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第12話 死の商人イングリッド・バーンシュタイン
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更に捜査は進み、三日後。
アレクはついに決定的な証拠を発見した。
猛毒草の取引相手である死の商人イングリッド・バーンシュタインを確保したのだ。
彼はこの城に連行され、連れて来られた。
行商の豪華な身なりに、この世のものとは思えない青紫の髪。鷹のように鋭くも、賢そうな目をしていた。
あの人がイングリッド。
ルーナにカブトギクを売った張本人。
とても若い青年で、アレクに匹敵する容姿だった。これは驚いた。
「あなたがイングリッド・バーンシュタイン……」
「おぉ、これは大変お美しい。お初にお目にかかります、お嬢さん」
わたしに近づこうとするものの、アレクが鎖で拘束している。
「動くな、イングリッド」
「やれやれ。この私が何をしたというのですか。このまま死刑ですか?」
「お前はルーナにカブトギクを売った。そうだろう」
「……なんのことやら。身に覚えがありませんな」
「正直に言え。それにお前ほどの豪商だ。裏帳簿くらいあるだろう」
「さすが名医。お詳しいですね」
「イングリッド、お前の巨額の脱税……これが帝国に知れたら、どうなるかな」
「…………くっ。痛いところを突いてくる。さすがに調べていましたか」
背後でサムズアップするマックスウェル。そっか、調べてくれたんだ。
「お前の元弟子が告発したのだよ」
「ヤツめ……」
「脱税は死刑もありえる重罪だ。イングリッド、ルーナとの取引記録を渡せ」
「司法取引を要求します……」
「いいだろう。お前の脱税は見逃してやる」
「た、助かりました。それでいいです……」
アレクは、イングリッドの鎖を外した。
自由の身となった彼は、左腕を外した。
「義手だったんだ」
「そうですよ、お嬢さん。私はね、その昔……大悪党ダモクレスノイドルにこの左腕を切り落とされたのです」
聞いたことがある。
伝説の大悪党ダモクレスノイドル。
彼は泥棒で、貴族から金品を奪う。けれど、実は貧しい民の為に使われていたという、そんな義賊的な逸話がある。
意外な一面がありながらも、貴族には容赦なく……一部では悪魔や大悪党と言われた。
伝説の人物かと思っていたけど、実在したんだ。
そして、驚いたことにイングリッドの義手の中に折り畳まれた紙があった。
それこそが裏帳簿だった。
「そ、そんなところに……」
「ああ、イリス。俺も驚いたよ」
わたしもアレクも唖然とした。まさか義手の中に隠していたとか。見つからないよう、細工していたのね。
「これが裏帳簿です。ここにルーナ様の名前も記載されていますよ」
そこには間違いなくルーナとカブトギクの取引履歴があった。
しかも、過去を辿ると毒だけではなく、危険な薬の取引も多かった。
イングリッド……この人は牢に入れておいた方がいい人物なのかもしれない。
けれど今はいい。
ルーナが捕まえられるのなら。
アレクはついに決定的な証拠を発見した。
猛毒草の取引相手である死の商人イングリッド・バーンシュタインを確保したのだ。
彼はこの城に連行され、連れて来られた。
行商の豪華な身なりに、この世のものとは思えない青紫の髪。鷹のように鋭くも、賢そうな目をしていた。
あの人がイングリッド。
ルーナにカブトギクを売った張本人。
とても若い青年で、アレクに匹敵する容姿だった。これは驚いた。
「あなたがイングリッド・バーンシュタイン……」
「おぉ、これは大変お美しい。お初にお目にかかります、お嬢さん」
わたしに近づこうとするものの、アレクが鎖で拘束している。
「動くな、イングリッド」
「やれやれ。この私が何をしたというのですか。このまま死刑ですか?」
「お前はルーナにカブトギクを売った。そうだろう」
「……なんのことやら。身に覚えがありませんな」
「正直に言え。それにお前ほどの豪商だ。裏帳簿くらいあるだろう」
「さすが名医。お詳しいですね」
「イングリッド、お前の巨額の脱税……これが帝国に知れたら、どうなるかな」
「…………くっ。痛いところを突いてくる。さすがに調べていましたか」
背後でサムズアップするマックスウェル。そっか、調べてくれたんだ。
「お前の元弟子が告発したのだよ」
「ヤツめ……」
「脱税は死刑もありえる重罪だ。イングリッド、ルーナとの取引記録を渡せ」
「司法取引を要求します……」
「いいだろう。お前の脱税は見逃してやる」
「た、助かりました。それでいいです……」
アレクは、イングリッドの鎖を外した。
自由の身となった彼は、左腕を外した。
「義手だったんだ」
「そうですよ、お嬢さん。私はね、その昔……大悪党ダモクレスノイドルにこの左腕を切り落とされたのです」
聞いたことがある。
伝説の大悪党ダモクレスノイドル。
彼は泥棒で、貴族から金品を奪う。けれど、実は貧しい民の為に使われていたという、そんな義賊的な逸話がある。
意外な一面がありながらも、貴族には容赦なく……一部では悪魔や大悪党と言われた。
伝説の人物かと思っていたけど、実在したんだ。
そして、驚いたことにイングリッドの義手の中に折り畳まれた紙があった。
それこそが裏帳簿だった。
「そ、そんなところに……」
「ああ、イリス。俺も驚いたよ」
わたしもアレクも唖然とした。まさか義手の中に隠していたとか。見つからないよう、細工していたのね。
「これが裏帳簿です。ここにルーナ様の名前も記載されていますよ」
そこには間違いなくルーナとカブトギクの取引履歴があった。
しかも、過去を辿ると毒だけではなく、危険な薬の取引も多かった。
イングリッド……この人は牢に入れておいた方がいい人物なのかもしれない。
けれど今はいい。
ルーナが捕まえられるのなら。
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