わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜

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元騎士の執事 Side:ソールズベリー

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▼△ Side:ソールズベリー

 ノッティンガム家の長女にして辺境伯令嬢エレナ・ノッティンガムは熱が噴き出るほどの恋をしてしまったようです。熱に浮かされる毎日。
 窓辺の席で溜息を吐いては、想いに更けているようでした。

 ――あぁ、そうでした。

 私は、ノッティンガム家に仕えるしがない執事。エレナ様専属。たった三日前に雇われたばかりの新米ですが。


「お嬢様、お紅茶です」
「ありがとう、ソールズベリー」
「また騎士団長のことを?」
「分かる……? うん、そうなの。あれからウィル様が現る気配がないから……。きっとフレンのことで大変なんでしょうけど」

 婚約破棄され、大事件が解決して三日目。あれから、エレナ様はずっと騎士団長ウィルのことばかり考えているようでした。

「だから、私を雇われたのですか」
「ええ、ソールズベリー、あなたは騎士団の元騎士。ウィル様とも幼馴染だとか」

 その通りだった。
 私はウィルと子供の頃からの付き合い。共に騎士になろうと誓い合い、この歳まで頑張ってきた。けれど、私には騎士としての才能がなかった。
 いや、剣の腕が絶望的で迷惑しか掛けないので自ら退団を申し出たのだ。

 ……おっと、まだ不慣れなもので口調が定まらないですね。

 とにかく、私は職を失い国を彷徨っていた。そんなところをエレナ様は私を執事として雇ってくださった。おかげで病弱な妹の為に薬を買ってあげれそうです。


「お嬢様は、私に恋のキューピットになって欲しいのですね」
「そ、そんなところよ。ウィル様の好きな食べ物だとか、趣味だとか教えてちょうだい」
「――そうですね、ウィルは異国の食べ物を好むようです」
「異国の? たとえば?」
「とてもスパイシーな味がする“カリー”と呼ばれるスープですね。あれは甘くもなるし、辛くもなる。ウィルは、辛い方を好むようです」
「へえ、辛い物がお好きなのね。それはいい情報を得たわ」

 そんな話をしていれば来客を知らせる鐘が鳴り響く。私は急いで玄関へ向かいました。すると、そこには見知った顔のウィルと……。

 おっとこれは参りましたね。
 彼女が来られるとは。
 これはひと悶着あるかもしれません。
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