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第5章「蟻塚祐絵はやはり敵が多い」
5/矢渕
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「聞いたわよ。上手くやってくれたみたいね」
クソつまらないハイキングが終わり、1人で部屋に戻る途中で嬉しそうに微笑む旭川とすれ違い、俺はその場に立ち止まる。
「まあ、自慢じゃないけど人に嫌われるのだけは上手いからな」
俺は自嘲気味に笑いながら、幼馴染である旭川に言葉を返す。
「それより、お前が恨んでるのは蟻塚だけって話じゃなかったか?嘘の情報を流すだけじゃなく、橘の周りの友人関係も悪化させろなんて」
「あら、不満?」
「急に違う奴の名前が出てきたら何かあったんじゃないかと思うのが普通じゃね?」
ふふふ、と旭川は意味ありげに笑い、自らの唇に指を添える。
「えぇ、まあ、正解よ。あの橘って奴も私に歯向かってきたの。だから、お返しに全部ぶっ壊してやろうって思って。丁度蟻塚と同じグループみたいだったし?貴方がいてくれて助かったわ」
「そりゃあ、どーも」
ぶすっとした顔で、俺はそう返す。
「どうせなら私の代わりに暴力を振るってくれても良かったのよ?好きなんでしょ?喧嘩」
「……、流石に女を殴る趣味はねーな」
ケラケラと笑う旭川を他所に、俺は両手を上げてやれやれと首を振る。
「そういえば小日向はどうしたんだ?アイツこそ人をいたぶるのが大好きな人間だろ?」
「アレはもう良いわ。写真程度にビビって逃げ出すような臆病者だし。帰ったらカレシにお仕置してもらう予定♪」
またも意味ありげに笑う旭川。
どうやら、小日向は付き合う人間を間違えたらしい。
まあ、俺には関係のない話だが。
「てか、本当に捏造だったのか?その写真ってのは」
「当たり前でしょ。どうやって作ったのかは知らないけど私はバレるような真似絶対しないもの」
「……」
どこから来る自身なのやら。
「それにしても本当にあるのかしらね。裏サイトの掲示板なんて。貴方は知らないの?」
「結城くんにも聞かれたなー。知らないっての。興味なし」
「使えないわね」
わざとらしく肩を落として、旭川は俺を睨む。
まぁ、睨まれたところで本当に知らないのだからしょうがない。
「褒めたり貶したり大変だな」
「……何?文句でもあるの?」
何故か一瞬で沸点に到達してしまったらしく、怒りを込めた目で俺を見た旭川は俺の襟元を掴み上げた。
ホントによく似ている。コイツと蟻塚は。
何かが違えばきっと良い友人になっていたことだろう。
だが、そうはならなかった。
既に手遅れ。俺が何を言おうと止まらない場所まで来てしまっている。
だから、これはせめてもの情けだ。
「文句なんかねーよ。ただ、やるなら徹底的にやろうぜ。トラウマになるくらいの奴をな。中途半端は1番嫌いなんだ。お前もそうだろ?」
クソつまらないハイキングが終わり、1人で部屋に戻る途中で嬉しそうに微笑む旭川とすれ違い、俺はその場に立ち止まる。
「まあ、自慢じゃないけど人に嫌われるのだけは上手いからな」
俺は自嘲気味に笑いながら、幼馴染である旭川に言葉を返す。
「それより、お前が恨んでるのは蟻塚だけって話じゃなかったか?嘘の情報を流すだけじゃなく、橘の周りの友人関係も悪化させろなんて」
「あら、不満?」
「急に違う奴の名前が出てきたら何かあったんじゃないかと思うのが普通じゃね?」
ふふふ、と旭川は意味ありげに笑い、自らの唇に指を添える。
「えぇ、まあ、正解よ。あの橘って奴も私に歯向かってきたの。だから、お返しに全部ぶっ壊してやろうって思って。丁度蟻塚と同じグループみたいだったし?貴方がいてくれて助かったわ」
「そりゃあ、どーも」
ぶすっとした顔で、俺はそう返す。
「どうせなら私の代わりに暴力を振るってくれても良かったのよ?好きなんでしょ?喧嘩」
「……、流石に女を殴る趣味はねーな」
ケラケラと笑う旭川を他所に、俺は両手を上げてやれやれと首を振る。
「そういえば小日向はどうしたんだ?アイツこそ人をいたぶるのが大好きな人間だろ?」
「アレはもう良いわ。写真程度にビビって逃げ出すような臆病者だし。帰ったらカレシにお仕置してもらう予定♪」
またも意味ありげに笑う旭川。
どうやら、小日向は付き合う人間を間違えたらしい。
まあ、俺には関係のない話だが。
「てか、本当に捏造だったのか?その写真ってのは」
「当たり前でしょ。どうやって作ったのかは知らないけど私はバレるような真似絶対しないもの」
「……」
どこから来る自身なのやら。
「それにしても本当にあるのかしらね。裏サイトの掲示板なんて。貴方は知らないの?」
「結城くんにも聞かれたなー。知らないっての。興味なし」
「使えないわね」
わざとらしく肩を落として、旭川は俺を睨む。
まぁ、睨まれたところで本当に知らないのだからしょうがない。
「褒めたり貶したり大変だな」
「……何?文句でもあるの?」
何故か一瞬で沸点に到達してしまったらしく、怒りを込めた目で俺を見た旭川は俺の襟元を掴み上げた。
ホントによく似ている。コイツと蟻塚は。
何かが違えばきっと良い友人になっていたことだろう。
だが、そうはならなかった。
既に手遅れ。俺が何を言おうと止まらない場所まで来てしまっている。
だから、これはせめてもの情けだ。
「文句なんかねーよ。ただ、やるなら徹底的にやろうぜ。トラウマになるくらいの奴をな。中途半端は1番嫌いなんだ。お前もそうだろ?」
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