21 / 24
第20話 教会裁判所から召喚令状
しおりを挟む
川の対策は直ぐに進めて貰えた。
侵入されそうな通路にバリケードを設置。簡単には乗り越えられないし、乗り越えたとしてもトラップがいくつも張り巡らされていた。
これで万が一にも『守護』を抜けたとしても、お屋敷には辿り着けないはず。
「……ふぅ。アドニスの方も終わったようだ」
「お疲れ様です、エドワード様、アドニスくん」
大体、魔法で処理を終えてしまった。
これでもう安心。
一仕事を終え、お屋敷に戻るとアルラが『手紙』を持っていた。また……手紙。でも、今度はちゃんと差出人が分かった。
「エドワード様にお手紙です」
「僕にかい?」
手紙を受け取るエドワード様は、それを開封。中身に目を通された。
「帝国からですか?」
「そうだね、フィセル。これは『教会裁判所』からの召喚令状だ」
「それって、どういう事ですか」
「イーグル伯爵が、この僕をアンリエッタの殺人で告訴したようだ」
「そ、そんな……彼女は将軍を庇って……それで……」
だから自殺のようなもの。
わたくしを殺したかったが故の自己犠牲。でも、それは失敗に終わった。その死を知った父であるイーグル伯爵は、今や行方不明らしい。
なのに……どうして。
やっぱり、エドワード様を恨んでいるの。だとすれば……この辺境伯領が危ない。……そっか、この胸騒ぎもきっと。
「出頭を命じられてしまった以上、コーンフォース帝国へ参らねばならない。フィセル、アドニス……悪いが、僕は行かねばならない。この辺境伯領を守ってくれるかい」
「わ、わたくしも一緒に……」
「……フィセル。でも、そうなると辺境伯領の守りが手薄になってしまう」
「大丈夫です。守護は、わたくしが離れても維持されるんです」
離れた場合の効力は短くなるけど、それでも一週間は持つ。それだけあれば十分でしょう。ここから帝国までは一日も掛からないし。
だから、わたくしは強く願った。
「分かった。フィセル、君を信じよう」
「エドワード様、本当ですか」
「一度、置いていってしまっているし、今度は一緒に行こう」
「はいっ、嬉しいです」
喜んでいると、アドニスくんも「やったー、久しぶりに帝国へ行ける!」と燥いでいた。わたくしも帝国は初めてだから……少し楽しみ。
けれど、教会裁判所から呼ばれた以上は……何かあるはず。上手く切り抜けられるといいのだけど、心配は尽きない。
◆
――次の日、予定通りにお屋敷を出た。玄関前に集まり、わたくしとアドニスくんは、エドワード様を待った。
その間は、わたくしは辺境伯領の全体を見通す。……うん、守護は完璧。鮮度も落ちていないし、邪悪なモンスターや邪心を持つ人間は決して侵入できない。川はバリケードと罠がある。出来る対策はしたつもり……問題はないはず。
「アドニスくん、帝国までは馬車ですよね」
「もちろんですよ。半日もあれば到着します」
「ちなみに聞いてもいいですか?」
「なんですか、フィセル様」
「その……アドニスくんの魔法でテレポートとか出来ないんでしょうか」
「あー…残念ながら、コーンフォース帝国は『テレポート禁止エリア』に指定されているんですよ。これは数百年前から変わりなく、何故か出来ないんです」
……数百年前から、それは驚き。わたくしの守護でさえ、そこまでは持たない。……と、なると大魔法の類かもしれない。
不思議がっていると、エドワード様が現れた。
「二人とも、待たせてすまない。屋敷は、今日帰ってきた執事のフォードとメイドのアルラに任せた。さっそく出掛けよう」
アドニスくんは、馭者へ。
わたくしとエドワード様は、馬車に乗り込み対面する。爽やかな笑顔を向けられ、わたしも笑顔で返す。
「……こうして出掛けるのは初めてですね」
「ずっと同じ場所に留まるのも息苦しいだろうからね、たまには遠征も良いと思う。……ただ、今回は教会裁判所を相手にしなければならない。面倒だけど、なんとか誤解を解かないとな」
「はい、わたくしに出来る事がありましたら、なんでもお申し付けください」
「ああ、僕には君が必要だ」
そんな風に思ってくれるだけで、わたしは幸せ。拾ってくれた恩人であるエドワード様の為にも頑張らなければ――。
侵入されそうな通路にバリケードを設置。簡単には乗り越えられないし、乗り越えたとしてもトラップがいくつも張り巡らされていた。
これで万が一にも『守護』を抜けたとしても、お屋敷には辿り着けないはず。
「……ふぅ。アドニスの方も終わったようだ」
「お疲れ様です、エドワード様、アドニスくん」
大体、魔法で処理を終えてしまった。
これでもう安心。
一仕事を終え、お屋敷に戻るとアルラが『手紙』を持っていた。また……手紙。でも、今度はちゃんと差出人が分かった。
「エドワード様にお手紙です」
「僕にかい?」
手紙を受け取るエドワード様は、それを開封。中身に目を通された。
「帝国からですか?」
「そうだね、フィセル。これは『教会裁判所』からの召喚令状だ」
「それって、どういう事ですか」
「イーグル伯爵が、この僕をアンリエッタの殺人で告訴したようだ」
「そ、そんな……彼女は将軍を庇って……それで……」
だから自殺のようなもの。
わたくしを殺したかったが故の自己犠牲。でも、それは失敗に終わった。その死を知った父であるイーグル伯爵は、今や行方不明らしい。
なのに……どうして。
やっぱり、エドワード様を恨んでいるの。だとすれば……この辺境伯領が危ない。……そっか、この胸騒ぎもきっと。
「出頭を命じられてしまった以上、コーンフォース帝国へ参らねばならない。フィセル、アドニス……悪いが、僕は行かねばならない。この辺境伯領を守ってくれるかい」
「わ、わたくしも一緒に……」
「……フィセル。でも、そうなると辺境伯領の守りが手薄になってしまう」
「大丈夫です。守護は、わたくしが離れても維持されるんです」
離れた場合の効力は短くなるけど、それでも一週間は持つ。それだけあれば十分でしょう。ここから帝国までは一日も掛からないし。
だから、わたくしは強く願った。
「分かった。フィセル、君を信じよう」
「エドワード様、本当ですか」
「一度、置いていってしまっているし、今度は一緒に行こう」
「はいっ、嬉しいです」
喜んでいると、アドニスくんも「やったー、久しぶりに帝国へ行ける!」と燥いでいた。わたくしも帝国は初めてだから……少し楽しみ。
けれど、教会裁判所から呼ばれた以上は……何かあるはず。上手く切り抜けられるといいのだけど、心配は尽きない。
◆
――次の日、予定通りにお屋敷を出た。玄関前に集まり、わたくしとアドニスくんは、エドワード様を待った。
その間は、わたくしは辺境伯領の全体を見通す。……うん、守護は完璧。鮮度も落ちていないし、邪悪なモンスターや邪心を持つ人間は決して侵入できない。川はバリケードと罠がある。出来る対策はしたつもり……問題はないはず。
「アドニスくん、帝国までは馬車ですよね」
「もちろんですよ。半日もあれば到着します」
「ちなみに聞いてもいいですか?」
「なんですか、フィセル様」
「その……アドニスくんの魔法でテレポートとか出来ないんでしょうか」
「あー…残念ながら、コーンフォース帝国は『テレポート禁止エリア』に指定されているんですよ。これは数百年前から変わりなく、何故か出来ないんです」
……数百年前から、それは驚き。わたくしの守護でさえ、そこまでは持たない。……と、なると大魔法の類かもしれない。
不思議がっていると、エドワード様が現れた。
「二人とも、待たせてすまない。屋敷は、今日帰ってきた執事のフォードとメイドのアルラに任せた。さっそく出掛けよう」
アドニスくんは、馭者へ。
わたくしとエドワード様は、馬車に乗り込み対面する。爽やかな笑顔を向けられ、わたしも笑顔で返す。
「……こうして出掛けるのは初めてですね」
「ずっと同じ場所に留まるのも息苦しいだろうからね、たまには遠征も良いと思う。……ただ、今回は教会裁判所を相手にしなければならない。面倒だけど、なんとか誤解を解かないとな」
「はい、わたくしに出来る事がありましたら、なんでもお申し付けください」
「ああ、僕には君が必要だ」
そんな風に思ってくれるだけで、わたしは幸せ。拾ってくれた恩人であるエドワード様の為にも頑張らなければ――。
0
お気に入りに追加
650
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか?~有能なので王子に求婚されちゃうかも!?~
榎夜
恋愛
「貧乏令嬢となんて誰が結婚するんだよ!」
そう言っていましたが、隣に他の令嬢を連れている時点でおかしいですわよね?
まぁ、私は貴方が居なくなったところで困りませんが.......貴方はどうなんでしょうね?
私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ
榎夜
恋愛
私の婚約も勉強も、常に邪魔をしてくるおバカさんたちにはもうウンザリですの!
私は私で好き勝手やらせてもらうので、そちらもどうぞ自滅してくださいませ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放されましたのでちょっと仕返しします
あおい
恋愛
婚約破棄からの爵位剥奪に国外追放!
初代当主は本物の天使!
天使の加護を受けてる私のおかげでこの国は安泰だったのに、その私と一族を追い出すとは何事ですか!?
身に覚えのない理由で婚約破棄に爵位剥奪に国外追放してきた第2王子に天使の加護でちょっと仕返しをしましょう!
どうやら我が家は国に必要ないということで、勝手に独立させてもらいますわ~婚約破棄から始める国づくり~
榎夜
恋愛
急に婚約者の王太子様から婚約破棄されましたが、つまり我が家は必要ない、ということでいいんですのよね?
無惨に殺されて逆行した大聖女の復讐劇〜前世の記憶もついでに取り戻したので国造って貴国を滅ぼさせていただきます
ニコ
恋愛
体に宿る魔石が目当てで育てられたユリア。婚約者に裏切られて殺された彼女は封印された大聖女だった。
逆行した彼女は封印が解け、地球で暮らした前世の記憶も取り戻しておりーー
好き勝手する父親や婚約者、国王にキレた彼女は国を創って宣戦布告するようです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不定期更新で行こうと思います。
ポチッとお気に入り登録していただけると嬉しいです\(^o^)/
虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる
珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて……
ゆっくり更新になるかと思います。
ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m
身勝手な婚約破棄をされたのですが、第一王子殿下がキレて下さいました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢であるエリーゼは、第ニ王子殿下であるジスタードに婚約破棄を言い渡された。
理由はジスタードが所帯をを持ちたくなく、まだまだ遊んでいたいからというものだ。
あまりに身勝手な婚約破棄だったが、エリーゼは身分の差から逆らうことは出来なかった。
逆らえないのはエリーゼの家系である、ラクドアリン伯爵家も同じであった。
しかし、エリーゼの交友関係の中で唯一の頼れる存在が居た。
それは兄のように慕っていた第一王子のアリューゼだ。
アリューゼの逆鱗に触れたジスタードは、それはもう大変な目に遭うのだった……。
学院内でいきなり婚約破棄されました
マルローネ
恋愛
王立貴族学院に通っていた伯爵令嬢のメアリは婚約者であり侯爵令息、さらに生徒会長のオルスタに婚約破棄を言い渡されてしまう。しかも学院内のクラスの中で……。
慰謝料も支払わず、さらに共同で事業を行っていたのだがその利益も不当に奪われる結果に。
メアリは婚約破棄はともかく、それ以外のことには納得行かず幼馴染の伯爵令息レヴィンと共に反論することに。
急速に二人の仲も進展していくが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる