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消えゆく者

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「未練はたくさんあるんだが……死霊としてキミを呪いたくはない。せめて清らかな心で逝きたいから……死を受け入れるよ。頼む、キリエ」

 わたしもこんな形で終わりたくはなかった。だから、せめて安らかに。

「アースキン、わたしは貴方を愛していました。助けられなくてごめんなさい……」
「いや、いいんだ。全てはシトラス城伯の仕業だったんだからな」

 彼の身体が消えていく。

「……わたし」
「泣くな、キリエ。ここは笑って別れよう」
「でも……こんなの悲しすぎる」
「その言葉だけで俺は十分救われた。ありがとう」


 さらさらと砂のようにアースキンの姿は消え去った。


「アースキン……」
「彼は操られていたのだな」
「はい、シトラス城伯に……彼が犯人だったんて」

「人間は欲深いからね。僕はそれをよく知っている……だからこそ、この姿になってしまった」

「……ヴァニタス様。その姿になった理由があるのですね」
「ああ、そうとも。僕はもともとは人間だった」


 それ以上、ヴァニタス様は何も言わなかった。多分、まだその時ではないのだ。わたしは敢えて触れなかった。きっといつか、彼から話してくれると信じて――。
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