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第20話 教会裁判所から召喚令状

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 川の対策は直ぐに進めて貰えた。
 侵入されそうな通路にバリケードを設置。簡単には乗り越えられないし、乗り越えたとしてもトラップがいくつも張り巡らされていた。

 これで万が一にも『守護』を抜けたとしても、お屋敷には辿り着けないはず。

「……ふぅ。アドニスの方も終わったようだ」
「お疲れ様です、エドワード様、アドニスくん」

 大体、魔法で処理を終えてしまった。
 これでもう安心。


 一仕事を終え、お屋敷に戻るとアルラが『手紙』を持っていた。また……手紙。でも、今度はちゃんと差出人が分かった。


「エドワード様にお手紙です」
「僕にかい?」


 手紙を受け取るエドワード様は、それを開封。中身に目を通された。


「帝国からですか?」
「そうだね、フィセル。これは『教会裁判所』からの召喚令状だ」
「それって、どういう事ですか」

「イーグル伯爵が、この僕をアンリエッタの殺人で告訴したようだ」

「そ、そんな……彼女は将軍をかばって……それで……」


 だから自殺のようなもの。
 わたくしを殺したかったが故の自己犠牲。でも、それは失敗に終わった。その死を知った父であるイーグル伯爵は、今や行方不明らしい。

 なのに……どうして。

 やっぱり、エドワード様を恨んでいるの。だとすれば……この辺境伯領が危ない。……そっか、この胸騒ぎもきっと。


「出頭を命じられてしまった以上、コーンフォース帝国へ参らねばならない。フィセル、アドニス……悪いが、僕は行かねばならない。この辺境伯領を守ってくれるかい」

「わ、わたくしも一緒に……」

「……フィセル。でも、そうなると辺境伯領の守りが手薄になってしまう」
「大丈夫です。守護は、わたくしが離れても維持されるんです」


 離れた場合の効力は短くなるけど、それでも一週間は持つ。それだけあれば十分でしょう。ここから帝国までは一日も掛からないし。

 だから、わたくしは強く願った。


「分かった。フィセル、君を信じよう」
「エドワード様、本当ですか」
「一度、置いていってしまっているし、今度は一緒に行こう」
「はいっ、嬉しいです」

 喜んでいると、アドニスくんも「やったー、久しぶりに帝国へ行ける!」とはしゃいでいた。わたくしも帝国は初めてだから……少し楽しみ。


 けれど、教会裁判所から呼ばれた以上は……何かあるはず。上手く切り抜けられるといいのだけど、心配は尽きない。


 ◆


 ――次の日、予定通りにお屋敷を出た。玄関前に集まり、わたくしとアドニスくんは、エドワード様を待った。

 その間は、わたくしは辺境伯領の全体を見通す。……うん、守護は完璧。鮮度も落ちていないし、邪悪なモンスターや邪心を持つ人間は決して侵入できない。川はバリケードと罠がある。出来る対策はしたつもり……問題はないはず。

「アドニスくん、帝国までは馬車ですよね」
「もちろんですよ。半日もあれば到着します」

「ちなみに聞いてもいいですか?」

「なんですか、フィセル様」
「その……アドニスくんの魔法でテレポートとか出来ないんでしょうか」

「あー…残念ながら、コーンフォース帝国は『テレポート禁止エリア』に指定されているんですよ。これは数百年前から変わりなく、何故か出来ないんです」


 ……数百年前から、それは驚き。わたくしの守護でさえ、そこまでは持たない。……と、なると大魔法の類かもしれない。

 不思議がっていると、エドワード様が現れた。


「二人とも、待たせてすまない。屋敷は、今日帰ってきた執事のフォードとメイドのアルラに任せた。さっそく出掛けよう」


 アドニスくんは、馭者ぎょしゃへ。
 わたくしとエドワード様は、馬車に乗り込み対面する。爽やかな笑顔を向けられ、わたしも笑顔で返す。


「……こうして出掛けるのは初めてですね」
「ずっと同じ場所に留まるのも息苦しいだろうからね、たまには遠征も良いと思う。……ただ、今回は教会裁判所を相手にしなければならない。面倒だけど、なんとか誤解を解かないとな」

「はい、わたくしに出来る事がありましたら、なんでもお申し付けください」
「ああ、僕には君が必要だ」

 そんな風に思ってくれるだけで、わたしは幸せ。拾ってくれた恩人であるエドワード様の為にも頑張らなければ――。
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