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◆危険な人物
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後日、わたくしは改めてルークのもとを訪ねた。
家の扉をノックすると、すぐに姿を現した。
「来ると思っていたよ、ティア」
「……ルーク。昨日のことでお話が」
「そうだな。いろいろと聞きたいことはあるだろう」
「ええ」
中へ通してもらった。
椅子に座り、さっそく事情を聞いた。
なぜ、ドノヴァンと顔見知りなのか。
なぜ、リーシャが見つからないのか。
そして、バルバトスという名前の真相を。
「もう隠しても仕方ない。俺は本当は貴族なんだ」
「え……」
「バルバトスは義勇軍に所属していた頃に名乗っていた名前さ」
「そうだったのですね」
「ただ、没落貴族でね。平民同然だった。それから知っての通り……サブナック辺境伯の首を討ち取った。その功績が認められ、俺はまた貴族となった。けど、表立った活動はしていない。今の復讐代行をしているルークである俺が本当の姿だ」
そう彼は真っ直ぐな眼差しを向けた。
なるほど。
彼の表の顔……つまり貴族としてはバルバトスであり、復讐代行の姿はルークというわけね。
そうか。なら、ドノヴァンと知り合いなのもうなずける。
「じゃあ、ドノヴァンとは……」
「ちょっとした顔見知り程度さ。向こうはあくまで俺が情報屋だという認識だ」
「では、復讐代行だとか貴族だとかと知らないというわけなの」
「そうだ。俺の本業はあくまで復讐だ」
「分かりました。それで、リーシャは本当に見つかっていないのですか?」
「今日来ると思って伏せていた」
「では……」
「もう潜伏先は分かっている。ドノヴァンは信用ならないからね、あんな風に言ったんだ」
「信用、ならない?」
ルークは言いにくそうに、けれど仕方ないといった風な表情で打ち明けた。
「……ドノヴァンは黒だ」
「え……」
「ティア。君はまた騙されていたんだ」
「どういうことですか……?」
「彼は……危険な人物である可能性が高い……」
「そ、そんなわけが! だって彼はわたくしを支えてくれました。今も寄り添ってくれています。あまり酷く言わないで」
「信じたくない気持ちは分かる。だが、これを見てもそう言っていられるかな」
机の上に一通の手紙を出すルーク。
これがどうしたというの?
なにか書かれているの?
「中身を見ても?」
「どうぞ」
手紙を見てわたくしは…………言葉を失った。
……ドノヴァン、信じていたのに……。
こんなことって……!
家の扉をノックすると、すぐに姿を現した。
「来ると思っていたよ、ティア」
「……ルーク。昨日のことでお話が」
「そうだな。いろいろと聞きたいことはあるだろう」
「ええ」
中へ通してもらった。
椅子に座り、さっそく事情を聞いた。
なぜ、ドノヴァンと顔見知りなのか。
なぜ、リーシャが見つからないのか。
そして、バルバトスという名前の真相を。
「もう隠しても仕方ない。俺は本当は貴族なんだ」
「え……」
「バルバトスは義勇軍に所属していた頃に名乗っていた名前さ」
「そうだったのですね」
「ただ、没落貴族でね。平民同然だった。それから知っての通り……サブナック辺境伯の首を討ち取った。その功績が認められ、俺はまた貴族となった。けど、表立った活動はしていない。今の復讐代行をしているルークである俺が本当の姿だ」
そう彼は真っ直ぐな眼差しを向けた。
なるほど。
彼の表の顔……つまり貴族としてはバルバトスであり、復讐代行の姿はルークというわけね。
そうか。なら、ドノヴァンと知り合いなのもうなずける。
「じゃあ、ドノヴァンとは……」
「ちょっとした顔見知り程度さ。向こうはあくまで俺が情報屋だという認識だ」
「では、復讐代行だとか貴族だとかと知らないというわけなの」
「そうだ。俺の本業はあくまで復讐だ」
「分かりました。それで、リーシャは本当に見つかっていないのですか?」
「今日来ると思って伏せていた」
「では……」
「もう潜伏先は分かっている。ドノヴァンは信用ならないからね、あんな風に言ったんだ」
「信用、ならない?」
ルークは言いにくそうに、けれど仕方ないといった風な表情で打ち明けた。
「……ドノヴァンは黒だ」
「え……」
「ティア。君はまた騙されていたんだ」
「どういうことですか……?」
「彼は……危険な人物である可能性が高い……」
「そ、そんなわけが! だって彼はわたくしを支えてくれました。今も寄り添ってくれています。あまり酷く言わないで」
「信じたくない気持ちは分かる。だが、これを見てもそう言っていられるかな」
机の上に一通の手紙を出すルーク。
これがどうしたというの?
なにか書かれているの?
「中身を見ても?」
「どうぞ」
手紙を見てわたくしは…………言葉を失った。
……ドノヴァン、信じていたのに……。
こんなことって……!
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