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◆復讐代行と伯爵

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 復讐をルークに任せ、わたくしは家へ戻ろうとした――けれど。
 今日はもう少しだけ彼と話をしようと思った。

「ところでルーク。あなたはなぜ復讐代行をしているのです?」
「今日はよく俺のことを聞くな。……いいだろう。君になら話してもいい」

 その前に紅茶を淹れてくれると、ルークは透明なティーポットに手を伸ばす。
 カップも透明で驚いた。
 注がれる黄金色の紅茶。

「へえ、良い趣味していますわね」
「それほどでも」

 香りも味も申し分なし。
 高級な紅茶のようだった。
 センスがあるようね。

「改めて教えていただけないかしら」
「俺の母親はその昔、魔女狩りにあった……」
「それって……」
「ああ、ある貴族の思いつきによって始まった理不尽な処刑だった」

 十年以上前。
 サブナック辺境伯によって実施されたという、なんの根拠もない魔女狩り。女性を一方的に“魔女扱い”して火あぶりにした。
 その犠牲者は数百から数千人も及ぶとか。

 そうか、彼の母親は魔女狩りの犠牲者だったのね。

「それであなたは貴族を恨んだのですね」
「俺はサブナック辺境伯に復讐するため義勇軍に入った」
「義勇軍、ですか」
「当時以前から彼を恨む者は多かった。搾取が酷かったからだ。だから自然と結成されたんだ」
「なるほど」
「当時少年だった俺は、その義勇軍を頼るしかなかったわけさ」

 ルークはその義勇軍に入って戦ったと。
 そういえば、お父様になんとなく聞かされたことがあった。
 ある辺境伯が惨い死に方をしたと。
 それからだ。
 貴族たちの態度が変わったらしい。
 暴動や革命を恐れ、以前よりは大人しくなったという。

「それで今は復讐代行を?」
「そうだ。弱き者を助ける。それが俺の仕事だ」
「でも、わたくしは貴族ですが……」
「君は特別なんだ」
「どういうことです?」

「義勇軍を指揮したのは君の御父上、マルコシアス伯さ」
「え……」

 お父様が義勇軍を?
 そんな話聞いたことがなかった。
 なぜ隠していたのだろう。
 なぜ話してくれなかったの……?

「だから君の依頼は断れなかった」
「そうだったのですね。ありがとう、話してくれて」
「ああ。マルコシアス伯に頼まれたわけではないが、君の復讐なら代わりに果たす」

 わたくしはルークのことが知れて嬉しかった。
 謎に包まれ、きっと自分のことなんて話さないと思っていた。
 けれど意外な接点があって驚いた。
 彼になら任せられる。

 きっとリーシャを追い詰めてくれる。


 * * *


 家を失ったのでドノヴァンを頼るしかなかった。
 彼は歓迎してくれた。

「おかえり、ティア。心配したよ」
「……急に飛び出して申し訳ありません」
「いいんだ、君が無事なら。それより、リーシャを全力で探している。見つけ次第、罰を受けさせる」

「ありがとう、ドノヴァン」
「ああ、任せてくれ」


 復讐代行のルーク。
 それと伯爵になったばかりのドノヴァン。


 二人の力があれば、あの女を簡単に追い詰められるはず。
 首を洗って待っていなさい……リーシャ。
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