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過去の追憶
1ヶ月の仮契約
しおりを挟むガキと1ヶ月間の仮契約をすることになった。てか、させられた。
どうやらガキの魔法学園では15歳になった者は使い魔を従えるように指導される。
普通なら魔力の強い蛇や猫、フクロウ。
強い者ならドラゴンやサラマンダーを従えている。
その中で、このガキは規格外の悪魔を召喚した。
そんな奴が落ちこぼれとは何事だぁ?
お偉いさんに抗議でもするかと考えたが、1週間こいつといてよくわかった。
ガキはその膨大な魔力を制御することができずにいたのだ。暴走しないように精神を一定に保つことに気力を割いていた。
なんとも哀れな奴だ。
廊下を歩けば俺とガキは好奇の目で見られた。ひそひそ声に耳を傾ければ口を揃えて。
「近づくなあいつは危険だ。」
「薄汚い孤児がなんでこの学園にいるんだ。」
「悪魔に魂を売る愚か者。」
「人を殺しそう目で睨まれる。」
なーにを言ってんだか。
幼い頃から指導していれば、魔力の扱いなんて成長と共に身につくものだ。
だが、ガキは孤児院にいたために、まともな魔力指導をされずに育ったのだろう。
さらに言えば、このガキが俺様に魂を売ったなら今頃、俺はガキの後ろを歩いてないっつうの。あいつらの目は節穴か?
さらにさらに、ガキの目は綺麗なサファイアだ。よく見やがれ。
いやいやいやいや。
また褒めちまった。こんなことを考えている場合ではない。どうやってガキから逃げるか考えなければならいというのに。
まぁ、答えなんて出ているがな。
このガキが飽きるまで我慢するしかないのだ。
魔力の制御ができていなくても、適当な攻撃が当たれば瀕死状態だ。
怖いったらないぜ。
話をガキに戻すとしてあいつには友と呼べる奴がいなかった。
ガキの教室は自由に座れる形だ。仲の良いものたちが集まっている中、ガキは隅の方にちょこんと座っていた。
「ハッ、ボッチとは哀れだな。」
「うるさい。お前がいるから1人じゃない。」
俺を数に入れるんじゃねぇ。気色悪いガキだぜ。
昼になり、食堂に移動する。これまた豪華でとても広い空間が広がっていた。
ガキどもがトレーにのった美味しそうな昼ごはんを持ちはしゃぎながらワイワイとテーブルに座る。
主人をみれば、トレーにのった食事は硬そうなパンとシチュー。他のガキどもと比べると質素にも程がある。
すごい奴のトレーはたくさんの食材を使って色彩豊かに盛り付けられているというのに。
この学園のランク制度はなんと残酷か。
「お前、そんな食事で満足か?」
「‥‥ないよりはマシだ。これはお前の分だ。使い魔の食事は主人が用意をするんだが、俺は金がない。すまない。」
ガキは自分のパンとシチューを半分に分け俺に渡した。
このガキのことを知らなければ、渡されたパンとシチューなんて投げ捨てるところだ。
悪魔は眉をひそめながらも食事を受け取り、硬いパンと味の薄めなシチューを口に入れた。
「金を持ってないのに生活できるのか?」
「月に1度支給されるけど、必要な教材や薬代で消える。」
「薬?」
「精神安定剤。高いんだよ。」
「‥‥。」
なんとも哀れなガキだ。
昼が終わり午後の授業が終わり、学生にとっての自由な時間が訪れる。
友と街に繰り出す者、研究会に行く者、魔法体育大会のために体を鍛える者。それぞれの時間を過ごしていた。
「お前は何かしないのか?あいつらみたいに活動とかよ。」
「俺がいても空気を悪くするだけだしな。部屋で魔道書を読んで過ごす。」
ガキは早足で部屋へ戻ろうとしていた。
いやいや、ちょっと待てや。
「人間の時間は短いもんだ。その短い時間を有効に使え。」
「使ってるだろ!」
「いーや、お前に今必要なのは魔力制御の特訓だろうがよ。」
悪魔はテオの額にデコピンをした。
パチンっ!!
「イッ!‥」
痛がるテオに悪魔は続ける。
「これからの自由時間は俺と魔力の制御特訓だ。俺を従えるご主人がこんなにも哀れな奴だなんて認めねぇ。さっさと俺様に豪華な食事と寝床を提供しやがれ。聞いたぞ。上位の奴の使い魔には専用の部屋が与えられるらしいじゃねぇか。」
悪魔は早口に捲し立て、主人に詰め寄る。
詰め寄られた主人は、美しい顔をした悪魔が怒っていると困惑した。
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