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第15話 断罪
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「お、お姉様…………なの」
幽霊でも見たかのような表情でルーナは顔を青くし、声を震わせていた。
わたしは一歩、また一歩とルーナの方へ歩み寄り、毅然とした態度で言い放った。
「ルーナ、あなたは酷い妹ね」
「……そ、それは……」
言葉に詰まるルーナ。
間に入るようにしてお父様が叫んだ。
「イリス! お前……イリスなんだな!? 無事だったんだな!」
「はい。お父様。わたしはアレクに助けれました」
「アレクに……?」
「そうです。彼こそ命の恩人。そして、ルーナはわたしを毒殺しようとしたのです」
「…………イ、イリス、なにを言っている。ルーナがお前を殺すだなんて……馬鹿な。二人とも仲の良い姉妹ではないか」
今まではね。
けれど、ルーナはアレクを奪うために毒を盛った。
それが全て。
それが真実。
「お父様。わたしは確かに毒殺されそうになりました。そうでしょう、アレク」
「イリスは静かな森の奥に埋められていた。俺は見たんだ、ルーナが焦って引き返すところをね」
そう証言してくれるアレク。
お父様は言葉を失い、立ち尽くす。
「ルーナ、あなたはお菓子に猛毒のカブトギクを仕込んだ」
「そ、そんなわけ……!」
「あるでしょう。死の商人イングリッド・バーンシュタインから買い取っていたのだから」
「……うぐっ。で、でも……証拠なんてないでしょ!!」
そう言うと思った。
想定していたアレクは、懐から裏帳簿を取り出してルーナに見せた。
「これはイングリッド・バーンシュタインの取引記録。本物だ。なんなら、本人が我が城に滞在中。連れてきてもいいぞ」
「……ば、ばかな。あの商人……大金を積んでやったのに……裏切ったな!」
ルーナは歯をギリギリさせ、怖い顔をしてイングリッドの悪口をぶつぶつとつぶやいていた。……なんて顔をしているの。これがルーナ……?
違う。
もう彼女はルーナではない。悪魔だ。
「罪を認めて、ルーナ」
「お、お姉様……それで勝ったつもり!? あんたが生きていたのは意外だったわ。よくもまぁ、あの猛毒で死ななかったものね! 悔しい、とても悔しいわ……」
「やっと認めたわね」
「はぁ!? そんな証拠で認めるわけないでしょ! お父様、イリスが全部悪いんです! お姉様が死んでしまえば……アレクは私のものだった!!」
もはや、錯乱するルーナ。もう正常ではなかった。
言っていることが支離滅裂すぎる。
さすがのお父様もルーナの発言に我慢がならなかったようだ。
「ルーナ!!」
怒りに満ちた平手打ちがルーナの頬に命中した。
物凄い音がして、同時にルーナは地面に転げ回っていった。
「きゃっ!?!?」
「この馬鹿娘が!!」
「な…………。お、お父様……うそでしょう。暴力だなんて……今まで一度も振るったことなかったのに」
頬を押さえ、涙目になるルーナは混乱していた。
もう今しかない。
お父様を完全に味方につけるには“真実”を打ち明ける。
「あの、お父様。ルーナは……お母様を毒殺しています」
「――!? な、なにを言っている。イリス……。いくらなんでも、ルーナが母さんを殺すはずが……」
「事実です。真意は本人から聞いてください」
頭を抱えるお父様は、ルーナの両肩を掴み激しく揺らす。
「……ッッ! ルーナお前というヤツは!! イリスの言っていることが本当なら、お前は……お前は!!」
「……い、痛い。お父様……やめて……私は無実よ。全部、お姉様が仕組んだ罠よ。騙されてはダメ……!」
「まだそんなことを申すか!! この我が家の恥さらしがッ!!」
バチンとまた頬を叩く音が響く。
「きゃあああッ!!」
またも吹き飛ぶルーナ。もうこれで言い逃れはできない。
幽霊でも見たかのような表情でルーナは顔を青くし、声を震わせていた。
わたしは一歩、また一歩とルーナの方へ歩み寄り、毅然とした態度で言い放った。
「ルーナ、あなたは酷い妹ね」
「……そ、それは……」
言葉に詰まるルーナ。
間に入るようにしてお父様が叫んだ。
「イリス! お前……イリスなんだな!? 無事だったんだな!」
「はい。お父様。わたしはアレクに助けれました」
「アレクに……?」
「そうです。彼こそ命の恩人。そして、ルーナはわたしを毒殺しようとしたのです」
「…………イ、イリス、なにを言っている。ルーナがお前を殺すだなんて……馬鹿な。二人とも仲の良い姉妹ではないか」
今まではね。
けれど、ルーナはアレクを奪うために毒を盛った。
それが全て。
それが真実。
「お父様。わたしは確かに毒殺されそうになりました。そうでしょう、アレク」
「イリスは静かな森の奥に埋められていた。俺は見たんだ、ルーナが焦って引き返すところをね」
そう証言してくれるアレク。
お父様は言葉を失い、立ち尽くす。
「ルーナ、あなたはお菓子に猛毒のカブトギクを仕込んだ」
「そ、そんなわけ……!」
「あるでしょう。死の商人イングリッド・バーンシュタインから買い取っていたのだから」
「……うぐっ。で、でも……証拠なんてないでしょ!!」
そう言うと思った。
想定していたアレクは、懐から裏帳簿を取り出してルーナに見せた。
「これはイングリッド・バーンシュタインの取引記録。本物だ。なんなら、本人が我が城に滞在中。連れてきてもいいぞ」
「……ば、ばかな。あの商人……大金を積んでやったのに……裏切ったな!」
ルーナは歯をギリギリさせ、怖い顔をしてイングリッドの悪口をぶつぶつとつぶやいていた。……なんて顔をしているの。これがルーナ……?
違う。
もう彼女はルーナではない。悪魔だ。
「罪を認めて、ルーナ」
「お、お姉様……それで勝ったつもり!? あんたが生きていたのは意外だったわ。よくもまぁ、あの猛毒で死ななかったものね! 悔しい、とても悔しいわ……」
「やっと認めたわね」
「はぁ!? そんな証拠で認めるわけないでしょ! お父様、イリスが全部悪いんです! お姉様が死んでしまえば……アレクは私のものだった!!」
もはや、錯乱するルーナ。もう正常ではなかった。
言っていることが支離滅裂すぎる。
さすがのお父様もルーナの発言に我慢がならなかったようだ。
「ルーナ!!」
怒りに満ちた平手打ちがルーナの頬に命中した。
物凄い音がして、同時にルーナは地面に転げ回っていった。
「きゃっ!?!?」
「この馬鹿娘が!!」
「な…………。お、お父様……うそでしょう。暴力だなんて……今まで一度も振るったことなかったのに」
頬を押さえ、涙目になるルーナは混乱していた。
もう今しかない。
お父様を完全に味方につけるには“真実”を打ち明ける。
「あの、お父様。ルーナは……お母様を毒殺しています」
「――!? な、なにを言っている。イリス……。いくらなんでも、ルーナが母さんを殺すはずが……」
「事実です。真意は本人から聞いてください」
頭を抱えるお父様は、ルーナの両肩を掴み激しく揺らす。
「……ッッ! ルーナお前というヤツは!! イリスの言っていることが本当なら、お前は……お前は!!」
「……い、痛い。お父様……やめて……私は無実よ。全部、お姉様が仕組んだ罠よ。騙されてはダメ……!」
「まだそんなことを申すか!! この我が家の恥さらしがッ!!」
バチンとまた頬を叩く音が響く。
「きゃあああッ!!」
またも吹き飛ぶルーナ。もうこれで言い逃れはできない。
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