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第19話 妹が毒殺された
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三年前。
ローターモント王国は戦に負け、崩壊した。
その後、ヴァイスヴァルト帝国が領土を拡大。父であるレオンハルト伯とアレクの曾祖父であるフリードリッヒ・ノイベルンが手を組み、街を住みやすくした。
もうすぐで正式に帝国の領地となる予定だ。
けれど、当然ながら王国時代の名残が随所に存在している。
そのひとつが『暗黒街』だ。
今、お父様はブラックマーケットを壊滅できないかと躍起になっている。
なぜなら、ダモクレスノイドルが厄介な存在となっているからだ。彼は、王国時代の生き残りではないかと囁かれている。
貴族を襲うのも、帝国を恨んでいるからかもしれない。
でも、彼をなんとかしないと平和はない。
新しい馬車の中で、わたしはそう考えていた。
「どうしたんだい、イリス。なんだか浮かない顔をしているね」
「ごめんなさい。まだ事件が解決したとは思えなくて」
「そうだね。ルーナが見つからない以上は、まだ安心できない」
アレクの言う通り。
まだルーナが生きているとすれば、きっと復讐しに来る。昔から諦めだけは悪かった。だから、きっとまた目の前に現れるはず。
そう思っていたけれど。
街の方がなんだか騒がしかった。
なんだろう……凄い人だかり。
「アレク様、あの辺り人が多いです」
「ふむ。様子がおかしいね。馬車を降りてみよう」
「はい……」
馬車を降りて向かうと、掲示板の前に数百人は人が集っていた。なぜ、こんなに。
耳を澄ませていると意外な情報が入ってきた。
「おい、聞いたか! ルーナ様が毒殺されたってよ!」「大量のカブトギクを口の中に突っ込まれて死んでいたって」「うわぁ……悲惨」「いったい、誰が」「静かな森で遺体が発見されたようだ」「マジかよ。あんなところに近づくなよ」「あ~、まずいな。レオンハルト伯が激怒すっぞ」「いや、だが……最近、ルーナ様といろいろトラブルがあったそうだ」「あ、それ聞いた。イリス様と騒動があったとか」「イリス様って亡くなったんじゃねえの?」「生きていたらしい」
ルーナが毒殺……?
「……どうやら、ルーナは事件に巻き込まれたようだね」
「ビックリしました。でも、同情はできません」
「ああ。冷たい言い方にはなってしまうけど自業自得。だが、せめて遺体を確認したい」
「埋めてあげるくらいは……はい」
複雑だけど、せめてもの慈悲で埋葬はしてあげよう。
そう思ってアレクに確認を任せた。
彼は担当者に訊ね、ルーナの遺体が保管されていないか確認した。けれど。
「申し訳ございません、アレク様。ルーナ様のご遺体は見つかっていないです!」
「まて。掲示板には毒殺されたとあった。遺体もないのにどうやって確認した?」
「そ、それは……有力な情報がございまして」
「情報だと? それだけで信じろと?」
「……わ、分かりました。アレク様だけにお伝えします」
担当者は、アレクに耳打ちしていた。
そんなに聞かれたくない情報なの……?
待っていると、アレクは顔色を変えていた。同時に、わたしの目の前に老人が現れ、立ち尽くした。……この人は?
「これはこれは大変お美しい。アレクの話し通りの煌びやかな女性のようだ」
「え……」
「おっと、名乗り遅れましたな。私の名はフリードリッヒ・ノイベルン。こう言えば分かるかな」
「ほ、本物……」
驚いた。
アレクの曾祖父フリードリッヒ・ノイベルンが目の前にいた。
どうしてここに……?
ローターモント王国は戦に負け、崩壊した。
その後、ヴァイスヴァルト帝国が領土を拡大。父であるレオンハルト伯とアレクの曾祖父であるフリードリッヒ・ノイベルンが手を組み、街を住みやすくした。
もうすぐで正式に帝国の領地となる予定だ。
けれど、当然ながら王国時代の名残が随所に存在している。
そのひとつが『暗黒街』だ。
今、お父様はブラックマーケットを壊滅できないかと躍起になっている。
なぜなら、ダモクレスノイドルが厄介な存在となっているからだ。彼は、王国時代の生き残りではないかと囁かれている。
貴族を襲うのも、帝国を恨んでいるからかもしれない。
でも、彼をなんとかしないと平和はない。
新しい馬車の中で、わたしはそう考えていた。
「どうしたんだい、イリス。なんだか浮かない顔をしているね」
「ごめんなさい。まだ事件が解決したとは思えなくて」
「そうだね。ルーナが見つからない以上は、まだ安心できない」
アレクの言う通り。
まだルーナが生きているとすれば、きっと復讐しに来る。昔から諦めだけは悪かった。だから、きっとまた目の前に現れるはず。
そう思っていたけれど。
街の方がなんだか騒がしかった。
なんだろう……凄い人だかり。
「アレク様、あの辺り人が多いです」
「ふむ。様子がおかしいね。馬車を降りてみよう」
「はい……」
馬車を降りて向かうと、掲示板の前に数百人は人が集っていた。なぜ、こんなに。
耳を澄ませていると意外な情報が入ってきた。
「おい、聞いたか! ルーナ様が毒殺されたってよ!」「大量のカブトギクを口の中に突っ込まれて死んでいたって」「うわぁ……悲惨」「いったい、誰が」「静かな森で遺体が発見されたようだ」「マジかよ。あんなところに近づくなよ」「あ~、まずいな。レオンハルト伯が激怒すっぞ」「いや、だが……最近、ルーナ様といろいろトラブルがあったそうだ」「あ、それ聞いた。イリス様と騒動があったとか」「イリス様って亡くなったんじゃねえの?」「生きていたらしい」
ルーナが毒殺……?
「……どうやら、ルーナは事件に巻き込まれたようだね」
「ビックリしました。でも、同情はできません」
「ああ。冷たい言い方にはなってしまうけど自業自得。だが、せめて遺体を確認したい」
「埋めてあげるくらいは……はい」
複雑だけど、せめてもの慈悲で埋葬はしてあげよう。
そう思ってアレクに確認を任せた。
彼は担当者に訊ね、ルーナの遺体が保管されていないか確認した。けれど。
「申し訳ございません、アレク様。ルーナ様のご遺体は見つかっていないです!」
「まて。掲示板には毒殺されたとあった。遺体もないのにどうやって確認した?」
「そ、それは……有力な情報がございまして」
「情報だと? それだけで信じろと?」
「……わ、分かりました。アレク様だけにお伝えします」
担当者は、アレクに耳打ちしていた。
そんなに聞かれたくない情報なの……?
待っていると、アレクは顔色を変えていた。同時に、わたしの目の前に老人が現れ、立ち尽くした。……この人は?
「これはこれは大変お美しい。アレクの話し通りの煌びやかな女性のようだ」
「え……」
「おっと、名乗り遅れましたな。私の名はフリードリッヒ・ノイベルン。こう言えば分かるかな」
「ほ、本物……」
驚いた。
アレクの曾祖父フリードリッヒ・ノイベルンが目の前にいた。
どうしてここに……?
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