毒殺されそうになりました

夜桜

文字の大きさ
上 下
9 / 24

第9話 毒殺事件② Side:アレク

しおりを挟む
◆Side:アレク

 静かに時間が流れていく。
 あれから何日経ったのか分からない。

 次は失敗しないよう、俺は新型の“解毒剤”の開発に情熱を注いでいった。

 誰にも邪魔されず、ただひとり研究を進めた。

 ある日、エレイナ様の残した研究ノートが送られてきた。
 代理人によれば、エレイナ様の身に万が一があった場合、俺に送られてくるということだった。

 納得し、受け取った。

 ノートには、たくさんの新薬に関する研究が書かれていた。

 だが、まだ足りていない部分も多かった。

 俺がその不足している何かを探し出す。
 そうすればきっと、次は誰かを救えるはずだ――。


 そうして俺は時間を忘れて研究に没頭し続けた。


 ある日、ある猛毒草が出回っていると耳にした。
 それはカブトギクという恐ろしい毒だ。

 お菓子の成分を調べたが、同じ毒が使われていた。……そこで不審に思った。誰かがカブトギクを使ったのだと。

 また誰かが不幸になるかもしれないと危惧し、俺は解毒剤を作ることに。

 三日後。

 ついに解毒剤は完成した。

 これで誰かに万が一があっても、すぐに治せる。
 しかもこの解毒剤は、カブトギクだけでなく、他の毒にも有効であり簡単に治癒する。

「……ありがとう、エレイナ様。これで誰かを救える」


 喜びに浸っていると、研究室の扉をノックする音がした。


『アレク様、緊急のご用件でございます』
「マックスウェルか。入れ」
『失礼します』


 執事のマックスウェルが研究室に入ってきた。


「何事だ」
「はい。レオンハルト伯のお屋敷を訪ねたのです。すると反応がなく、不穏な空気が漂っていました。あれは毒のニオイだったかもしれません」
「なんだって?」

 マックスウェルは俺の手伝いをしているから、薬だとか毒だとかそういった知識が蓄えられていた。だとすれば、それは……マズいかもしれない。

「ご令嬢イリス様が毒に倒れたのでは……」
「――! イリス……懐かしい名だ。分かった、様子を見に行く」
「では、馬をお使いください」
「ああ」


 俺は大至急で城を飛び出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

冴えない子爵令嬢の私にドレスですか⁉︎〜男爵様がつくってくれるドレスで隠されていた魅力が引きだされる

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のラーナ・プレスコットは地味で冴えない見た目をしているため、華やかな見た目をした 義妹から見下され、両親からも残念な娘だと傷つく言葉を言われる毎日。 そんなある日、義妹にうつけと評判の男爵との見合い話が舞い込む。 奇行も目立つとうわさのうつけ男爵なんかに嫁ぎたくない義妹のとっさの思いつきで押し付けられたラーナはうつけ男爵のイメージに恐怖を抱きながらうつけ男爵のところへ。 そんなうつけ男爵テオル・グランドールはラーナと対面するといきなり彼女のボディサイズを調べはじめて服まで脱がそうとする。 うわさに違わぬうつけぷりにラーナは赤面する。 しかしテオルはラーナのために得意の服飾づくりでドレスをつくろうとしていただけだった。 テオルは義妹との格差で卑屈になっているラーナにメイクを施して秘められていた彼女の魅力を引きだす。 ラーナもテオルがつくる服で着飾るうちに周りが目を惹くほどの華やかな女性へと変化してゆく。

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

国護りの力を持っていましたが、王子は私を嫌っているみたいです

四季
恋愛
南から逃げてきたアネイシアは、『国護りの力』と呼ばれている特殊な力が宿っていると告げられ、丁重にもてなされることとなる。そして、国王が決めた相手である王子ザルベーと婚約したのだが、国王が亡くなってしまって……。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

アルマ・チャーチル男爵令嬢はオタクである

有川カナデ
恋愛
アルマ・チャーチル男爵令嬢には推しがいる。ユーフェミア・ハートフィールド公爵令嬢だ。陰ながら推しを見る生活に胸躍らせていたのもつかの間、彼女はユーフェミアの婚約者であるフレドリック王子に迫られて――。 王子との恋愛フラグは絶対立てません、私は推しちゃんを遠くから眺めていたいのです! 恋愛要素はいつもの作品に比べて薄めです。婚約破棄要素は主人公以外の部分で発生してます。

婚姻破棄された私は第一王子にめとられる。

さくしゃ
恋愛
「エルナ・シュバイツ! 貴様との婚姻を破棄する!」  突然言い渡された夫ーーヴァス・シュバイツ侯爵からの離縁要求。    彼との間にもうけた息子ーーウィリアムは2歳を迎えたばかり。  そんな私とウィリアムを嘲笑うヴァスと彼の側室であるヒメル。  しかし、いつかこんな日が来るであろう事を予感していたエルナはウィリアムに別れを告げて屋敷を出て行こうとするが、そんなエルナに向かって「行かないで」と泣き叫ぶウィリアム。 (私と一緒に連れて行ったら絶対にしなくて良い苦労をさせてしまう)  ドレスの裾を握りしめ、歩みを進めるエルナだったが…… 「その耳障りな物も一緒に摘み出せ。耳障りで仕方ない」  我が子に対しても容赦のないヴァス。  その後もウィリアムについて罵詈雑言を浴びせ続ける。  悔しい……言い返そうとするが、言葉が喉で詰まりうまく発せられず涙を流すエルナ。そんな彼女を心配してなくウィリアム。  ヴァスに長年付き従う家老も見ていられず顔を逸らす。  誰も止めるものはおらず、ただただ罵詈雑言に耐えるエルナ達のもとに救いの手が差し伸べられる。 「もう大丈夫」  その人物は幼馴染で6年ぶりの再会となるオーフェン王国第一王子ーーゼルリス・オーフェンその人だった。  婚姻破棄をきっかけに始まるエルナとゼルリスによるラブストーリー。

処理中です...