聖女はあと三回ループできる

夜桜

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あと三回ループできる

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「ミラ、婚約破棄してくれ」

 またこの言葉。
 もう何度、何十回聞いたか分からない。その分だけループした。何度説得を試みても、何度行動パターンを変えさせても……レイン公爵様の意思は変わらなかった。結果は何も変わらない。思う様にならなかった。

 どうしてなの……。

 わたしは、またループを繰り返す。


『――聖女ミラ、貴女がループできる回数はあと三回です』


 いつものようにループすると、声が聞こえた。もしかして、神様からのお告げ?


「そ、そんな……あと三回だなんて」
『残念ですが、聖女としての力が消えかけているのです』
「ループしすぎたのね……」
『ええ、ですからあと三回で頑張って下さい』


 声は消えた。

 それから、わたしは一回目も二回目も失敗。ついに最後の三回目を迎えた。


 あまりに失敗を繰り返したから、わたしはもう自暴自棄になっていた。それに、国の情勢も悪くなっていた。だから……。


「……レイン公爵様、婚約破棄してください!! もういいです!!」

「――――なっ! ミラ、待ってくれ!!」


 あれ? いつもと違う。
 どうしてかしら。
 でも、もう未練はない。


「もう公爵様も国もいりません。わたしは隣国のハーネスへ向かいます。さようなら」
「ま、まてミラ! 君がいないと僕はおしまいだ!! そんな事を言わずに戻ってきてくれ!! 頼む!! 頼むからああああ……」


 もう遅い。
 何度も婚約破棄したくせに!!



 ――その後、彼の家も国も滅びた。



 聖女をないがしろにした罰でしょう。



 わたしは隣国のハーネスへ到着。
 軍国であるハーネスは、軍隊だらけ。そんな中、銀髪の青年がわたしの元へ寄ってきた。


「おぉ、美しい。その修道服……珍しいな」
「あ、あのぅ」
「おっと、私はこの国の将軍でね。名を『マクシミリアン』という」
「しょ、将軍様……」

「ああ。ところでは君は?」

「この前滅んだアズールという国の出身です」

「……あの滅びかけていた国か。それでは仕方ない。君は家を失ってここへ?」

「そうです。もう辛くて……」
「なら歓迎しよう。我が屋敷に来るといい」
「本当ですか……」
「もちろんだとも。こんなキレイな女性を野宿させるわけにはいかないだろう」


 彼から話を聞いた。
 アズール国は、膨大な借金があったという。そのせいで民に不満は爆発。革命が起き、王族は処刑台へ。その後、代理でレイン公爵が国を動かしていたようだけれど、彼は聖女を失った罪で処刑された。

 元から公爵は、民から搾取さくしゅしていたようで、恨みを買っていたようね。


「そうだったのですね」
「ああ、今やアズール国は滅亡寸前。大量の難民を出しているが……仕方あるまい。こちらのハーネスで受け入れよう」

「あ、ありがとうございます」

「なぁに、君のような辛い思いをしている人々を救うのが私の使命だ。さあ、これからこの屋敷に住むといい」


 目の前には大きなお屋敷。
 のびのびとした庭があって、平和そのもの。こんな素敵な家に住めるだなんて……夢のよう。わたしは、マクシミリアン将軍の事が気になりはじめていた。


 彼は優しい。
 民の事さえも思ってくれて、彼ならきっと……。


 ◆


 その後、ループはしなくなったけど、わたしはマクシミリアン将軍と婚約。真の幸せを手に入れた。
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