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黒い悪魔
寂しいなぁ
しおりを挟むロイ達は3日の間に準備を終わらせた。
エドワードの愛馬であるカルーナを連れていくのかと思っていたロイだが、どうやら2人を乗せて東に向かうにはあまりにカルーナへの負担と時間がかかるとエドワードは述べた。
カルーナはトュルヌソルでお留守番だ。
東の地域は遠いため馬車を乗り継いで村から村へ泊まりながら旅をした。
オーキッドの街は都市よりも遠いため4日の日数を浪費した。
ノアの魔法を使ってパパッと移動できないのかと考えた。
エドワードに聞くと、ノアが瞬間移動できる範囲は南の地域だけだと言う。無理矢理他の管轄で瞬間移動の魔法を使うと魔力に負荷がかかり、魔力を大量に奪われるのだとか。
こんな事になるのには4人の魔法使いによる結界が原因だとされるとエドワードは説明をする。
それぞれ4人の魔法使いが守るべき範囲に結界を張り、地域を守っている。敵の侵入者が入ればすぐにわかるんだとか。
でも自分と対等、もしくは上の魔力がいきなり入ってくると力が反発しあってお互い魔力を消費するか、最悪の場合結界が壊れてしまうこともあるのだという。
だから4人の魔法使いが他の地域に移動すり際には魔法を使わずに移動しなければいけないのだ。
魔法って万能ではないのだなと感じながらロイはエドワードと旅をした。
エドワードとの旅は一言で言えば楽しいものだった。
己のいた世界では見ることのできない生物にあって馬車が襲われそうになったときエドワードが剣と魔法を使って退治した。その時に少年心がくすぐられた事をロイは忘れないだろう。
旅では安易に風呂に入ることはできない。ロイの家にはバスタブがあった。この国ではバスタブはまだそれほど一般的に使用されておらずお値段も高い。お湯を張るにも井戸から水を汲んで来なくてはいけなかったし水を温かくするためには魔法が無ければ出来なかった。ロイはお風呂につかりたくて1週間に1度井戸から水を汲み、ノアにお願いして水をお湯に変える火の魔法で作られたストーンを使ってお湯に変えていた。
旅ではバケツに入った水にタオルを浸し、それを絞って体を拭くしかなかった。
体の汚れを満足に取ることのできないロイを見かけエドワードはオーキッドの街に着いたら高い宿を借りようと提案した。そこなら毎日お風呂に入り放題なのだという。
エドワードの提案は素晴らしいが、ロイは金銭面が心配になり素直に頷けなかった。
君のことを知っているのに過去のことを何も教えられない僕からのお詫びだよ。
エドワードからのお詫びという事でロイは渋々提案に頷いた。
旅をしながらロイは考えていた。
エドワードと一緒に過ごして3週間が経っている。
己とエドワードが何らかの関係であった事はさておき、共に過ごした3週間は嫌悪感が全てなくなったと言えば嘘になるが悪くはなかったと言える。
庭の手入れをしながらエドワードから聞かれた薬草について解説したり、トュルヌソルの広場に行って買い物したり、美味しいものを食べたりと何気ない日常を過ごすことが楽しかった。
あと1週間ぐらいすればエドワードは都市へ帰ってしまう。
森から助けてくれたお礼もできたしもうあまり関わることはないだろう。
これでノアからお叱りを受けることもなくなる。
ロイはそんなことを考えながらもどこか寂しい気持ちが胸の片隅にあったのだった。
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