そのうち結婚します

夜桜

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裏切者

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 ゲームを提案したカサノヴァは“裏切者”だった。
 わたしと結婚する気はなかった。
 わざわざゲームだなんて提案して、なんてことしてくれたの……!


 カサノヴァは、わたくしの気持ちをもてあそんだだけだった。


 あれは三日前。


「――エレイナ、僕とキスをするんだ」
「嫌です。あなたはわたくしに嘘をついている」
「……なんだって?」

「あなたは上級騎士でもないし、敵将も討ち取っていない。それどころか浮気もされておらず……お付き合いされている女性と上手くやっているようですね」


 そう指摘するとカサノヴァは驚いていた。


「それを……どこで!」
「教えるわけないでしょう。それより、このゲームは無効です! というか、もう試合終了ですけどね」


 わたくしはエフォード伯爵を選んだ。
 彼がカサノヴァの情報を教えてくれたからだ。

 しかも。

 宝石商のエドワードにも問題があった。彼は嘘をついていた。父親から勘当を言い渡されて宝石商を追い出されていた。彼はただの商人でしかなかった。
 わたくしと結婚すれば地位や名誉を取り戻せるのではないかと考えた末のようだった。そんな相手を好きにはなれなかった。

 結果、わたくしは一番信頼できるエフォード伯爵を選んだ。


「そうか、バレていたか」


 カサノヴァは態度を豹変させ、剣を抜く。わたくしに襲い掛かってきたけれど、エフォード伯爵が華麗に登場し、その剣を剣で受け止めた。


「貴様は終わりだ、カノサヴァ」
「伯爵、貴様ァ!」


 怒り狂うカノサヴァだったが、伯爵の素早い反撃に倒れた。


「遅い」
「……ぐっ。負けだ。降参する」


 観念したのか手を上げた。


「どうしてこんなことを?」
「簡単なことさ。君を騙して金品を奪おうと思っていたんだ」
「え……」

「僕はただの“詐欺師”さ」

「なんてこと!」


 そうだったの。カノサヴァは人々を騙す詐欺師。わたくしのことも騙そうとしていたけれど、伯爵の鋭い嗅覚がそれを阻止してくれた。
 おかげで、わたくしは救われた。


 その後、カノサヴァは衛兵に連れられていった。


「ありがとうございました、伯爵」
「いいんだ。私は最初から君の味方だ」
「嬉しいです」


「もしよければ……」
「はい、もちろんです。エフォード伯爵とそのうち結婚しようと思います」
「そのうちか。君はその口癖が好きだね。だが、それがいい」


 手を取り合い、わたくしと伯爵は見つめ合う。
 短いゲームは終わった。

 幸せを手に入れた。
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