わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜

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騎士団長・ウィル

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 騎士団長・ウィルが全てを教えてくれた。

 ウィル・フェニックスとフレンは友人に近い存在だった。
 わたしは、フレンを通して自然と顔見知りとなり、知らない仲ではなくなった。

 ある日、ウィルはフレンの情報を打ち明けてくれたのだ。アークエット家の長男フレンには、もう一つの顔があった。

 わたしと婚約を結ぶまえ、その甘く優しい顔立ちゆえに女性から声を掛けられることが多く、付き合うことも多かったという。

 けれどウィルが、フレンの屋敷を訪ねると傷跡だらけの女性が出入りしているところを何度も目撃したのだとか。

 そして……密かに事件も起きていた。

 国中の、何人もの女性が“行方不明”になっていたのだ。一部では誘拐だの神隠しだの噂が立った。

 その真相は、わたしとウィルが明らかにした。

 わたしは女性達のお金の流れを。
 ウィルは行方不明になった女性達を辿った。

 その結果、お金は全てフレンが手にしていた。恐ろしいことに奴隷商と繋がりがあって、巧みにお金を隠したり、女性を売り飛ばしてもいたのだ。

 中には殺されてしまった女性ひともいる……。


 それを耳にした時、わたしは言葉を失った。彼はいつも愛してくれていたのに……その実は財産目当ての人殺しだったんだ。


「なんて酷いことをしたのです、フレン」


 わたしが言葉を投げかけると、彼は不敵に笑った。まるでもう諦めたかのように。


「……フフ、フハハ。エレナ、君はせめてもの“情け”だったんだぞ」
「え……」
「奴隷商に売り飛ばされなかっただけ、ありがたく思えよ。お前は美貌と金だけはあった。だから特別・・だったんだ。そう……いい金づる・・・・・だったよ」


 本当にお金のことしかないんだ。
 あの言葉も、笑顔も、仕草も、思い出も全て偽りだったんだ。

 海のように深いショックが全身を駆け巡る。……倒れそう。いっそ、倒れてしまいたい。……もう辛い。

 酷い立ちくらみに襲われると、誰かが背中を支えてくれた。


「大丈夫かい、エレナ。君の痛みを取り除いてあげよう」
「ウィル様……」


 騎士団長ウィルが腰に携えている剣を抜いた。そのまま刃をフレンの右肩に突き刺した。


「ギャアアァァ……!! 痛、痛ぇ……!! な、な、なにをするぅ!!」
「フレン、君を唯一無二の親友だと思っていたのに。残念だ」

「……た、助けてくれ、ウィル! 僕は無実だ。あのエレナが僕を騙したんだ!!」

 ウィルは呆れて溜息を吐いた。
 わたしも無実を訴えたフレンに怒りを通り越して、憎しみの混じった嫌悪感しか湧き出なかった。この男……まだこんな言い訳を。

「フレン・アークエット、お前は二十三件の殺人事件に関与している。ここで死刑にしやってもいいが、取り調べがある」

「クソ……クソォ!!」
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