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婚約破棄
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彼を愛していた。
幼馴染だった彼を。けれども、婚約破棄されてしまった。
もう人生に希望はない。
悲しみに暮れ、ひとり寂しい日々を送る……。
なぜ、こんなことに。
後になってお父様が教えてくれた。
幼馴染のアイザックには、密かに交際していた女性がいたのだと。
それを知ってさらに絶望した。
辛い辛い毎日が続く。
もう何もしたくない。
そう思っていると、お父様が“くじ引き”で結婚を決めると言った。
「リリィ。嫌かもしれないが、これはお前の為だ。なぁに、大丈夫。相手はちゃんと家柄のしっかりしている貴族たちばかりだ」
「…………はい」
気力のないまま返事を返した。
もうこの際、誰でもいい。
自暴自棄になっていたと思う。
くじ引きで決まる結婚とか……正直最低だと感じたけれど、今は運命に委ねるのもアリかなって思った。
しばらくして、くじ引きの結果が決まった。
当たりをを引いたのは伯爵の若い男性だった。
二十台前半の優しい顔をした人。
片眼鏡が特徴的で、赤い瞳が宝石のように美しい。
「はじめまして、リリィ。僕はアッシュ。くじ引きで決まったので、君に会うことにした。もしよければ話からどうかな」
「分かりました。お願いします」
「……良かった。じゃあ、馬車へ乗って」
「え……」
「気分転換をするんだ。ほら、君の表情が暗いからさ」
そっか、顔に出ていたんだ。
……そうね、他にやることもないし、この人についていこう。
馬車に乗って外を走っていく。
流れる景色をぼうっと見つめる。
「……」
「リリィ、君の事は詳しく聞いている。アイザックに騙されたんだろ」
「知っているんですか?」
「ああ、アイザックは女たらしで有名だよ」
「そうなんですか?」
「残念ながら女遊びが酷くてね」
そうだったんだ。私も遊ばれていたんだ。
「……っ」
「安心して。ヤツには間もなく天罰が下るだろう」
「どういうことですか?」
「アイザックは、僕の妹に手を出してね。父が激怒したんだ」
「まぁ……そんなことが」
「となると彼は国を追放されるだろうね」
それを聞いて少し安心した。
そっか、アイザックはそんな最低な人だったんだ。
「良かった……」
「もう安心して、リリィ」
ホッとした。
これでもうアイザックのことは忘れられる。
「その……アッシュ様。このくじ引きで選ばれた結婚、お受けします」
「いいのかい? 僕なんかで」
「はい。私はもう過去を振り返りません。お優しいアッシュ様ならきっと、私を幸せにしてくれると感じました」
「後悔はさせないよ」
懐から指輪を取り出すアッシュ。
わたしは結婚を了承した。
くじ引きなんかで決まる結婚なんて、どうかと思った。
でも、これが私の運命だったんだ。
幼馴染だった彼を。けれども、婚約破棄されてしまった。
もう人生に希望はない。
悲しみに暮れ、ひとり寂しい日々を送る……。
なぜ、こんなことに。
後になってお父様が教えてくれた。
幼馴染のアイザックには、密かに交際していた女性がいたのだと。
それを知ってさらに絶望した。
辛い辛い毎日が続く。
もう何もしたくない。
そう思っていると、お父様が“くじ引き”で結婚を決めると言った。
「リリィ。嫌かもしれないが、これはお前の為だ。なぁに、大丈夫。相手はちゃんと家柄のしっかりしている貴族たちばかりだ」
「…………はい」
気力のないまま返事を返した。
もうこの際、誰でもいい。
自暴自棄になっていたと思う。
くじ引きで決まる結婚とか……正直最低だと感じたけれど、今は運命に委ねるのもアリかなって思った。
しばらくして、くじ引きの結果が決まった。
当たりをを引いたのは伯爵の若い男性だった。
二十台前半の優しい顔をした人。
片眼鏡が特徴的で、赤い瞳が宝石のように美しい。
「はじめまして、リリィ。僕はアッシュ。くじ引きで決まったので、君に会うことにした。もしよければ話からどうかな」
「分かりました。お願いします」
「……良かった。じゃあ、馬車へ乗って」
「え……」
「気分転換をするんだ。ほら、君の表情が暗いからさ」
そっか、顔に出ていたんだ。
……そうね、他にやることもないし、この人についていこう。
馬車に乗って外を走っていく。
流れる景色をぼうっと見つめる。
「……」
「リリィ、君の事は詳しく聞いている。アイザックに騙されたんだろ」
「知っているんですか?」
「ああ、アイザックは女たらしで有名だよ」
「そうなんですか?」
「残念ながら女遊びが酷くてね」
そうだったんだ。私も遊ばれていたんだ。
「……っ」
「安心して。ヤツには間もなく天罰が下るだろう」
「どういうことですか?」
「アイザックは、僕の妹に手を出してね。父が激怒したんだ」
「まぁ……そんなことが」
「となると彼は国を追放されるだろうね」
それを聞いて少し安心した。
そっか、アイザックはそんな最低な人だったんだ。
「良かった……」
「もう安心して、リリィ」
ホッとした。
これでもうアイザックのことは忘れられる。
「その……アッシュ様。このくじ引きで選ばれた結婚、お受けします」
「いいのかい? 僕なんかで」
「はい。私はもう過去を振り返りません。お優しいアッシュ様ならきっと、私を幸せにしてくれると感じました」
「後悔はさせないよ」
懐から指輪を取り出すアッシュ。
わたしは結婚を了承した。
くじ引きなんかで決まる結婚なんて、どうかと思った。
でも、これが私の運命だったんだ。
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