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騎士の妹
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長い槍のような武器。
穂先は確かに槍。けれど『斧』も付いていた。これはいったい……なんの武器?
「これは『ハルバード』さ。槍にもなるし、斧にもなる。まあ、相手の鎧や兜を破壊する為なんだけどね。他にもいろんな使い方があるけど、その人次第さ」
「へぇ」
感心していると、庭の奥から軽装なアーマーに身を包んだ金髪の少女が現れた。わたしと同い年くらいかな。その子は、わたしを睨みながら笑う。
「あら、この方が噂の……大勢の家族を亡くしたんですって? それはお気の毒に……でもね、直ぐに出て行って貰いますよ。兄さんは多忙なのです。あなたのような騎士でもない女にいられては兄さんの腕が落ちてしまいます」
……い、いきなり怖い。
こんな初対面で敵意を向けられるだなんて……初めてではないけれど、さすがに病み上がりにはキツイ。
「こらこら、リリー。この方は『スターグローリー家』の公爵令嬢・ローズだ。失礼のないように」
「……うっ、けれど兄さんの方が『パラディン』だもの、上よ」
「僕はね。リリーは違うだろ」
「……うぅ。分かりました。じゃあ、ローズ様。わたくしと剣で勝負して下さい!」
突然勝負を仕掛けられ、わたしは戸惑う。まって……まだ剣なんて握った事もないのに、いきなり勝負とか無理よ。……ていうか、この子……わたしを追い出したいの?
「ダメだ。ローズにはこれから剣を教えるんだよ」
「兄さんは黙って。これは、わたくしとローズ様の問題よ。さあ、するの? しないの? ここで逃げたら一生笑ってやるわ」
挑発に乗る必要はないし、そんな気もない。正直、素人のわたしに勝てる見込みなんてないと思った。でもなんだろう、不思議と挑戦してみようと思えた。
わたしは『ハルバート』に触れ、手にした。すると驚くほどしっくりきて、驚くほど簡単に操れた。
……この感触、どこかで……。
「ローズ、君。手慣れているな」
「で、でも、わたし初めてですよ?」
「もしかしたらリリーに勝てるかもな」
なんてイクス様がおっしゃると――
「ちょっと兄さん! それは言い過ぎよ。このわたくしは上級騎士ですよ。そこら辺に転がっている騎士よりも上。段違いの力量を持つんです。こんなひよっこ、楽勝ですよ」
にやっと笑うリリーは余裕顔。それはそうよね、でも……そうね、なんだか面白そうだなって思えた。今までの鬱憤、この剣――いえ、ハルバードで晴らしてみるのもいいかもね。
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「これは『ハルバード』さ。槍にもなるし、斧にもなる。まあ、相手の鎧や兜を破壊する為なんだけどね。他にもいろんな使い方があるけど、その人次第さ」
「へぇ」
感心していると、庭の奥から軽装なアーマーに身を包んだ金髪の少女が現れた。わたしと同い年くらいかな。その子は、わたしを睨みながら笑う。
「あら、この方が噂の……大勢の家族を亡くしたんですって? それはお気の毒に……でもね、直ぐに出て行って貰いますよ。兄さんは多忙なのです。あなたのような騎士でもない女にいられては兄さんの腕が落ちてしまいます」
……い、いきなり怖い。
こんな初対面で敵意を向けられるだなんて……初めてではないけれど、さすがに病み上がりにはキツイ。
「こらこら、リリー。この方は『スターグローリー家』の公爵令嬢・ローズだ。失礼のないように」
「……うっ、けれど兄さんの方が『パラディン』だもの、上よ」
「僕はね。リリーは違うだろ」
「……うぅ。分かりました。じゃあ、ローズ様。わたくしと剣で勝負して下さい!」
突然勝負を仕掛けられ、わたしは戸惑う。まって……まだ剣なんて握った事もないのに、いきなり勝負とか無理よ。……ていうか、この子……わたしを追い出したいの?
「ダメだ。ローズにはこれから剣を教えるんだよ」
「兄さんは黙って。これは、わたくしとローズ様の問題よ。さあ、するの? しないの? ここで逃げたら一生笑ってやるわ」
挑発に乗る必要はないし、そんな気もない。正直、素人のわたしに勝てる見込みなんてないと思った。でもなんだろう、不思議と挑戦してみようと思えた。
わたしは『ハルバート』に触れ、手にした。すると驚くほどしっくりきて、驚くほど簡単に操れた。
……この感触、どこかで……。
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「ちょっと兄さん! それは言い過ぎよ。このわたくしは上級騎士ですよ。そこら辺に転がっている騎士よりも上。段違いの力量を持つんです。こんなひよっこ、楽勝ですよ」
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