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一万年愛してる
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愛の復讐は驚くほど簡単だった。
まず、わたしは死なない。
この特性を生かして伯爵令嬢ネモフィラ、男爵令嬢バニラ、公爵令嬢イベリスを抹殺した。とはいえ、物理的ではない。社会的にだ。
相手が殺しに来たとしても、わたしは殺人鬼にはならない。そのつもりで挑んだ。
結果、彼女達三人は、わたしを殺すために作った毒物製造の証拠が見つかり、罪に問われて投獄された。
「いい気味ね。あとは四人」
ひとりだけ名前の分からない人物がいた。でも、聞いた所によれば既にこの戦いから逃げ出したようだ。
なので残りは、侯爵令嬢カルーナ、子爵令嬢シレネ、城伯令嬢ローゼルだけ。
この三人を社会的に抹殺できれば……わたしの勝利。
残る三人にも暗殺者や犯罪者との繋がりを見つけ、それを証拠にしてリンネ様に提出。すると、彼はこれを認めた。
「素晴らしいよ、アルストロメリア。これでもう一気に六人を監獄送りにした。正直、こんな一週間程度で終わるとは思わなかったよ」
「ええ、その間にも三百回以上、殺されましたけど……わたしは死ななかった。諦めずに彼女たちの証拠を探り、ここまで辿り着きました」
もはや、完全勝利。
邪魔な存在は誰一人いなくなった。
「アルストロメリア、約束だ。結婚しよう」
「ありがとうございます、リンネ様」
これで彼とキスして終わり。
そう思っていた。
『ちょっと待ちなさい!!!』
「だ、誰!?」
「わたくしは、七番目の貴族。アルストロメリアです」
「は……はぁ!?」
そこには、わたくしがいた。
どうして!?
同じ姿のわたしが……なんでそこにいるの!?
しかも七番目は逃げ出したって聞いたのに!!
「お間抜けさんね、アルストロメリア」
「そっちこそ、アルストロメリア……?」
「ええ、わたくしは貴女と同じように不死身でした。でも、不死身は辛かった……百年、千年、一万年と生き永らえ、長い孤独を味わってきた」
「なっ……」
「いい、アルストロメリア。わたくしは、決して幸せではなかった。リンネ様が唯一の存在だったの! だからね、過去を変える為にもわたくしは、貴女を殺しに来たの」
い、意味が分からない。
過去を変える為に、わたくしが現れた……?
油断していると、包丁で胸を貫かれていた。
こんなモノで……あれ……。
ぱたっと倒れて、わたくしは久しぶりに恐怖した。
「……ど、どういう事なの!!」
「アルストロメリア、貴女とわたくしでは生きていた年数が違う。こっちはね、貴女を殺すためにずっと研究していた。その包丁は、不死身を解除する魔法が塗布されたもの。これで貴女は……死ぬ」
「そ…………そんな」
――わたくしは、闇に絡めとられていく。
闇が、
闇が、
落ちて行く。
◆
「アルストロメリアは死んだわ。リンネ、わたくしと一緒になって」
「……アルストロメリア、君はいったい」
「今のわたくしは、もう不死身ではない。あなたとは違う時間を過ごしていたアルストロメリアではあるけれど、でもアルストロメリアには違いない」
「そ、そうなのか。でも倒れている彼女は……アルストロメリアだろう!?」
「いえ、あれは後悔の象徴です。彼女は不死身になるべきではなかった……有限であるべきだった。リンネと運命を共にするべきでした」
なのに、わたくしはずっと不死身に縋ってしまっていた。ずっと後悔していた。
「そうか、君は不死身のままずっと生き続けていたんだね」
「はい……でも今はもう普通の女の子です」
「分かった。アルストロメリアはアルストロメリアだ。それでも君を愛そう」
一万年の時を経て、わたくしはようやくリンネと運命を共にできるようになった。
まず、わたしは死なない。
この特性を生かして伯爵令嬢ネモフィラ、男爵令嬢バニラ、公爵令嬢イベリスを抹殺した。とはいえ、物理的ではない。社会的にだ。
相手が殺しに来たとしても、わたしは殺人鬼にはならない。そのつもりで挑んだ。
結果、彼女達三人は、わたしを殺すために作った毒物製造の証拠が見つかり、罪に問われて投獄された。
「いい気味ね。あとは四人」
ひとりだけ名前の分からない人物がいた。でも、聞いた所によれば既にこの戦いから逃げ出したようだ。
なので残りは、侯爵令嬢カルーナ、子爵令嬢シレネ、城伯令嬢ローゼルだけ。
この三人を社会的に抹殺できれば……わたしの勝利。
残る三人にも暗殺者や犯罪者との繋がりを見つけ、それを証拠にしてリンネ様に提出。すると、彼はこれを認めた。
「素晴らしいよ、アルストロメリア。これでもう一気に六人を監獄送りにした。正直、こんな一週間程度で終わるとは思わなかったよ」
「ええ、その間にも三百回以上、殺されましたけど……わたしは死ななかった。諦めずに彼女たちの証拠を探り、ここまで辿り着きました」
もはや、完全勝利。
邪魔な存在は誰一人いなくなった。
「アルストロメリア、約束だ。結婚しよう」
「ありがとうございます、リンネ様」
これで彼とキスして終わり。
そう思っていた。
『ちょっと待ちなさい!!!』
「だ、誰!?」
「わたくしは、七番目の貴族。アルストロメリアです」
「は……はぁ!?」
そこには、わたくしがいた。
どうして!?
同じ姿のわたしが……なんでそこにいるの!?
しかも七番目は逃げ出したって聞いたのに!!
「お間抜けさんね、アルストロメリア」
「そっちこそ、アルストロメリア……?」
「ええ、わたくしは貴女と同じように不死身でした。でも、不死身は辛かった……百年、千年、一万年と生き永らえ、長い孤独を味わってきた」
「なっ……」
「いい、アルストロメリア。わたくしは、決して幸せではなかった。リンネ様が唯一の存在だったの! だからね、過去を変える為にもわたくしは、貴女を殺しに来たの」
い、意味が分からない。
過去を変える為に、わたくしが現れた……?
油断していると、包丁で胸を貫かれていた。
こんなモノで……あれ……。
ぱたっと倒れて、わたくしは久しぶりに恐怖した。
「……ど、どういう事なの!!」
「アルストロメリア、貴女とわたくしでは生きていた年数が違う。こっちはね、貴女を殺すためにずっと研究していた。その包丁は、不死身を解除する魔法が塗布されたもの。これで貴女は……死ぬ」
「そ…………そんな」
――わたくしは、闇に絡めとられていく。
闇が、
闇が、
落ちて行く。
◆
「アルストロメリアは死んだわ。リンネ、わたくしと一緒になって」
「……アルストロメリア、君はいったい」
「今のわたくしは、もう不死身ではない。あなたとは違う時間を過ごしていたアルストロメリアではあるけれど、でもアルストロメリアには違いない」
「そ、そうなのか。でも倒れている彼女は……アルストロメリアだろう!?」
「いえ、あれは後悔の象徴です。彼女は不死身になるべきではなかった……有限であるべきだった。リンネと運命を共にするべきでした」
なのに、わたくしはずっと不死身に縋ってしまっていた。ずっと後悔していた。
「そうか、君は不死身のままずっと生き続けていたんだね」
「はい……でも今はもう普通の女の子です」
「分かった。アルストロメリアはアルストロメリアだ。それでも君を愛そう」
一万年の時を経て、わたくしはようやくリンネと運命を共にできるようになった。
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