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また君に恋をする
君をみつけた。
しおりを挟む森の中は何がでるのかわからない。
ロイは湖からあまり離れないように、鴨を捌けるほどの鋭い切れ味のある石と焚き火をするための木の枝、そして枝に縛り付けられる丈夫なツルを手に入れた。
森を散策しながらロイは己の冷静さに少し驚いていた。
「この先どうすればいいのかわかんねぇけど‥なんか大丈夫な気がするんだよな」
記憶を失う前の己は冷静沈着な性格だったのだろうか。記憶を失い、訳もわからない所で寝ていたら大抵はもっと動揺することだろう。だが、ロイの場合は目が覚めた瞬間少しの不安に襲われたが湖をみつけたことによりなぜか安心してしまったのだ。
己の失われた記憶と湖に関係性があるのだろうか。
それともただ、湖の美しさで心が落ち着いただけなのか。
はたまた、その湖には女神が住んでいて人の心を惑わしているのか。
色々な可能性を思い浮かべながら湖付近に戻ってくる。
己の上衣が干してある木のそばへ向かうとなんという幸運なことだろう。先程、呑気に湖を泳いでいた鴨がその木のそばにいるではないか。
ロイは鴨を捕まえるため森からかき集めたものをそっと地面におき、ゆっくりとした動作で鴨に近づく。
今夜は美味しい肉が食えると喜びの感情が高まり口の中の唾液がとまらなくなる。
あと少し鴨に近づき素早い動作で捕まえようとしてロイは鴨のくちばしをみつめた。
鴨は何匹か魚をくわえておりロイが近づいてくると魚をそっと地面におき、一目散に湖へと戻っていった。
「そんなに食われたくなかったのか?」
ロイは困惑した。
数十秒固まったロイだったが、空腹を満たすためにも急いで火を起こし魚を焼くことにした。
満腹になり気温も先程より下がり涼しくなってきた。干していた上衣も乾いたのでそれを着る。
ロイは満腹による眠気におそわれ、少し眠ることにした。相変わらず呑気に湖で泳いでいる鴨をながめ、ウトウトしだしたロイは気付かぬうちに木陰で眠りについた。
エドワードは、森の中を馬で駆け抜けていた。一日中走り続けた馬は今にも倒れそうなほど疲労しきっている。
「すまない。休みも与えずに走らせてしまって。でもあと少しなんだ。近くにいるはずなんだ。お願いだ頑張ってくれ。」
長年エドワードと共にいるその馬は己の主人が今にも泣き出しそうに声を出しているのを聞いた。己の主人をこんなにも悲しませるなんて。馬は疲労していた体を怒りで包み森の中をかけていった。
気温が涼しくなってきた頃、エドワードは馬からおりて一日中走り続けた愛馬を労い休ませる。
「どこにいるんだ」
エドワードは大切な宝物を見つけるために一日中森の中を探し回っていた。かすかに近くにあると感じるのだが、見つからない。
エドワードは途方に暮れていた。
そんなときだ。
クワッと鳴き声がした。
下を向いていたエドワードは鳴き声のする方へ歩み寄る。雑草が生い茂っている先を抜けるとそこには湖が広がっていた。
あたりを見渡していると大きな鳴き声が耳を劈く。
手で耳を塞ぎながら鳴き声のする方をみると木のそばにいる鴨がこちらを威嚇していた。
エドワードは鴨を視界に入れたあと、その奥で倒れている人をみつける。
鴨があまりにもうるさかったのだろう。
倒れていたはずの人が飛び起きた。
「うるせぇ!!!」
鴨に負けないくらいの大声を出したその男は鴨の首を躊躇なくつかむと無理矢理黙らせた。
「グェ‥」
鴨が黙り込んだ後に男はエドワードに目を向ける。
「あんた誰だ‥」
男は体をこわばらせた。
エドワードを見た瞬間男は先程までぞんざいに扱っていた鴨を大切そうに抱きかかえだした。
そして鴨を抱えながら少しずつ後ろに下がっていく。
そんな男の緊張をほぐそうとエドワードは優しい微笑みをつくり声をかけることにした。
「やぁ、僕はエドワード。森の中をさまよっていたら湖にたどりついたんだ。人が倒れているから驚いたよ。君、大丈夫かい?」
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