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黒い悪魔
辛いな
しおりを挟むロイの家は今、ノアから溢れ出る魔力のせいで寒さに包まれていた。
2人は椅子に座りテーブルを挟んで向かい合っている。
「それでぇ?何か言うことがあるんじゃないのか?変な魔力を感じるぞ。」
ノアは怪訝な顔を見せながらロイに説明を求めた。
ノアの言いたい事はよくわかる。
なぜエドワードがロイの家に居るのか。
関わるなと注意をした男となぜ関わっているのか。
ロイは苦笑いをしながら、ぽつりぽつりと説明をした。
「アイツから1ヶ月間家に泊めて欲しいってお願いされてさ。助けてくれたお礼が済んでなかったから物置にしてた部屋を片付けてそこに泊まってもらってんだ‥」
「ほぉう?お礼ねぇー」
「2週間経ったけど普通に生活してる。変なこともされてない。ていうか、仕事の手伝いをしてくれて助かってる。」
「ハァア‥」
ノアはため息をついて考える素振りを見せるとロイに問いかけた。
「何か思い出したか?お前の過去について。」
ノアからの質問を聞いたロイはエドワードとの会話とシャーロットとの会話での出来事を話し始めた。
「アイツの言動で、俺がアイツと深い関わりがあったことがわかった。俺の過去について聞こうとしたけど何も答えてくれなかったぜ。お前と同じだ。俺が何か大切なことを思い出したら詳しく説明してくれるってさ。」
「なるほどな。」
「あともう1つ。ある少女と会話をしてる時に思い出したんだけどよ。俺は記憶をなくす前に誰かを憎んでたと思うんだ。」
「感情を思い出したのか。」
「ノア。何か教えてくれるか?」
ノアは静かに首を横に振った。
「ところで肝心の騎士様が見当たらないが?」
「買い出しをお願いしたんだ。食料がなくなるとすぐにクワを食べようと提案してくるからな。」
ロイはクワの頭を撫でながら触りごごちの良さに夢中になる。
クワはテーブルの上で身動き一つせずに固まっていた。置き物と見間違えるほどだ。クワはノアに視線をずっと向けており瞬きはするものの、1度もノアから視線を逸らすことはなかった。
「なに睨んでやがる。笑ったことまだ根にもってんのか?だからお前はあの女に勝てねぇんだよ。」
ノアの言葉にロイは首を傾げた。
ロイが首を傾げている間にクワは固まっていた羽をひれげてノアに威嚇し始めていた。
「グワグワァァァァァァ!?!!??!」
「ノアなに言ってんだよ?クワはいつもおとなしいのに。こんなことになるのはお前とアイツがいる時だけだぞ。」
「相当嫌われてるな。騎士様と俺は。」
「もーーう!!」
ロイはノアに襲いかかる準備をしているクワを捕まえて宥めた。
「落ち着けクワ。大人しくしてくれ。お前が暴れると羽が落ちて掃除しなきゃいけなくなるだろ!」
「クワァ」
ロイの言葉を聞いたクワは羽を閉じて申し訳ない鳴き声を出しながらうるうるとした瞳でロイを見つめた。
「よし。いい子だ。」
ノアはそんな1人と1羽の会話をじとっとした目でみつめていた。
すると扉が開く音がした。
「ただいまロイ。」
爽やかな騎士様のおかえりだった。
ノアは高い声をあげた。
「おかえり!ダーリン!」
ノアの声を聞いたエドワードはこの世にはこんなにも悍ましいものがあるのかとでも言いたいような顔をした。
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