わたくしを裏切った伯爵の運命 ~復讐代行でその恨みを晴らします~

夜桜

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◆婚約もしません

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 書かれていた内容に目を疑った。
 でも、これはドノヴァンの直筆。間違いない。

『リーシャ、あの時はよくやってくれた。いつでも我が家へおいで。地下室で君を匿おう』

 わたくしの家を放火した後に送った手紙のようだった。
 家においでって……つまり、わたくしはリーシャと共に過ごしていた……ということ?

「ね、ねえ、ルーク。リーシャはどこにいたの……」
「手紙の通りだ。リーシャはドンヴァンの家の地下室に匿われている」
「そんな! 嘘よ! そんなわけないじゃない!!」
「信じられないだろうね。だが、事実だ」
「こ、この手紙は偽物でしょう!?」
「直筆だと分かっているはずだ。手紙は写しだがな」


 ……ああ、終わった。

 ドノヴァンは、わたくしを裏切っていた。それも最初から。

 彼はわたくしなんてどうでも良かったんだ。

 あの笑顔も、好きという言葉も、愛の言葉もなにもかもが偽り。ただ、騙すために近づいてきたんだ。


「悔しい……悔しいです」
「その為の俺だ。ドノヴァンもリーシャも抹殺する」
「……お願いします。でも、少しだけ待って」
「なにをする気だ」

「ドノヴァンに一言だけ申したいんです」
「今さらなにを」
「それは秘密。それより手紙を借ります」


 わたくしは急いでドノヴァンの家へ向かった。
 戻って早々、彼を探す。
 地下室を確認したいところだけど、それよりも彼だ。

 メイドから所在を聞き、ドノヴァンを発見。
 広間でくつろいでいた。


「怖い顔をしてどうしたんだい、ティア」
「ドノヴァン! よくも騙したわね!」
「……? な、なにを言っているんだ。なにも騙しちゃいない」

「では、この手紙はなんですか」


 手紙の写しを突きつける。
 すると、ドノヴァンは青ざめていた。


「……なぜこれが」
「やっぱり。リーシャを地下室に匿っていたんですね! 最低ですよ!」
「ティア、私は君の為を思って……」
「は? あんな殺人犯を庇うとか意味分からないです。探し出して罰を与えるのではなかったのですか!」

 そう、ドノヴァンはそう言っていた。
 騎士団とかも頼って探し出させていた。
 なのに、どうして。


「そ、それは…………」
「もういい。ドノヴァン、貴方とは一緒になれないわ。婚約もしませんし、以後は敵よ」

「ティア……」

「名前を呼ばないで。覚えておくことね、ドノヴァン……ただでは済まさないわ」


 テーブルの上にあった羽ペンを取り、わたくしはドノヴァンの右手の甲に突き刺した。


「があああああッ!?」
「……謝ってももう遅い。復讐してやる」
「…………う、うぅ」


 痛みに悶えるドノヴァン。けれど、わたくしの心の方が傷ついているし、ずっと痛い。まだまだ足りない。

 もう許せない。
 今から地下室へ向かうことにした。
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