おかしな公爵令嬢と変態皇子

夜桜

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皇子はエイダを幸せにしたい

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 部屋が吹き飛ばされると思った。
 でも、エンパイア様は砲弾をにらむだけで跳ね返し、満足気に笑った。


「大丈夫だったかい、エイダ。まあ、楽勝だったけどね! ワハハハ!」
「えぇ~…。今の能力なんですか?」

「なんだい、エイダ。まだ記憶が混乱しているのか。まあいい、今のは特殊スキル『サンクチュアリ Lv.10』で聖域スキルさ。
 敵国の『スペクター』という国の攻撃を弾いた。今、帝国とスペクターは戦争状態。ほら、さっき言ったろ、食糧問題って。そのせいさ」


「まさか、相手の食糧を奪うために?」

「そう。侵略して強奪する為さ。でもね、インシグニア帝国は僕が任されていてね。父に全部任せるって言われているのさ。だから、全部守っている」

「ぜ、全部?」


 ああ、そうだと皇子は頷く。
 なにこの人……変態かしら。

 料理といい、国の防衛といい……いろいろこなすタイプなのね。それはそれで器用でカッコいいとは思うけど、皇子がね……?

 そういうものなのかな。


「僕は全部守りたいし、でも何よりもエイダを幸せにしたいのさ」

「へ、へぇ~…」


 なにそのヒーローみたいな考え!


「おぉといけない。僕は掃除に洗濯、猫の世話もしなければならないんだ! エイダ、すまないがゆっくりしていてくれ!」


 ぴゅ~んと風のように嵐のように走り去ってしまうエンパイア様。え~…わたくし、ひとりぼっち!? いいけど!


 ◆


 多分、わたしの持ち物だろう。
 ネイルがあったので、暇つぶしに爪を綺麗にした。うんうん、薄ピンクで可愛い。


「ただいま、戻ったよ、エイダ!」
「ええッ、もうですか!」


 エンパイア様、帰還。
 多分、十分も掛かっていなかったと思う。どんなスピード感よ。

「待たせたね、さっそくゴロゴロしようか」
「あ、あの……そんな直ぐに終わるものなのですか」
「僕は物事には常に全力で取り組むんだ。だから、料理スキル、掃除スキル、洗濯スキル、猫の世話スキルは全部レベルマックスなのさ。一瞬で終えられる」


 なにこの変態皇子。

 いえ、でも逆に考えれば万能皇子。

 よくよく考えたら最高じゃないの!


「エンパイア様は家庭的ですのね」
「それは違う」
「へ」

「僕はエイダを幸せにしたいだけなのさ! 全てはエイダの為。君の為なら国さえもよくする。今はこんな世知辛い世の中だけど、でも……!」


「でも?」


魔力切れだ・・・・・……エイダ、すまない」


 直立不動でぶっ倒られるエンパイア様。

 ごぉぉおんと後頭部を打ちつけられ、気絶した。


「あああああああああああ、エンパイア様ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
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