1 / 1
婚約破棄
しおりを挟む
「…………く、くるしい」
伯爵ケネスから婚約指輪をいただき、指にはめた直後……わたしは息苦しくなって、死にそうになっていた。
ど、どうして……毒?
「だ、大丈夫か! エマ!」
「た、たすけ……て」
「今助ける。ほら、解毒剤だ」
偶然? あった解毒剤を飲み、わたしは何とか死なずに済んだ。でも、どうして……。
「いったい、誰が毒を……ま、まさか伯爵サマが」
「……フ、フハハ……エマ、死ななくて良かったね」
と、伯爵サマはニヤリと笑う。
「……そんな! そんなの嘘よ!! 信じていたのに!」
「悪く思わないでくれ。でも死なれても困るから、その程度の毒で抑えてやったんだ」
「……ひどい。もういいです! 婚約破棄してください!!」
「いいよ。好きにすればいいさ」
わたしは彼と別れた。
なんてひどい人なの。
こんな伯爵サマだとは思わなかった。
愛していたのに。
~翌日~
忘れ物をしたわたしは、伯爵サマのお屋敷へ戻った。二度と戻るつもりはなかったけど、忘れたモノが母の大事な形見だったから、仕方なかった。
ちゃんとノックして入っていく。
たまたま彼の部屋の前に辿り着くと、隙間から会話が聞こえた。
『――エマは、毒殺しなかったよ。殺してしまっては殺人だからね。でも、怒ったエマは婚約破棄してくれたよ』
『まあ、なんてバカな姉様。こんなあっさりしてくれるだなんて』
『ああ、そうさ。ケイト。君と一緒になる為だった』
……うそ。
これが真実だったというの。
殺さない程度の毒を婚約指輪に塗って、わたしを殺そうとして……そして、婚約破棄を言わせて……あの、寄りにもよって妹のケイトと……一緒になる為だったなんて……絶対に許せない!!
~三日後~
伯爵サマと妹のケイトが婚約を交わすと聞いた。その時を待っていた。わたしは、妹に手紙を送った。その中に『婚約指輪』を入れて。
わたしはこっそりと妹の動向を探った。
「……あら、ケネス様から婚約指輪のサプライズかしら。こんなお手紙でくださるなんて……へえ、綺麗な指輪」
妹は指輪をはめた。
その直後、彼女はバタリと倒れた。
その物音を聞きついて来た伯爵サマ。
青ざめて、妹を抱きかかえる。
「ケイト! ケイト! しっかりしろ!! どうして倒れて……あっ! ……婚約指輪……まさか……この指輪が!!」
きっとパニックになっていたのだろう、彼は、妹にはめられている指輪を外そうと触れた。触れたわね……伯爵サマ、あなたも毒で苦しんでもらいます。
「……ぐ!? ま、まさかまだ毒が……」
驚き、絶望する伯爵サマ。
その顔が見たかったの!!
「うあああ……うああああああああぁぁあ……」
ばたりと伯爵サマも沈む。
わたしを殺そうとして、妹なんか選ぶから悪いのよ。さようなら、二人とも。
◆
その後、わたしは二人を忘れて――新しく出会った伯爵サマと幸せに暮らした。彼が本当のわたしの伯爵サマ。かっこよくて毒殺もしない伯爵サマ。
伯爵ケネスから婚約指輪をいただき、指にはめた直後……わたしは息苦しくなって、死にそうになっていた。
ど、どうして……毒?
「だ、大丈夫か! エマ!」
「た、たすけ……て」
「今助ける。ほら、解毒剤だ」
偶然? あった解毒剤を飲み、わたしは何とか死なずに済んだ。でも、どうして……。
「いったい、誰が毒を……ま、まさか伯爵サマが」
「……フ、フハハ……エマ、死ななくて良かったね」
と、伯爵サマはニヤリと笑う。
「……そんな! そんなの嘘よ!! 信じていたのに!」
「悪く思わないでくれ。でも死なれても困るから、その程度の毒で抑えてやったんだ」
「……ひどい。もういいです! 婚約破棄してください!!」
「いいよ。好きにすればいいさ」
わたしは彼と別れた。
なんてひどい人なの。
こんな伯爵サマだとは思わなかった。
愛していたのに。
~翌日~
忘れ物をしたわたしは、伯爵サマのお屋敷へ戻った。二度と戻るつもりはなかったけど、忘れたモノが母の大事な形見だったから、仕方なかった。
ちゃんとノックして入っていく。
たまたま彼の部屋の前に辿り着くと、隙間から会話が聞こえた。
『――エマは、毒殺しなかったよ。殺してしまっては殺人だからね。でも、怒ったエマは婚約破棄してくれたよ』
『まあ、なんてバカな姉様。こんなあっさりしてくれるだなんて』
『ああ、そうさ。ケイト。君と一緒になる為だった』
……うそ。
これが真実だったというの。
殺さない程度の毒を婚約指輪に塗って、わたしを殺そうとして……そして、婚約破棄を言わせて……あの、寄りにもよって妹のケイトと……一緒になる為だったなんて……絶対に許せない!!
~三日後~
伯爵サマと妹のケイトが婚約を交わすと聞いた。その時を待っていた。わたしは、妹に手紙を送った。その中に『婚約指輪』を入れて。
わたしはこっそりと妹の動向を探った。
「……あら、ケネス様から婚約指輪のサプライズかしら。こんなお手紙でくださるなんて……へえ、綺麗な指輪」
妹は指輪をはめた。
その直後、彼女はバタリと倒れた。
その物音を聞きついて来た伯爵サマ。
青ざめて、妹を抱きかかえる。
「ケイト! ケイト! しっかりしろ!! どうして倒れて……あっ! ……婚約指輪……まさか……この指輪が!!」
きっとパニックになっていたのだろう、彼は、妹にはめられている指輪を外そうと触れた。触れたわね……伯爵サマ、あなたも毒で苦しんでもらいます。
「……ぐ!? ま、まさかまだ毒が……」
驚き、絶望する伯爵サマ。
その顔が見たかったの!!
「うあああ……うああああああああぁぁあ……」
ばたりと伯爵サマも沈む。
わたしを殺そうとして、妹なんか選ぶから悪いのよ。さようなら、二人とも。
◆
その後、わたしは二人を忘れて――新しく出会った伯爵サマと幸せに暮らした。彼が本当のわたしの伯爵サマ。かっこよくて毒殺もしない伯爵サマ。
0
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
私は記憶を2度失った?
しゃーりん
恋愛
街で娘と買い物をしていると、知らない男にいきなり頬を叩かれた。
どうやら私の婚約者だったらしいけど、私は2年間記憶を失っているためわからない。
勝手に罵って去って行った男に聞きたかったのに。「私は誰ですか?」って。
少しして、私が誰かを知る人たちが迎えに来た。伯爵令嬢だった。
伯爵家を訪れた直後に妊娠していることが判明した。え?身に覚えはないのに?
失った記憶に何度も悩まされる令嬢のお話です。
【完結】私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます
聖女は寿命を削って王子を救ったのに、もう用なしと追い出されて幸せを掴む!
naturalsoft
恋愛
読者の方からの要望で、こんな小説が読みたいと言われて書きました。
サラッと読める短編小説です。
人々に癒しの奇跡を与える事のできる者を聖女と呼んだ。
しかし、聖女の力は諸刃の剣だった。
それは、自分の寿命を削って他者を癒す力だったのだ。
故に、聖女は力を使うのを拒み続けたが、国の王子が難病に掛かった事によって事態は急変するのだった。
聖女にはなれませんよ? だってその女は性女ですから
真理亜
恋愛
聖女アリアは婚約者である第2王子のラルフから偽聖女と罵倒され、婚約破棄を宣告される。代わりに聖女見習いであるイザベラと婚約し、彼女を聖女にすると宣言するが、イザベラには秘密があった。それは...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる