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妹の嫌がらせ
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更に三日後。
少しずつ動けるようになり、短い時間だけど散歩をしていた。
今日は久しぶりに庭を歩いた。
陽射しが丁度いい暖かさで眠くなりそう。
穏やかな時間が流れ、きっとこのまま回復できる。
そして、犯人を探す。
けれど。
「――あら、お姉様じゃないですか」
「え……」
ちょうど誰かとすれ違ったと思ったら、見覚えのある顔だった。妹のフレアだった。
「生きていらしたんですね。良かったですね」
「…………誰も見舞いにこないと思ったら、フレアが来てくれたのね」
「ええ。わざわざ足を運んできてあげたんです。感謝してくださいね、お姉様。それより、左目を失ったとか。大変ですね!」
嘲笑うかのようにフレアは、愉快そうな表情を浮かべる。……分かっていた。
妹はわたしのことが嫌いなのだと。
ずっと前からそうだった。
先に婚約が決まり、わたしは幸せを掴みかけていた。だけど、フレアはそれが気に入らなかったようだ。
「もういいわ。帰って、フレア」
「もちろんです。こんなくだらないことで時間を浪費している暇はないんです。では、もう二度と来ませんので!」
散々言ってフレアは去った。
なにしに来たのだか。
もしかして、わたしのこんな姿を笑いに来た、とか。
なら、わたしは逆に妹疑ってしまう。
彼女こそ殺人鬼なのではないかと。
普通の人間の感性なら、こんなにボロボロになったわたしを笑いには来ない。もしかして……。いえ、仮にも家族。そんなはずはないと思いたい。
「どうしたんですか、ソラナ様」
ちょうどクィントゥス様が現れた。
「その、妹のフレアに出会いまして……」
「……どうやら、あんまり良い感じではなかったようですね」
「はい。妹はわたしを笑いに来たようなのです」
「なんてこと……許せないですね」
「クィントゥス様、わたしはどうすれば……」
「大丈夫です。この私がソラナ様を守りします。この貴族病院に留まる必要もありません。我が家に来てください」
「いいのですか?」
「歓迎しますよ」
よかった。これでお父様やフレアから嫌なことを言われないで済む。今はとにかく精神を安定させたい。
少しずつ動けるようになり、短い時間だけど散歩をしていた。
今日は久しぶりに庭を歩いた。
陽射しが丁度いい暖かさで眠くなりそう。
穏やかな時間が流れ、きっとこのまま回復できる。
そして、犯人を探す。
けれど。
「――あら、お姉様じゃないですか」
「え……」
ちょうど誰かとすれ違ったと思ったら、見覚えのある顔だった。妹のフレアだった。
「生きていらしたんですね。良かったですね」
「…………誰も見舞いにこないと思ったら、フレアが来てくれたのね」
「ええ。わざわざ足を運んできてあげたんです。感謝してくださいね、お姉様。それより、左目を失ったとか。大変ですね!」
嘲笑うかのようにフレアは、愉快そうな表情を浮かべる。……分かっていた。
妹はわたしのことが嫌いなのだと。
ずっと前からそうだった。
先に婚約が決まり、わたしは幸せを掴みかけていた。だけど、フレアはそれが気に入らなかったようだ。
「もういいわ。帰って、フレア」
「もちろんです。こんなくだらないことで時間を浪費している暇はないんです。では、もう二度と来ませんので!」
散々言ってフレアは去った。
なにしに来たのだか。
もしかして、わたしのこんな姿を笑いに来た、とか。
なら、わたしは逆に妹疑ってしまう。
彼女こそ殺人鬼なのではないかと。
普通の人間の感性なら、こんなにボロボロになったわたしを笑いには来ない。もしかして……。いえ、仮にも家族。そんなはずはないと思いたい。
「どうしたんですか、ソラナ様」
ちょうどクィントゥス様が現れた。
「その、妹のフレアに出会いまして……」
「……どうやら、あんまり良い感じではなかったようですね」
「はい。妹はわたしを笑いに来たようなのです」
「なんてこと……許せないですね」
「クィントゥス様、わたしはどうすれば……」
「大丈夫です。この私がソラナ様を守りします。この貴族病院に留まる必要もありません。我が家に来てください」
「いいのですか?」
「歓迎しますよ」
よかった。これでお父様やフレアから嫌なことを言われないで済む。今はとにかく精神を安定させたい。
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