わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜

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会いに来てくれた騎士団長

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 お庭をぼうっと眺めていると、執事のソールズベリーが慌てていた。
 急に慌しくなってどうしたのかなと視線を送ると――扉の向こうにはウィルの姿があった。

「……ウ、ウィル様!」

 騎士の姿ではなく、煌びやかな宮廷服に身を包まれている。爽やかな笑みを浮かべ、こちらを見ていた。

「入ってもいいかな」
「ど、どうぞ、お入りください。ソールズベリー、お紅茶をお願い」

 突然のことに、わたしは震えた。
 まさかこんなタイミングでやって来るだなんて……。もう来ないかとさえ思っていたのに。ようやく会えて嬉しい。

 でも……見たこともない女性が一緒だった。

 腰まで伸びる赤い髪。黒いリボンでまとめて可愛らしい。歳は、わたしよりも下のように見える。十五、十六歳あたりかな。……まさか、ウィルの恋人とか婚約者? そんな嫌な予感が脳裏を過ぎった。

「この日を心待ちにしていたよ、エレナ」
「そのように言っていただけて、わたしも嬉しいです。……ところで、そちらの方は?」「ああ、紹介しよう。こちらの赤髪の女の子はロレイン。君にどうしても会いたいというから、今日は来てもらった」

「わたしに?」


 どういうことだろうと不思議に思っていると、ロレインが口を開いた。


「はじめまして、エレナ様。私はあのフレンに騙された内のひとりです」
「え……フレンに?」
「はい。危うく奴隷にされてしまうところでした。でも、エレナ様があの男を悪行を暴いて、騎士団に突き出したと。それを聞いてとても感動したんです」

 そういうことだったのね。
 わたしは、ちょっと悪い方向に考えていたのだけど、それは気のせいだった。……良かった。


「被害者が他にもいたとは聞いていましたが、こんな少女まで……」
「そうなんだ、エレナ。この事件は思った以上に重いものなんだ」
「それで、フレンはどうなったのです?」
「死刑には違いはないんだが、取り調べが思った以上に掛かっていてね。フレンと繋がりのある組織を洗っているところなんだ」


 まだまだ時間は掛かりそう。
 でも騎士団に捕らえられている以上、逃げることも出来ないし……安心はしていいはず。

「そうですね、フレンだけを裁いても奴隷商が残っていては根本的解決にはなりませんものね」
「理解があって嬉しいよ。それまで待っていてくれ」
「はい。裁きが下されることを信じています」


 納得しているとロレインが「私はそろそろ帰ります」とお辞儀をしていた。


「もういいの? わたしに話があったのでは?」
「お礼が言いたかっただけなので。……その、これ以上は邪魔になってしまうと思いますし」

 申し訳なさそうに去っていくロレイン。まさか空気を読んでくれたの……? なんだか気を遣わせてしまって逆に申し訳なかった。けれど、わたしは一刻も早くウィルと二人きりになりたかった。
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