そのうち結婚します

夜桜

文字の大きさ
上 下
3 / 7

上級騎士カサノヴァ『結婚してくれないか』

しおりを挟む
「結婚してくれないか」


 上級騎士カサノヴァの第一声に驚いた。あまりに真剣な眼差しで、どう反応してよいか迷った。
 それにしても彼の青い瞳は吸い込まれそうになるほど美しい。
 その青い髪も魅力的。


「嬉しく思います。わたくしも真剣なお付き合いを考えていますから。でも、その前にカサノヴァ様のご身分などを改めて教えていただきたいのです」


 彼は『上級騎士』という特殊な立場。それは貴族にしかなれないということは知っている。わたくしの知る情報はそれだけ。だからもっと知りたいと思った。


「なるほど、僕のことを知りたいと」
「はい、ぜひとも」

「実は僕には婚約者がいたんだ。だが、三年前の戦争に遠征。敵国の将軍を討ち取ったところまではよかったんだけどね……。残念ながら期間が空きすぎて浮気されてしまった」

 情けない話だとカサノヴァは恥ずかしそうに頬を掻く。当時は無名の騎士だっただけに、彼女にも愛想をつかされたのだとか。
 なんだか不憫ね。
 というか、こんなイケメンを捨てるだなんてその女性は見る目がなさすぎる。

 今や数人しかなれないという上級騎士。
 そんな人から結婚を申し込まれるなんて、そうあることではない。これはまたとないチャンス。


「心中お察しします」
「ありがとう、エレイナ」
「あとひとつ聞きたいのですが、どうしてわたくしを?」

「戦友が教えてくれてね。『氷の令嬢』で有名なエレイナが婚約破棄されたと……そのウワサはあっという間に広がっていたよ」


 そうだったのね。きっとお父様が広めたのでしょう。わたくしのことを憂いてこのようなことを。
 でもおかげでイイ相手が見つかりそうな予感。


 残るは豪商の息子エドワード。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

愛は、これから

豆狸
恋愛
呪いだよ、とクリサフィスは呟くように言った。 「カシア嬢は呪われていたんだ」 「莫迦な。ヴァトラフォス大神官が違うと言っていたんだぞ? わかった。呪いは呪いでもあの女がフィズィを呪って返された呪いなんだろう?」

悪夢に狂う

豆狸
恋愛
幼いころからの愛情が消えたわけではありません。 ですが、この恐怖は永遠に消えない、そんな気がしていました。

どんなに私が愛しても

豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。 これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

この闇に落ちていく

豆狸
恋愛
ああ、嫌! こんな風に心の中でオースティン殿下に噛みつき続ける自分が嫌です。 どんなに考えまいとしてもブリガンテ様のことを思って嫉妬に狂う自分が嫌です。 足元にはいつも地獄へ続く闇があります。いいえ、私はもう闇に落ちているのです。どうしたって這い上がることができないのです。 なろう様でも公開中です。

百度目は相打ちで

豆狸
恋愛
「エスポージト公爵家のアンドレア嬢だな。……なにがあった? あんたの目は死線を潜り抜けたものだけが持つ光を放ってる。王太子殿下の婚約者ってのは、そんなに危険な生活を送ってるのか? 十年前、聖殿で会ったあんたはもっと幸せそうな顔をしていたぞ」 九十九回繰り返して、今が百度目でも今日は今日だ。 私は明日を知らない。

真実の愛(笑)だそうですよ。

豆狸
恋愛
魔導学園の入学式の朝、私の三度目の人生が始まりました。 アルノー王国ギャルニエ公爵令嬢ベアトリーチェの一度目の人生は、婚約者のフリート王太子殿下に婚約を破棄されて不幸のどん底に沈みました。 二度目のときは一度目の経験を活かして婚約破棄を回避し、王妃となって── 今回の人生では殿下に真実の愛を確かめていただくつもりです。 なろう様でも公開中です。

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

処理中です...