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プロローグ
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二人の出会いは最悪だった。
巨大な指先が暗闇を引き裂いていく。
金属がひしゃげる音と共に光が差し込み、武骨な手の持ち主の姿が浮き彫りになる。
その巨人は鋼で出来ていた。
「意識はあるか!?」
巨人の背後から躍り出た人影が語りかける。
私に向けられたであろうその声は体調が悪いのか、ひどい低音ボイスだった。
拓かれた穴から覗く空は見たことがないほど高く、広く――そして汚い。
黒煙が立ち上り、嗅いだことのない不快な香りが湿った風に乗って私の鼻を刺激する。
人影は暗闇の中でうずくまっている私に近づき右手を差し伸べた。
スキンスーツに身を包むその人間は、長身でがっしりとした体格をしている。
肩幅が広く腰まわりが小さい、逆三角形を彷彿とさせる凸凹とした丸みの少ない姿は私達とは異なる人種のようだ。
「保護する。早くそこから出て……うっ」
何かを伝えようとしたその人間は突如口元を覆った。
覆った左手の隙間から赤い液体が滴り落ちる。
「ひっ……血!?」
条件反射的に怯えた私は、差し出された右手を拒否し後退りした。
震えながら今一度状況を確認する。
丸くて狭いカプセルのような空間。5、6人入れば一杯になるだろうか。
外で佇む巨人はまるで西暦時代末期に造られた人型兵器のようだ。
遠くには両足を破壊された別の巨人が横たわり、蒼く輝く蒸気を吹き出しながら機能を停止していた。
ここはどこ?
戦争なんてとっくに終わったはず。
教科書にしか載ってないような殺戮兵器が未だに稼働してるなんて聞いたことがない。
しかしどんなに否定しようと目の前に存在する事実。
それは揺るぎようがない今の私の現実だ。
だったら目の前で吐血しているこの人間は何?
予想はつく。ただ現存していることが信じられなかった。
――だって『男』は大昔に絶滅したはずだもん!
巨大な指先が暗闇を引き裂いていく。
金属がひしゃげる音と共に光が差し込み、武骨な手の持ち主の姿が浮き彫りになる。
その巨人は鋼で出来ていた。
「意識はあるか!?」
巨人の背後から躍り出た人影が語りかける。
私に向けられたであろうその声は体調が悪いのか、ひどい低音ボイスだった。
拓かれた穴から覗く空は見たことがないほど高く、広く――そして汚い。
黒煙が立ち上り、嗅いだことのない不快な香りが湿った風に乗って私の鼻を刺激する。
人影は暗闇の中でうずくまっている私に近づき右手を差し伸べた。
スキンスーツに身を包むその人間は、長身でがっしりとした体格をしている。
肩幅が広く腰まわりが小さい、逆三角形を彷彿とさせる凸凹とした丸みの少ない姿は私達とは異なる人種のようだ。
「保護する。早くそこから出て……うっ」
何かを伝えようとしたその人間は突如口元を覆った。
覆った左手の隙間から赤い液体が滴り落ちる。
「ひっ……血!?」
条件反射的に怯えた私は、差し出された右手を拒否し後退りした。
震えながら今一度状況を確認する。
丸くて狭いカプセルのような空間。5、6人入れば一杯になるだろうか。
外で佇む巨人はまるで西暦時代末期に造られた人型兵器のようだ。
遠くには両足を破壊された別の巨人が横たわり、蒼く輝く蒸気を吹き出しながら機能を停止していた。
ここはどこ?
戦争なんてとっくに終わったはず。
教科書にしか載ってないような殺戮兵器が未だに稼働してるなんて聞いたことがない。
しかしどんなに否定しようと目の前に存在する事実。
それは揺るぎようがない今の私の現実だ。
だったら目の前で吐血しているこの人間は何?
予想はつく。ただ現存していることが信じられなかった。
――だって『男』は大昔に絶滅したはずだもん!
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