氷の公爵令嬢と炎の皇子

夜桜

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東の扉

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 どうして、カルーナは殺されてしまったの?

 恐怖で直ぐに扉を閉めた。
 でも、こちらからはロックできないし……あのカルーナを殺した死刑執行人の男(?)がこっちに来るんじゃ。


「ソフィ様、下がって」
「えっと……はい」


 ジークムントが機転を利かせ、本棚を横へズラし扉を塞いだ。結構な重みがあるはずだけど、彼は力持ちね。


「これで持つか分かりませんけどね」
「いえ、助かりました。それにしても、どうしてカルーナは……」
「ひょっとすると毒殺はブラフかもしれませね」
「ブ、ブラフって……じゃあ、この首輪は偽物?」
「だからと言って不用意に外さない方がいいでしょうね。とにかく、あと三日を過ごすしかないでしょう」


 何がどうなっているのか分からない。
 どうして、本当にどうしてなの……!


 ◆


 ――三時間後。

 あの『北の扉』ではカルーナが死んでいて、あの男もいるのかもしれない。でも、一向に扉を破ってくる気配もない。


「こんな時だけど、入浴できないの?」


 なんとなくジークムントに問いかける。


「考えていたのですが、その入浴担当が『東の扉』の者ではないでしょうか」
「……あ! そういえば、食事と入浴の担当がいるのよね。食事がジークムントで、ということは……」



 ……カチャッと音がした。

 ま、まさか……東の扉が。


 開かれた。


 やっぱり、あの中にも人間がいたのね。つまり、西、北、東に一人ずつ配置されていたんだ。それぞれの担当が――。


 ……え。


 まって。じゃあ、カルーナは何の担当? 担当でないから殺されたの? それとも……何か別の目的があって?


 考えている内に、東の扉からまた人が現れた。今度は……少女。メイド服に身を包むわたくしよりも年下の女の子。


「おはようございます。あたしの事は『ヴェルダンディ』とお呼び下さい」
「ヴェルダンディ……?」

「そうです。ヴェルダンディです」
「か、変わったお名前ですね」

「よく言われます。ところでお姉さんとそちらの執事さんは?」

「わたくしはソフィ。こちらの執事はジークムントよ。……ヴェルダンディちゃんは、ずっと東の部屋にいたの?」

「はい。あたしは寝ていました」


 寝て……そうだったの。だから反応がなかったんだ。でも、ノックしたんだけどなぁ。

「おや、一名足りないようですね?」
「え、ヴェルダンディちゃん……どうして人数が足りないって知ってるの?」

「この手紙に書かれていたんです」


 ヒョイっと手渡され内容を見る。
 どうやら、書かれている事はわたくしのとは違うようね。え……そんな事って!
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