わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜

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君に会いたかった

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 ロレインが去って、二人きりになった。
 厳密に言えば執事のソールズベリーがいるけれど、彼には退室してもらった。これでようやく、ゆっくりお話ができる。

「ウィル様、今日はわざわざ来ていただきありがとうございます」
「約束だからね。それに――」
「それに?」
「エレナ、君に会いたかった」

 大地のような優しい微笑みを向けられ、それだけで胸が高鳴った。
 未だかつてない激しい鼓動。
 こんな風になったのは初めてかもしれない。

 フレンの時は、お爺様の紹介だったから運命的な出逢いとか、そういうのではなかった。お見合いに近い状況だった。話が合ったし、当時は引っ張ってくれそうだなって思った。でもそれは幻想に過ぎなかった。

 あの時のわたしは状況に流されるままだった。世間のことも知らなかったし。けれど、フレンの行動を監視するようになってから、外の世界を知った。
 一歩外へ出れば闇が蔓延はびこっていた。一部の悪い人たちが違法行為を繰り返していたのだ。

 そんな劣悪になろうとしていた治安を、ウィルは是正しようと必死だった。騎士団のことを知ったわたしは彼と会い、フレンのことで意気投合した。

 彼には不審な点が多くあると。
 友を疑いたくはないとウィルは苦悩していたけど、人々を正しく導く為にも正義を貫く決意を固めた。

 そうして、今に至った。

「わたしもです。最近は事件のことでバタバタしていまいたが、ようやく落ち着いてお話する機会が巡ってきました」
「忙殺の毎日だった。忙しいことは悪いことではないけど、たまにはのんびりしないとね。だから今日はエレナに会えて本当嬉しいんだ」

 包まれるような、ゆったりとした口調でそう言葉にされ、わたしは心の中で悶えていた。必死に必死に感情を抑えつけ、顔に出さないように頑張った。……あぶなかった。危うく口が綻んでしまうところだった。
 そんな、はしたない表情をウィルに見せるわけにはいかない。

「な、なんだか暑いですね」
「そうだな。ちょっと散歩でも行こうか」
「喜んで」

 庭に出て少し外へ。
 陽射しがまぶしい。
 風が心地よい。
 庭園の花の香り。
 静かに時を進める噴水。
 微かな虫の鳴き声。

 こんなに心が躍るだなんて。
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