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インペリウム帝国元老院の娘 Side:ロレイン
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▼△ Side:ロレイン
エレナ・ノッティンガムがどんな女性か一目で理解できた。
彼女は騎士団長のウィルに夢中だ。
ウィル自身も彼女を瞳に宿している。
だから今が最大のチャンスだと感じた。
……やるしかない。
足早に騎士団へ向かう。目的はただひとつ。フレン・アークエットの元へ向かう。中へ入ろうとすると番人をしている騎士に阻まれた。
「面会希望者か? 許可はあるのか?」
「もちろん許可はあります」
私は予め準備しておいた偽造の許可証を提示した。騎士団長の名が書かれている。けれどこれは巧妙な写し。普通に目を通しても、まず分からない。
「どうやら本物の許可証のようだ。いいだろう」
牢屋に通して貰えることになった。
騎士の背を追いかけ、肌寒く、薄暗い通路を歩いてく。やがて、彼が収監されている牢の前に辿り着いた。
「フレン・アークエット」
「…………」
名を呼んでも彼はベッドに横たわっているだけだった。肩を負傷しているせいか、ロクに動けないみたい。苦しそうに本のページをめくっていた。
「フレン様、こちらを向いて」
「……すまないが、帰ってくれ。誰とも会う気はないよ」
「私です。ロレイン……ロレイン・グロスターです」
その名を聞いて、フレンは振り向いて体を起こした。ベッドから降りて、ゆっくりと近づいてきた。
「……ロレイン。君は、あのロレインか」
「そうです。エレナを捨ててから婚約するはずだった……」
私と彼は近いうち、会って婚約を交わすはずだった。
事件が起きて白紙になったけど、私は被害者を装ってエレナに接近した。彼女がどれほどフレンのことを思っていたのか確かめる為に。
でも、彼女はもう騎士団長に、うつつを抜かしていた。エレナの愛はその程度だったんだ。
「ロレイン、君も僕を恨んでいるんだろう。残念だが、近い内に死刑さ」
「恨んでなどいません。それよりも、フレン様は私の希望です。だからここから出して差し上げます」
「無理だ。騎士が何人いると思っている」
「瑣末な問題です。要はフレン様を無罪にすればいいのでしょう?」
「そんなの不可能だろう。僕は数え切れないほどの罪を犯した。覚えていないほどにね。それどうやって無罪に?」
「簡単なことです。私は、インペリウム帝国元老院の長であるマクシムの娘。お父様に交渉すれば必ずや……」
「なぜだ。なぜそこまで僕にこだわる。リスクしかないぞ」
「好きになってしまったんです」
「そんな単純な理由で?」
「ええ、そんな単純な理由です。フレン、あなたの行いは軽蔑に値する。でも、あなたのような容姿に恵まれた男性をこのまま処刑するなど、それこそ罪深い」
そう素直な気持ちを吐露すると、彼は口元を歪め、次第に笑い始めた。
「……ハハ。ハハハハ。ロレイン・グロスター、君は狂っているよ。だが、その狂気が時には美しく感じる。希少な宝石に勝るとも劣らない、光彩だ。
いいだろう、お前の口車に乗ってやろう」
決まった。私はフレン・アークエットを無罪して牢から出す。
エレナ・ノッティンガムがどんな女性か一目で理解できた。
彼女は騎士団長のウィルに夢中だ。
ウィル自身も彼女を瞳に宿している。
だから今が最大のチャンスだと感じた。
……やるしかない。
足早に騎士団へ向かう。目的はただひとつ。フレン・アークエットの元へ向かう。中へ入ろうとすると番人をしている騎士に阻まれた。
「面会希望者か? 許可はあるのか?」
「もちろん許可はあります」
私は予め準備しておいた偽造の許可証を提示した。騎士団長の名が書かれている。けれどこれは巧妙な写し。普通に目を通しても、まず分からない。
「どうやら本物の許可証のようだ。いいだろう」
牢屋に通して貰えることになった。
騎士の背を追いかけ、肌寒く、薄暗い通路を歩いてく。やがて、彼が収監されている牢の前に辿り着いた。
「フレン・アークエット」
「…………」
名を呼んでも彼はベッドに横たわっているだけだった。肩を負傷しているせいか、ロクに動けないみたい。苦しそうに本のページをめくっていた。
「フレン様、こちらを向いて」
「……すまないが、帰ってくれ。誰とも会う気はないよ」
「私です。ロレイン……ロレイン・グロスターです」
その名を聞いて、フレンは振り向いて体を起こした。ベッドから降りて、ゆっくりと近づいてきた。
「……ロレイン。君は、あのロレインか」
「そうです。エレナを捨ててから婚約するはずだった……」
私と彼は近いうち、会って婚約を交わすはずだった。
事件が起きて白紙になったけど、私は被害者を装ってエレナに接近した。彼女がどれほどフレンのことを思っていたのか確かめる為に。
でも、彼女はもう騎士団長に、うつつを抜かしていた。エレナの愛はその程度だったんだ。
「ロレイン、君も僕を恨んでいるんだろう。残念だが、近い内に死刑さ」
「恨んでなどいません。それよりも、フレン様は私の希望です。だからここから出して差し上げます」
「無理だ。騎士が何人いると思っている」
「瑣末な問題です。要はフレン様を無罪にすればいいのでしょう?」
「そんなの不可能だろう。僕は数え切れないほどの罪を犯した。覚えていないほどにね。それどうやって無罪に?」
「簡単なことです。私は、インペリウム帝国元老院の長であるマクシムの娘。お父様に交渉すれば必ずや……」
「なぜだ。なぜそこまで僕にこだわる。リスクしかないぞ」
「好きになってしまったんです」
「そんな単純な理由で?」
「ええ、そんな単純な理由です。フレン、あなたの行いは軽蔑に値する。でも、あなたのような容姿に恵まれた男性をこのまま処刑するなど、それこそ罪深い」
そう素直な気持ちを吐露すると、彼は口元を歪め、次第に笑い始めた。
「……ハハ。ハハハハ。ロレイン・グロスター、君は狂っているよ。だが、その狂気が時には美しく感じる。希少な宝石に勝るとも劣らない、光彩だ。
いいだろう、お前の口車に乗ってやろう」
決まった。私はフレン・アークエットを無罪して牢から出す。
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