わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜

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ロレインの末路 Side:ロレイン

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 ▼△ Side:ロレイン


 騎士団を飛び出て、私は急いで屋敷へ戻った。
 ここからグロスター家のお屋敷まで少し歩く。さすがに時間が掛かるので送迎担当の御者に頼んで馬車を引いて貰った。

 青年は厩務員きゅうむいんもしているようで、そんなお話を聞かせてもらった。けれど、今はそんなことよりもお父様に会わねば。

「お客さん。そういえば、元老院で事件があったそうですよ」
「へえ? 元老院で。どうせ議員たちの揉め事でしょう。いつものことです」
「それが、ついさきほどグロスター最高議長が解任されたとか」

 そんな情報を耳にして、私は頭が真っ白になった。
 ……最高議長が解任?
 なんで……?

「そ、その話、詳しく聞かせてちょうだい」
「なんでも、騎士団長とノッティンガム家のご令嬢が元老院を訪れたそうで……。その場は一触即発の現場だったようです」

「なにがあったの?」

「グロスター最高議長が罪を犯していたようです。国家反逆罪で処刑されたようですよ」
「…………え」


 処刑――その言葉を聞いた瞬間、私は脱力した。どうして……どうしてお父様が処刑されなければならないの!?

 お父様は帝国の為に、献身的に尽くしていたというのに。

 犯罪ですって?

 そんなの濡れ衣よ!


「私は信じない。そんなの嘘よ」
「では、ご自身の目で確かめてはいかがです?」
「……分かった。急いでちょうだい。屋敷へ――いえ、元老院へ向かって」
「分かりました。スピードを出しますので揺れますよ」

 加速する馬車。
 お父様……どうか、ご無事でいてください……。


 * * *


 元老院に到着。
 馬車を降りて急いで中へ。
 不気味な静けさががあった。

 ……いつもと様子が違う。
 議員たちの姿もない。いったい、どこへ行ってしまったの……? 不思議に思っていると、部屋の奥から見知った顔が現れた。

「あなた……!」
「やあ、ロレイン。ここへ来ると思ったよ」

 椅子に腰かけ、足を組む男。
 元々は私の家の『執事』だった……ソールズベリー。なぜ、ここに。

「どういうことなの! なんで元執事がここにいるの! お父様はどこ!!」
「落ち着きなよ、ロレイン」
「呼び捨てにしないで! あんた平民でしょ。執事でしょ! 貴族に対する礼儀はどうしたの!」

「今の私はノッティンガム家に仕える執事。エレナ様専属なんだよ。知っているよね」


 そう、この男は一週間前に突然、執事を辞めるといい……私の元から去った。そこまでは良かった。私も彼のことを別になんとも思っていなかったし。
 でも、よりによってあのエレナの執事になるだなんて!!
 あの女だけは無理。


「この裏切者!」
「それは誉め言葉として受け取っておくよ。さて、それよりもご自身の身を案じた方がいい」

「な、なにをする気……!」

「ロレイン。ロレイン・グロスター、貴女は最高議長の娘。いや、訂正しよう。元最高議長の娘。グロスターの家は爵位も剥奪された。もう貴族でもない。私と同じ平民だ」

「……!」

 いつの間にそんなことに……嘘よ、信じられない!

「今、貴女は嘘だと思った。でもね、これが真実なんだ。グロスター最高議長は死んだ! そして、ロレイン……貴女は奴隷として生きるんだ。あの劣悪な環境と言われている隣国・マーテローで一生を過ごすんだ」

「なによ、それ! ふざけないで!」


 私はこの場から逃げ出した。
 今は自分の身を守らないと……。

 けれど、部屋を出たところで御者の青年に阻まれた。


「どちらへ行かれるのですか、ロレイン様」
「ちょっと、そこをどいて!」
「残念ですが、貴女を隣国へ連れていきます。それが、ソールズベリー様との約束ですから」

「あなたもあの男の仲間ってこと……?」

「いかにも。ソールズベリー様の計画は完璧。そう、貴方とウィルはただの踏み台でしかないのです」


 この男も、あの男も……全員、私を裏切って……! ……まさか、ウィルも!? も、もう誰も信じられない……! こんなの嫌!!

 頭を抱えていると、私は意識を失っていた。

 拘束され、どこかへ連れて行かれていかれた。
 きっと隣国に行くんだ。
 私は……私の人生はおしまいなのね。こんなことになるなんて……。エレナにもウィルにも関わらなければ…………。
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