその度に、彼らにこう言葉を送る。
『お疲れさん』
俺だってレベルは『1』のままだ。
人生十六年間、まったく微動だにしていない。おいおい、世界さんよ、いい加減にモンスターへ経験値を与えてやってもいいんじゃないか。
冒険者はスライムやゴブリンを倒すので精一杯だ。それ以上のドラゴンとかゴーレムとか強いヤツは討伐できないでいた。圧倒的なレベル差があるからだ。
「辺境伯様! 辺境伯のソレム様!!」
ぼうっと湖で釣りをしていると、銀髪のメイドが現れて俺の体をユサユサと揺らす。そんなに揺らされると魚が逃げるだろう。
この腰まで伸びる長い髪の少女は『アドア』と言って、長年屋敷に仕えてくれているメイドだった。とても可愛らしく、従順。俺の癒しのような存在であり、片想いでもあった。
「どうしたアドア。そんなに慌てて」
「今日もオークによる被害が出たんです」
「またオークか……」
スティグマ帝国の周辺に出現している高レベルのオークの事だ。ヤツ等は『Lv.30』ほどもあるらしく、人間とは『29』の差もある。向こうの方がステータスが上だから、剣で交えても一方的にやられて負ける。
実際にそんな被害が頻発していた。
平民の男たちは無惨に殺され、中には女性が襲われたという被害もあるとか何とか。まあ、酷い噂が絶えない。このままでは、国はどんどん被害が増えていく一方だろう。
俺は、釣りをしている場合ではないかもしれない。……辺境伯としての仕事はしていかないとかな。――少なくとも、皇帝陛下には『何とかしてくれ』と頼まれてもいた。だが、どうやってレベルを上げる?
そもそもの手段がなかった。
「どうなされますか、ご主人様」
「今のところ俺に出来る事はないかな。まー…、レベリングが出来ればなぁとは思うよ。でもさ、いくらモンスターを倒しても人類のレベルは『1』のまま。勝てっこないよ」
「諦めるんですか」
「人間、諦めも肝心だよ?」
「……【経験値獲得クエスト】があるとしてもですか?」
俺はそのままアドアの言葉をスルーした。特に疑問も抱かず、自然に。だが、ハッと頭が巻き戻る。
「経験値獲得クエスト!? なんだそれは、詳しく」
「実は……」
どうやら【経験値獲得クエスト】は、辺境の地にある小さな教会『シンシア教会』で受けられるらしい。何故、そこだけそんなクエストが受けられるのか分からない。分からないが、行ってみる価値はありそうだぞ、これは。
「凄いな、それが本当ならついに人類は初めてレベルアップ出来るワケか」
「ええ、本当ならですが……確証はありません」
「まあ、物は試しだろう。アドア、屋敷は任せるよ。俺は釣りでもしながら、そこを目指してみるさ」
シンシア教会は、徒歩でも一日は掛かるらしいからな。ゆっくり、のんびり向かって行こうじゃないか――。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました
毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作
『魔力掲示板』
特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。
平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。
今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる