わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜

文字の大きさ
上 下
13 / 18

幸せ過ぎる時間

しおりを挟む
 幸せ過ぎる時間を過ごした。
 二人きりで優雅なディナーを楽しみ、今は庭でのんびりしていた。

「素晴らしいお庭ですね」
「母が『ラナンキュラス』が大好きでね。枯らさないよう、毎日丁寧に水をあげているんだ」

 桃、黄、紫、橙、緑、白色のラナンキュラスが広がっていて、夜でも幻想的に映った。なんて綺麗なんだろう。

「素敵です」
「ありがとう、母も喜ぶよ」

 紅茶を味わい、ウィルとの会話に花を咲かせていく。そんなまったりとした時間の中で、突然部屋の奥の扉が開いて誰かがやって来た。

 ズカズカと足音を立てて現れたドレス姿の女性。

 明らかに貴族の風貌だった。


「ウィル様! お手紙を出したのに、どうして無視されるのですか!」
「……君は誰だい?」
「――なっ! ファルト伯爵の娘のアリーチェですわ。御存知ではありませんか?」
「すまない」
「そ、そうですか……。では明日からお付き合いいただけませんか」
「明日は騎士団の仕事もあるし、今はエレナと一緒なんだ」

 ジロッと睨まれるわたし。
 アリーチェは明らかにこちらへ敵意を向けてきた。そんな見られても。

 そもそも、なぜアリーチェは突然、ウィルのお屋敷に押しかけてきたの? 手紙がどうとか言っていた気がするけれど……いくらなんでも、強引すぎる。時間も遅いし。

 わたしは、なにか引っ掛かった。

「アリーチェさん。申し訳ないですが、ウィル様との先約はわたしです」
「……エレナ・ノッティンガム。貴女、大罪人のフレンと婚約していたのではなくて?」
「もう遥か昔の話です。今は関係ありません」
「遥か昔? ウソおっしゃい。たった数日前まで愛し合っていたって聞いたわ。ウィル様、このエレナを信じてはなりません。彼女は魔性の女……お金を毟り取られますよ」

 ニヤっと笑ってアリーチェは断言した。
 けれど、ウィルは眉ひとつ動かさず、ただ紅茶を味わっていた。まるで興味がないような素振りだった。

「……」
「ウィル様!」
「アリーチェ、君の話はつまらないね」

「――――っ!!」

 涙目になるアリーチェは、一歩、また一歩と後ずさる。
 そして、彼女は背を向けて去った。

 ……なんだったのかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

彼が愛した王女はもういない

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。 どちらも叶わない恋をした――はずだった。 ※関連作がありますが、これのみで読めます。 ※全11話です。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました

奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」  妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。 「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」 「ど、どうも……」  ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。 「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」 「分かりましたわ」  こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

処理中です...