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第19話 手紙と予感
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あれから半日が過ぎ去り、部屋にメイドのアルラがやって来た。少し困った表情でそれを差し出す。
「あの、フィセル様にお手紙です」
「わたくしに?」
手紙は複数あった。
なんだろうと受け取り、差出人を見ても不明だった。……誰からなの?
気になって封を開けると、そこには『エドワード様は聖女のものではない』や『この大魔女』とか『辺境伯領から出て行け』とか書かれていた。
ひ、ひどい……。
「これは恐らく、コーンフォース帝国におられる、エドワード様を想う貴族令嬢からでしょう」
……そういえば、わたくしの存在はコーンフォース帝国に知れ渡ったと聞く。つまり、名が広まったいせいで妬み嫉みの眼差しで見られている――と。
でも、これは仕方ない。
プロセルピナ共和国で将軍と婚約を結んだ時にもあったし、今更なんとも思わない。わたくしは、大聖女としての責務を全うし、エドワード様を全力で支えるだけ。それに、アーサー皇帝陛下が認めて下さった。
それだけで十分すぎる。
なんと思われようと、この辺境伯領を守りぬく。そして、必要とあらばコーンフォース帝国だって聖女の力で守護する。
だから、わたしは手紙を全て破り捨てた。
「雑音は切り捨てるに限ります。気にしても心を病むだけ。わたくしにとってプラスはないし、時間の無駄。時間の浪費は建設的ではないし、もっと有効に使うべきでしょう、アルラ」
「――はい。おっしゃる通りです。今後、差出人不明の手紙は全て焼却処分いたします。……それと先ほどの非礼、お詫びします」
「気にする必要はありません。それより、嫌な予感がするのです。アルラ、この辺境伯領は現在、わたくしの『守護』によって守られています。ですが、裏口などがあったら、そこまでは守れません。
心当たりがあればいいのです、そのような侵入方法があるのですか?」
聞くと、アルラは考え込んだ。
彼女はこの辺境伯領に長く滞在しているようで、メイドとしての従事も長いという。なら、土地勘は確かなはず。
「そうですね……川とかでしょうか」
「川……。なるほど、侵入があるとしたら川へ潜り、泳いでくると……考えましたね、アルラ」
この辺境伯領は『農地』でもある。
川なんていくつもあるし、ルートが多すぎる。でも、わたくしの『守護』なら川の底だって守り切るはず。でも、そこまでは考えたことがなかった。
万が一にも潜って来られたら……守り切れないかも。これは早急にエドワード様にお伝えする必要がありそうね。
「お力になれたでしょうか」
「ええ、十分ですよ。では、わたくしはエドワード様にご報告してきます」
「分かりました。必要とあらばいつでもお申し付け下さい」
アルラは丁寧にお辞儀し、わたくしの部屋から去っていく。……従順で良い子ね。
◆
書斎にいるエドワード様と合流。
手紙と川の侵入経路を話すと、彼はうんうんと深く頷く。
「そうか、すまなかったね。手紙については僕からもアルラに言っておく」
「ありがとうございます」
「それと侵入経路か……それは重大だね。まだ将軍との戦いからそれほど経っていないし、ウォレスの存在も気になる。大魔女だっていつ牙を剥くか……」
「ええ。なので、川については念のためも考え、罠やバリケードなどの設置をお願いしたいのです」
「それは名案だね、フィセル。うん、君の辺境伯領を守りたいと思うその考え、気に入ったよ。ありがとう」
良かった、分かって貰えて。
でも……『予感』はずっと警鐘を鳴らしていた。……近い内に何か起こるの……?
「あの、フィセル様にお手紙です」
「わたくしに?」
手紙は複数あった。
なんだろうと受け取り、差出人を見ても不明だった。……誰からなの?
気になって封を開けると、そこには『エドワード様は聖女のものではない』や『この大魔女』とか『辺境伯領から出て行け』とか書かれていた。
ひ、ひどい……。
「これは恐らく、コーンフォース帝国におられる、エドワード様を想う貴族令嬢からでしょう」
……そういえば、わたくしの存在はコーンフォース帝国に知れ渡ったと聞く。つまり、名が広まったいせいで妬み嫉みの眼差しで見られている――と。
でも、これは仕方ない。
プロセルピナ共和国で将軍と婚約を結んだ時にもあったし、今更なんとも思わない。わたくしは、大聖女としての責務を全うし、エドワード様を全力で支えるだけ。それに、アーサー皇帝陛下が認めて下さった。
それだけで十分すぎる。
なんと思われようと、この辺境伯領を守りぬく。そして、必要とあらばコーンフォース帝国だって聖女の力で守護する。
だから、わたしは手紙を全て破り捨てた。
「雑音は切り捨てるに限ります。気にしても心を病むだけ。わたくしにとってプラスはないし、時間の無駄。時間の浪費は建設的ではないし、もっと有効に使うべきでしょう、アルラ」
「――はい。おっしゃる通りです。今後、差出人不明の手紙は全て焼却処分いたします。……それと先ほどの非礼、お詫びします」
「気にする必要はありません。それより、嫌な予感がするのです。アルラ、この辺境伯領は現在、わたくしの『守護』によって守られています。ですが、裏口などがあったら、そこまでは守れません。
心当たりがあればいいのです、そのような侵入方法があるのですか?」
聞くと、アルラは考え込んだ。
彼女はこの辺境伯領に長く滞在しているようで、メイドとしての従事も長いという。なら、土地勘は確かなはず。
「そうですね……川とかでしょうか」
「川……。なるほど、侵入があるとしたら川へ潜り、泳いでくると……考えましたね、アルラ」
この辺境伯領は『農地』でもある。
川なんていくつもあるし、ルートが多すぎる。でも、わたくしの『守護』なら川の底だって守り切るはず。でも、そこまでは考えたことがなかった。
万が一にも潜って来られたら……守り切れないかも。これは早急にエドワード様にお伝えする必要がありそうね。
「お力になれたでしょうか」
「ええ、十分ですよ。では、わたくしはエドワード様にご報告してきます」
「分かりました。必要とあらばいつでもお申し付け下さい」
アルラは丁寧にお辞儀し、わたくしの部屋から去っていく。……従順で良い子ね。
◆
書斎にいるエドワード様と合流。
手紙と川の侵入経路を話すと、彼はうんうんと深く頷く。
「そうか、すまなかったね。手紙については僕からもアルラに言っておく」
「ありがとうございます」
「それと侵入経路か……それは重大だね。まだ将軍との戦いからそれほど経っていないし、ウォレスの存在も気になる。大魔女だっていつ牙を剥くか……」
「ええ。なので、川については念のためも考え、罠やバリケードなどの設置をお願いしたいのです」
「それは名案だね、フィセル。うん、君の辺境伯領を守りたいと思うその考え、気に入ったよ。ありがとう」
良かった、分かって貰えて。
でも……『予感』はずっと警鐘を鳴らしていた。……近い内に何か起こるの……?
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