氷の公爵令嬢と炎の皇子

夜桜

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カルーナの悪事

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 手紙にはこう書かれていた。


『ヴェルダンディ、君の設計したこの屋敷は完璧だ。だから君の望み通り、この天空の城塞じょうさい『スクルド』に招待した。これで良かったんだろう?
 こうなった以上は、君には大切なお客様ソフィ様のお世話を担当して貰う。彼女のメイドとして働くんだ。
 尚、カルーナはソフィ様の婚約者を奪った挙句、陥れようと計画を企てていた。そのせいでソフィ様は立場が危うくなりかけていた。そもそも、カルーナは民から金品や食料さえしぼり取っていた最低な悪女だった。ソフィ様の幼馴染も騙され、自殺したと信頼できる情報筋から聞いている。だから、カルーナには死をもって償って貰う』


 カルーナが彼を……なんて事を。
 しかもそんな民から搾取さくしゅしていたなんて……だから、あんなアッサリ殺されてしまったのね。


 でもまって。


「ねえ、ヴェルダンディちゃん。あなた、このお屋敷を設計したの?」
「あたしが設計しました。それは間違いないです。……本当に作れるだなんて思わなかったけど」

「それは誰なの?」
「分からないです。その人物は仮面を被っていたから……素顔までは分らなかったのです」


 仮面を?
 そっか。素顔がバレると困るってわけね。でも、いいわ……カルーナの件が分かっただけでも収穫だった。

 あの子は最初からわたくしの全てを奪う気でいたんだ……許せないけど、もう彼女はこの世を去った。あの死刑執行人によって確かに処刑されたんだ。


「……でも、なんでわざわざ?」
「うーん、分かんないです。このお屋敷を設計したけど、目的までは不明。ソフィ様をどうにかしたいって意思は何となく理解できるけど」

「わたくしを?」
「はい。多分、このお屋敷はソフィ様の為の作られたんじゃないかな~と思うんです」

「何の為に?」
「愛の為じゃないですかー」


 と、ヴェルダンディちゃんは茶化すように言う。……あ、愛って。そんな……じゃあ、何、わたくしの愛を確かめる為だって言うの!?

 こんな回りくどいやり方で……?

 うーん……本当かなあ。
 不信感しか募らないけど。


 でも、その仮面の人はわたくしにカルーナの事を伝えたかったのは確かだと思う。この手紙が物語っているし。となれば……これで終わりなのかな。あと三日を過ごせば、それで晴れて自由の身になれるのか、それとも――。
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