2 / 18
騎士団長・ウィル
しおりを挟む
騎士団長・ウィルが全てを教えてくれた。
ウィル・フェニックスとフレンは友人に近い存在だった。
わたしは、フレンを通して自然と顔見知りとなり、知らない仲ではなくなった。
ある日、ウィルはフレンの情報を打ち明けてくれたのだ。アークエット家の長男フレンには、もう一つの顔があった。
わたしと婚約を結ぶまえ、その甘く優しい顔立ちゆえに女性から声を掛けられることが多く、付き合うことも多かったという。
けれどウィルが、フレンの屋敷を訪ねると傷跡だらけの女性が出入りしているところを何度も目撃したのだとか。
そして……密かに事件も起きていた。
国中の、何人もの女性が“行方不明”になっていたのだ。一部では誘拐だの神隠しだの噂が立った。
その真相は、わたしとウィルが明らかにした。
わたしは女性達のお金の流れを。
ウィルは行方不明になった女性達を辿った。
その結果、お金は全てフレンが手にしていた。恐ろしいことに奴隷商と繋がりがあって、巧みにお金を隠したり、女性を売り飛ばしてもいたのだ。
中には殺されてしまった女性もいる……。
それを耳にした時、わたしは言葉を失った。彼はいつも愛してくれていたのに……その実は財産目当ての人殺しだったんだ。
「なんて酷いことをしたのです、フレン」
わたしが言葉を投げかけると、彼は不敵に笑った。まるでもう諦めたかのように。
「……フフ、フハハ。エレナ、君はせめてもの“情け”だったんだぞ」
「え……」
「奴隷商に売り飛ばされなかっただけ、ありがたく思えよ。お前は美貌と金だけはあった。だから特別だったんだ。そう……いい金づるだったよ」
本当にお金のことしかないんだ。
あの言葉も、笑顔も、仕草も、思い出も全て偽りだったんだ。
海のように深いショックが全身を駆け巡る。……倒れそう。いっそ、倒れてしまいたい。……もう辛い。
酷い立ちくらみに襲われると、誰かが背中を支えてくれた。
「大丈夫かい、エレナ。君の痛みを取り除いてあげよう」
「ウィル様……」
騎士団長ウィルが腰に携えている剣を抜いた。そのまま刃をフレンの右肩に突き刺した。
「ギャアアァァ……!! 痛、痛ぇ……!! な、な、なにをするぅ!!」
「フレン、君を唯一無二の親友だと思っていたのに。残念だ」
「……た、助けてくれ、ウィル! 僕は無実だ。あのエレナが僕を騙したんだ!!」
ウィルは呆れて溜息を吐いた。
わたしも無実を訴えたフレンに怒りを通り越して、憎しみの混じった嫌悪感しか湧き出なかった。この男……まだこんな言い訳を。
「フレン・アークエット、お前は二十三件の殺人事件に関与している。ここで死刑にしやってもいいが、取り調べがある」
「クソ……クソォ!!」
ウィル・フェニックスとフレンは友人に近い存在だった。
わたしは、フレンを通して自然と顔見知りとなり、知らない仲ではなくなった。
ある日、ウィルはフレンの情報を打ち明けてくれたのだ。アークエット家の長男フレンには、もう一つの顔があった。
わたしと婚約を結ぶまえ、その甘く優しい顔立ちゆえに女性から声を掛けられることが多く、付き合うことも多かったという。
けれどウィルが、フレンの屋敷を訪ねると傷跡だらけの女性が出入りしているところを何度も目撃したのだとか。
そして……密かに事件も起きていた。
国中の、何人もの女性が“行方不明”になっていたのだ。一部では誘拐だの神隠しだの噂が立った。
その真相は、わたしとウィルが明らかにした。
わたしは女性達のお金の流れを。
ウィルは行方不明になった女性達を辿った。
その結果、お金は全てフレンが手にしていた。恐ろしいことに奴隷商と繋がりがあって、巧みにお金を隠したり、女性を売り飛ばしてもいたのだ。
中には殺されてしまった女性もいる……。
それを耳にした時、わたしは言葉を失った。彼はいつも愛してくれていたのに……その実は財産目当ての人殺しだったんだ。
「なんて酷いことをしたのです、フレン」
わたしが言葉を投げかけると、彼は不敵に笑った。まるでもう諦めたかのように。
「……フフ、フハハ。エレナ、君はせめてもの“情け”だったんだぞ」
「え……」
「奴隷商に売り飛ばされなかっただけ、ありがたく思えよ。お前は美貌と金だけはあった。だから特別だったんだ。そう……いい金づるだったよ」
本当にお金のことしかないんだ。
あの言葉も、笑顔も、仕草も、思い出も全て偽りだったんだ。
海のように深いショックが全身を駆け巡る。……倒れそう。いっそ、倒れてしまいたい。……もう辛い。
酷い立ちくらみに襲われると、誰かが背中を支えてくれた。
「大丈夫かい、エレナ。君の痛みを取り除いてあげよう」
「ウィル様……」
騎士団長ウィルが腰に携えている剣を抜いた。そのまま刃をフレンの右肩に突き刺した。
「ギャアアァァ……!! 痛、痛ぇ……!! な、な、なにをするぅ!!」
「フレン、君を唯一無二の親友だと思っていたのに。残念だ」
「……た、助けてくれ、ウィル! 僕は無実だ。あのエレナが僕を騙したんだ!!」
ウィルは呆れて溜息を吐いた。
わたしも無実を訴えたフレンに怒りを通り越して、憎しみの混じった嫌悪感しか湧き出なかった。この男……まだこんな言い訳を。
「フレン・アークエット、お前は二十三件の殺人事件に関与している。ここで死刑にしやってもいいが、取り調べがある」
「クソ……クソォ!!」
531
お気に入りに追加
618
あなたにおすすめの小説

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。

彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。


あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。

婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる