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#01 婚約破棄
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「ローザ、お前のせいでゾンビが殺到している!! お前が聖女だから呼び寄せてしまっているんだ! もう安全な城には置いておけない……婚約破棄する。出て行ってくれ」
アンデッドモンスターのゾンビが現れて一か月。白の聖女であるわたしは、共和国を守る為にこれまで浄化の力を使って守ってきた。
なのに……共和国の王子であるテオバルドはそう言った。
「わ、わたしのせいなんですか!? そうではないでしょう。テオバルド、貴方の持つ『不死王の髑髏』のせいですよ。何度も言っているでしょう。あの不気味な物を早く廃棄してください」
「この私に責任を擦り付けるのか、ローザ! あの髑髏は関係ない。悪いが国からも出て行ってくれ」
髑髏は、遥か遠方にある『呪われた遺跡』の奥に祀られていたものらしく、不法侵入した盗賊から流れてきた代物だという。それを王子は闇のマーケットを利用して入手したようだけれど……。
わたしには、あの髑髏が明らかに呪われているものだと分かっていた。だから、何度も破棄するように勧めたけど、今回と同じように拒絶された。
……もうダメだ。
何度言っても聞いてくれないし、婚約も破棄された。これ以上、お城に留まる意味なくなった。わたしは彼の言葉に従い、お城を出た。
外は闇に包まれている。
あちらこちらで火災が発生して、黒い煙が立ち込めていた。人々はゾンビから必死に逃げまどい、アテもなく何処か安全な場所を探し求めていた。
「大変! ゾンビで溢れかえっているじゃない……」
しかも、この周辺に現れるゾンビは走る。だから、余計に厄介だった。物凄いスピードで走って人間を容赦なく食べる。そして、仲間を増やしていく恐ろしい怪物だ。
けれど、わたしは聖女という属性故かゾンビから狙われなかった。世界で唯一、わたしだけはゾンビの対象にならなかったのだ。この特性を生かして、わたしはゾンビ達を聖なる力『マグナエクソシズム』で浄化していく。
広範囲に広がる白い光。
ゾンビ達がどんどん塵となり、浄化されていく。
もちろん、わたしに敵意を向けられる事はなく、襲われる心配もない。生き残っている人々を救っていく。それが、わたしの聖女としての使命。
現在地のゾンビを粗方消滅させ、わたしは次の現場へ向かった。お城からかなり離れた商店街。そこはもうボロボロでゾンビになってしまった人で溢れかえっていた。
「そんな……」
わたしは段々と王子が許せなくなった。
彼はなんの罪もない人達を巻き込んで、国さえも滅ぼしかけている。そして、一番安全なお城に閉じ籠り、何もしないで傍観している。
神の代行者として……彼には必ず報いを受けて貰わなければ……。そうゾンビ達の群れの中を歩いていくと――
「ちょっと、キミ!! 危ないじゃないか!」
「えッ!?」
地面の穴から急に引っ張られ、わたしは落とし穴に落ちた。ぴゅーんと落ちて、ドスっと誰かの上に落ちた。
「うわぁッ!!」
「いったぁあ……」
誰よ、落とし穴なんて……?
いや、違う。
ここは地下水道だ。
この共和国は、地下水道が整備されていると聞いたことがあったけど、初めて入った。道の真ん中には水が大量に流れていた。こんなものを誰が造ったのだろうと不思議がっていると、お尻に違和感を感じた。
「あの……すまないけど、下りてくれないかな。重……」
「失礼ですね、わたしは重くなんてないです! ていうか、いきなり人の事を引っ張っておいて……貴方、何ですか」
「いや、だから……どいてくれないかな」
わたしのお尻の下には明らかに男がいた。どうやら、背中に乗る形で落ちたらしい。地上へ戻るのは無理そうね。
「わたしはローザ。貴方は?」
「いやだから……分かった。僕はディルク。この共和国の天文学者で、スターゲイザー辺境伯の爵位を持つただの男さ……って、ローザ? あの白の聖女・ローザ様かい? そうか、あの王子の婚約者の」
「そう、そのローザです。わたしはですね、人々の為にゾンビを浄化していたのです。それを貴方は邪魔したのですよ。まだ地上には生存者がたくさんいるはずだから、わたしは戻らなきゃ」
うつ伏せになっているディルクは、腕立てするような格好でわたしを押し上げようとしていた。へえ、力はあるようね。
「そうか。けど、外は危険だ。君だって、いくら聖女だからって食べられてしまっては感染してしまうぞ。ヤツ等の仲間になってしまう」
「わたしは平気ですよ、ゾンビから狙われないのですから。だからディルク、どいてあげるから手を貸してくれませんか」
「分かった、努力しよう」
わたしは起き上がって彼を――
……ウソ。
彼の顔を見て、わたしは心底驚いた。
そこには美男子がいたからだ。
輝く金の髪、エメラルドグリーンの瞳。背が高くてカッコ良かった。その爽やかな風貌に、わたしは見惚れてしまう。
……や、やだ、わたしったら彼をお尻で……。
アンデッドモンスターのゾンビが現れて一か月。白の聖女であるわたしは、共和国を守る為にこれまで浄化の力を使って守ってきた。
なのに……共和国の王子であるテオバルドはそう言った。
「わ、わたしのせいなんですか!? そうではないでしょう。テオバルド、貴方の持つ『不死王の髑髏』のせいですよ。何度も言っているでしょう。あの不気味な物を早く廃棄してください」
「この私に責任を擦り付けるのか、ローザ! あの髑髏は関係ない。悪いが国からも出て行ってくれ」
髑髏は、遥か遠方にある『呪われた遺跡』の奥に祀られていたものらしく、不法侵入した盗賊から流れてきた代物だという。それを王子は闇のマーケットを利用して入手したようだけれど……。
わたしには、あの髑髏が明らかに呪われているものだと分かっていた。だから、何度も破棄するように勧めたけど、今回と同じように拒絶された。
……もうダメだ。
何度言っても聞いてくれないし、婚約も破棄された。これ以上、お城に留まる意味なくなった。わたしは彼の言葉に従い、お城を出た。
外は闇に包まれている。
あちらこちらで火災が発生して、黒い煙が立ち込めていた。人々はゾンビから必死に逃げまどい、アテもなく何処か安全な場所を探し求めていた。
「大変! ゾンビで溢れかえっているじゃない……」
しかも、この周辺に現れるゾンビは走る。だから、余計に厄介だった。物凄いスピードで走って人間を容赦なく食べる。そして、仲間を増やしていく恐ろしい怪物だ。
けれど、わたしは聖女という属性故かゾンビから狙われなかった。世界で唯一、わたしだけはゾンビの対象にならなかったのだ。この特性を生かして、わたしはゾンビ達を聖なる力『マグナエクソシズム』で浄化していく。
広範囲に広がる白い光。
ゾンビ達がどんどん塵となり、浄化されていく。
もちろん、わたしに敵意を向けられる事はなく、襲われる心配もない。生き残っている人々を救っていく。それが、わたしの聖女としての使命。
現在地のゾンビを粗方消滅させ、わたしは次の現場へ向かった。お城からかなり離れた商店街。そこはもうボロボロでゾンビになってしまった人で溢れかえっていた。
「そんな……」
わたしは段々と王子が許せなくなった。
彼はなんの罪もない人達を巻き込んで、国さえも滅ぼしかけている。そして、一番安全なお城に閉じ籠り、何もしないで傍観している。
神の代行者として……彼には必ず報いを受けて貰わなければ……。そうゾンビ達の群れの中を歩いていくと――
「ちょっと、キミ!! 危ないじゃないか!」
「えッ!?」
地面の穴から急に引っ張られ、わたしは落とし穴に落ちた。ぴゅーんと落ちて、ドスっと誰かの上に落ちた。
「うわぁッ!!」
「いったぁあ……」
誰よ、落とし穴なんて……?
いや、違う。
ここは地下水道だ。
この共和国は、地下水道が整備されていると聞いたことがあったけど、初めて入った。道の真ん中には水が大量に流れていた。こんなものを誰が造ったのだろうと不思議がっていると、お尻に違和感を感じた。
「あの……すまないけど、下りてくれないかな。重……」
「失礼ですね、わたしは重くなんてないです! ていうか、いきなり人の事を引っ張っておいて……貴方、何ですか」
「いや、だから……どいてくれないかな」
わたしのお尻の下には明らかに男がいた。どうやら、背中に乗る形で落ちたらしい。地上へ戻るのは無理そうね。
「わたしはローザ。貴方は?」
「いやだから……分かった。僕はディルク。この共和国の天文学者で、スターゲイザー辺境伯の爵位を持つただの男さ……って、ローザ? あの白の聖女・ローザ様かい? そうか、あの王子の婚約者の」
「そう、そのローザです。わたしはですね、人々の為にゾンビを浄化していたのです。それを貴方は邪魔したのですよ。まだ地上には生存者がたくさんいるはずだから、わたしは戻らなきゃ」
うつ伏せになっているディルクは、腕立てするような格好でわたしを押し上げようとしていた。へえ、力はあるようね。
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「わたしは平気ですよ、ゾンビから狙われないのですから。だからディルク、どいてあげるから手を貸してくれませんか」
「分かった、努力しよう」
わたしは起き上がって彼を――
……ウソ。
彼の顔を見て、わたしは心底驚いた。
そこには美男子がいたからだ。
輝く金の髪、エメラルドグリーンの瞳。背が高くてカッコ良かった。その爽やかな風貌に、わたしは見惚れてしまう。
……や、やだ、わたしったら彼をお尻で……。
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