わたしの目は奪われた

夜桜

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殺人鬼の最期

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 気づけばフレアは地面に転がっていた。


「…………っ!」


 アイスピックを失い、戦意すら喪失していた。
 クィントゥス様は思った以上に強かった。


「諦めて下さい、フレア」
「クィントゥス……私を捕まえるの……!?」
「もちろんです。あなたは罪を重ね過ぎた。法の裁きを受けて貰います」


 地面に腰を抜かし、震えるフレアは涙目になっていた。こうなってはもう殺人鬼も何もない。ただの少女。

 わたしもフレアに一言を添えた。

「フレア。あなたを許すことはありません。罪を償いなさい」
「…………な、なによ。お姉様なんか不幸になってしまえば良かったのに……」

 殺意むき出しの眼差しをわたしに向けるフレア。そこまで、わたしを恨んでいるというの……。
 そうね、そもそも目を奪うほどだ。
 殺意があっても不思議ではない。
 でも苦しめるために目だけを奪った。
 それが許せなかった。

「そう。言いたいことはそれだけなの、フレア」
「…………そうよ」

「分かった。もういい」


 どのみちフレアは終わり。
 殺人鬼カシウスであり……何人も殺してしまった以上はもう死刑は免れない。

 けれどフレアは急に動き出し、地面に転がったアイスピックを拾い上げた。


「フレア!」
「……さらし首になるくらいなら、自分で死を選ぶ!」


 手にしたアイスピックを自ら心臓に突き刺し、フレアは倒れた。……な、なんてことを……!


「愚かなことを!」
「…………ふ。ふふふ……。もうこの世に未練なんてないわ。私は……先に…………」


 最後まで狂ったように笑い、フレアは絶命した。


「クィントゥス様……」
「大丈夫ですか、ソラナ様」
「はい。でもこれで殺人鬼は死にました。もう誰も殺されない……ですよね」
「そうです。これで終わったのです」


 やっと平和が訪れる。
 もう夜に怯える必要もない。
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