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また君に恋をする
楽しみだ!
しおりを挟むトュルヌソルに来てから2ヶ月がたった。
ノアの助けによりロイは街に溶け込むことができた。ノアはロイにある事を2つ教えた。
1つ目はこの国について。
この国はキングプロテアという国名で、花の女神に愛された国として栄えている。
さらに説明を続けるノアに耳を傾ける。
ノアの説明を聞きながら、ロイはあることに驚いた。それはこの国に王族が存在しないことだ。ロイは驚きのあまりノアに詰め寄り詳しい説明を求めた。
異世界に来たんだと自覚した時、ロイは考えていた。お伽話のような世界なのだから王様やお姫様がいるのだろう。そして、国が魔王によって滅ぼされそうになり、勇者や聖女が国を救う大冒険に旅立つ。すべてが解決した暁には盛大なパレードが開かれ、勇者たちは勲章を与えられる。勲章を授与される誉れ高き勇者に一目惚れしたお姫様は愛を伝える。美しいお姫様に愛を伝えられた勇者は結婚を申し込む。国民が2人に祝福の言葉を贈る。そしてそして、その歴史は未来ある子供たちの胸を高鳴らせるお話になっていくのだろうと。
たとえ、己が選ばれし勇者でなくともロイはパレードで民に手をふるカッコいい勇者や高潔な聖女や恐れを知らない勇敢な仲間たちをみてみたいとおもっていた。そんなお伽話を実際に体験したいと心の中にある少年心が疼いていたのだ。
だが、実際は少し違っていた。ノアの話を聞くと20年前までは王様が国民を導いていたというのだ。
この国に何が起きたのか。それはロイがいた世界でも起きたことがこの異世界でも起きていた。
反乱軍だ。
王が支配するやり方に異議を唱える者たちが現れたのだ。
王族がなぜ尊いのか?同じ人間ではないか。なぜ王に従わなければいけないのか?我らに自由はないのか。そんな言葉が巷で飛び交うようになった頃。
反乱の火種になることが起きた。
それは隣国を侵略するために王様が国民に貧しい思いを強いたのだ。
それにより国は変わった。
王族はいつでも豪華絢爛。貴族は質素な生活を余儀なくされた。平民に至っては泥の水を啜りながら1日を生き延びようと足掻く者がいたとか。
だから国民は立ち上がった。
反乱軍には平民だけではなく貴族もいた。貴族は軍に武器を流し、平民は数で王族の軍を打ち負かしたそうだ。
王族は捕まり、ギロチンで処刑された。
多くの国民から罵倒を浴びながら王族はこの世を去った。
国民は自由を手に入れたのだ。
説明が終わる頃にはロイは言葉を失っていた。
あまりにも血生臭い話にお伽話への希望は打ち砕かれたのだ。
その後の話では、国民によって選ばれたもの達が国を導いているという。
2つ目は魔法について。
この異世界は、ロイが見たことのない生き物で溢れていた。
異世界には魔力が存在していて、その生き物達はそれをエネルギーにして活動をしている。
では、人間はどうなのか。
ロイは己もノアのように魔法が使えるのかと聞いてみた。
喜ばしいことにロイは魔法を使うことができた。
だが、喜んだのも束の間、使える魔法は限られていた。魔法は才能がすべてなのだとロイは言う。
魔力を感じることができず魔法を一切使うことができないものもいれば、ノアのように多くの魔法を使うことができるものもいる。
魔法を使えるものは少ない。少しでも使えるロイはすごいのだ。とノアはロイを励ました。
説明を受け終わった後、ノアはロイに住む場所を案内して、仕事を紹介した。
ロイが今住んでいる場所は街外れにある小さな家だった。家は小さいがとても大きな庭が付いていた。
ノアによると記憶喪失になる前のロイが住んでいた場所だったらしいのだ。
1年間住み、その後は放置されていた。しかし、この家の庭は色々な種類の薬草が生えていた。理由を聞けば記憶喪失になる前のロイは薬草師だったと言う。
ロイが使える魔法は適所魔法。どんな植物も季節や場所にとらわれず、ロイの魔法にかかれば育つのだと言う。
記憶喪失の前のロイは適所魔法を己の庭にかけたまま、この小さな家から去ったのだとノアは説明をした。
幸いなことにロイは薬草の知識を忘れてはいなかった。
ロイはノアの口利きにより薬草師としてまた働くこができたのだ。
お伽話のようにいかなくとも順風満帆の日々を過ごしていった。
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