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また君に恋をする
僕はまた君に恋をする
しおりを挟むエドワードは都にある城で書類仕事に追われていた。
トンットンッ
ドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞ。」
エドワードは手を止めることなく声を上げた。
「失礼します。エドワード大佐。残りの書類も持ってきました。」
「ありがとう。空いてるところに置いてくれるかい。」
エドワードの部下であるワイアットは持ってきた書類を置いた。大佐の邪魔にならぬようにすぐにでも部屋から出るべきなのだが真面目な性格の部下は足を止めた。
「エドワード大佐。目元のクマが目立っていますよ。休まれてはいかがですか?」
ワイアットは心配していた。己の上司が帰ってきてからまともな休みを取らず仮眠を繰り返しながら書類仕事をしていたからだ。
「休むよ。全ての仕事をやり終えて、僕は1ヶ月間の有給休暇をとるつもりさ。」
ワイアットは分かっていた。己の上司が1ヶ月間の有給休暇を掴み取るために休みなく働いているということを。
だが、日が過ぎるにつれて濃くなっていくクマをみると、なぜそこまで頑張るのか。ワイアットにはわからなかった。
エドワードは己を心配してくれる部下に目を向ける。ワイアットという部下はしっかりものだ。オリーブ色のベリーショートが特徴的で栗色の瞳をしている。女性のように華奢なうえに童顔を兼ね揃えており第一印象で馬鹿にされることが多い。しかし、素早い動きで敵の懐にはいり小さなナイフで刺す戦闘スタイルは目を見張るものがある。
ワイアットに心配をかけまいと再び口を開こうとする。
バンッ!!
勢いよくドアが開かれる。
「エドワード大佐!!あんた休んでないって本当ですか!?」
「カイル。落ち着きなよ。」
ノックもせずに部屋に飛び込んできたのは体格の良い2人の男だった。
勢いよくドアを開けた部下はカイル。ウルフカットの黒髪に灰色のメッシュが入っていて飲み込まれそうなほどの黒い瞳を持っている。大きな武器を振り回し敵をパワーで圧巻させる戦士だ。
次にカイルをなだめながら部屋に入ってきたのはもう1人の部下アーロンだ。エドワードと同じくブロンドの髪だが、パーマがかかっていてツーブロックにしている。ブルーの瞳のエドワードと違いエメラルドの瞳を持っていた。仕事はしっかりこなす優秀な部下だが、どうも女癖が悪くいつか後ろからナイフで刺されるだろうとエドワードは心配している。
「今日は騒がしいね。」
「大佐!!俺たちは心配してるんすよ。一気にやらずにしっかり休んだうえで仕事に取り掛かってくださいよ。」
カイルの言葉にワイアットは同意ですと言わんばかりに首を大きく縦にふった。
「心配いらないよ。倒れない程度に仕事をしてるんだからね。」
エドワードは微笑みをたやさずに部下を優しく諭す。
「2人とも心配しすぎだよ。大佐は今、愛のために頑張ってるんだからさ。俺たちは応援しなきゃってもんでしょ。大佐。後半分ですよ。頑張ってくださいね。」
他の2人と違いアーロンはエドワードを応援した。
アーロンの言葉を聞きワイアットはエドワードに問いかける。
「愛って‥‥。大佐。あの噂は本当なんですか?大佐の思い人が都を離れて今はトュルヌソルに住んでいるって‥」
すかさずカイルも問いかける。
「俺も聞きました!別れ話の後にエドワード大佐にビンタを喰らわして都から出ていったとか!大佐未練たらたらじゃないす‥モガッ!!!」
アーロンは空気の読めないカイルの口を塞いだ。
エドワードはアーロンの働きを心の中で褒めながら問いに答える。
「そんな感じだよ。でもそんな噂が流れていたなんて困ったものだね。」
「大佐一途っすね!!尊敬します!」
「で、でもやっぱり休んだ方が‥」
「大佐のために美味しい紅茶入れてきますね。」
問いに答えた後も話を続ける部下たちを尻目に、エドワードは書類仕事に戻る。
エドワードは噂とは程遠い真実に心の中で苦笑する。
愛する者が己と過ごした日々を忘れてもエドワードが諦めることはない。
エドワードは愛する者に想いを馳せた。
たとえ、あの時、記憶を無くしたのがエドワードだったとしても。
きっとまた彼に恋をするのだろうと。
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