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幸せ過ぎる時間
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幸せ過ぎる時間を過ごした。
二人きりで優雅なディナーを楽しみ、今は庭でのんびりしていた。
「素晴らしいお庭ですね」
「母が『ラナンキュラス』が大好きでね。枯らさないよう、毎日丁寧に水をあげているんだ」
桃、黄、紫、橙、緑、白色のラナンキュラスが広がっていて、夜でも幻想的に映った。なんて綺麗なんだろう。
「素敵です」
「ありがとう、母も喜ぶよ」
紅茶を味わい、ウィルとの会話に花を咲かせていく。そんなまったりとした時間の中で、突然部屋の奥の扉が開いて誰かがやって来た。
ズカズカと足音を立てて現れたドレス姿の女性。
明らかに貴族の風貌だった。
「ウィル様! お手紙を出したのに、どうして無視されるのですか!」
「……君は誰だい?」
「――なっ! ファルト伯爵の娘のアリーチェですわ。御存知ではありませんか?」
「すまない」
「そ、そうですか……。では明日からお付き合いいただけませんか」
「明日は騎士団の仕事もあるし、今はエレナと一緒なんだ」
ジロッと睨まれるわたし。
アリーチェは明らかにこちらへ敵意を向けてきた。そんな見られても。
そもそも、なぜアリーチェは突然、ウィルのお屋敷に押しかけてきたの? 手紙がどうとか言っていた気がするけれど……いくらなんでも、強引すぎる。時間も遅いし。
わたしは、なにか引っ掛かった。
「アリーチェさん。申し訳ないですが、ウィル様との先約はわたしです」
「……エレナ・ノッティンガム。貴女、大罪人のフレンと婚約していたのではなくて?」
「もう遥か昔の話です。今は関係ありません」
「遥か昔? ウソおっしゃい。たった数日前まで愛し合っていたって聞いたわ。ウィル様、このエレナを信じてはなりません。彼女は魔性の女……お金を毟り取られますよ」
ニヤっと笑ってアリーチェは断言した。
けれど、ウィルは眉ひとつ動かさず、ただ紅茶を味わっていた。まるで興味がないような素振りだった。
「……」
「ウィル様!」
「アリーチェ、君の話はつまらないね」
「――――っ!!」
涙目になるアリーチェは、一歩、また一歩と後ずさる。
そして、彼女は背を向けて去った。
……なんだったのかな。
二人きりで優雅なディナーを楽しみ、今は庭でのんびりしていた。
「素晴らしいお庭ですね」
「母が『ラナンキュラス』が大好きでね。枯らさないよう、毎日丁寧に水をあげているんだ」
桃、黄、紫、橙、緑、白色のラナンキュラスが広がっていて、夜でも幻想的に映った。なんて綺麗なんだろう。
「素敵です」
「ありがとう、母も喜ぶよ」
紅茶を味わい、ウィルとの会話に花を咲かせていく。そんなまったりとした時間の中で、突然部屋の奥の扉が開いて誰かがやって来た。
ズカズカと足音を立てて現れたドレス姿の女性。
明らかに貴族の風貌だった。
「ウィル様! お手紙を出したのに、どうして無視されるのですか!」
「……君は誰だい?」
「――なっ! ファルト伯爵の娘のアリーチェですわ。御存知ではありませんか?」
「すまない」
「そ、そうですか……。では明日からお付き合いいただけませんか」
「明日は騎士団の仕事もあるし、今はエレナと一緒なんだ」
ジロッと睨まれるわたし。
アリーチェは明らかにこちらへ敵意を向けてきた。そんな見られても。
そもそも、なぜアリーチェは突然、ウィルのお屋敷に押しかけてきたの? 手紙がどうとか言っていた気がするけれど……いくらなんでも、強引すぎる。時間も遅いし。
わたしは、なにか引っ掛かった。
「アリーチェさん。申し訳ないですが、ウィル様との先約はわたしです」
「……エレナ・ノッティンガム。貴女、大罪人のフレンと婚約していたのではなくて?」
「もう遥か昔の話です。今は関係ありません」
「遥か昔? ウソおっしゃい。たった数日前まで愛し合っていたって聞いたわ。ウィル様、このエレナを信じてはなりません。彼女は魔性の女……お金を毟り取られますよ」
ニヤっと笑ってアリーチェは断言した。
けれど、ウィルは眉ひとつ動かさず、ただ紅茶を味わっていた。まるで興味がないような素振りだった。
「……」
「ウィル様!」
「アリーチェ、君の話はつまらないね」
「――――っ!!」
涙目になるアリーチェは、一歩、また一歩と後ずさる。
そして、彼女は背を向けて去った。
……なんだったのかな。
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