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第4章「橘風佳はそこそこ侮れない」
7/蟻塚
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どいつもこいつも私をイラつかせる奴らばかりだ。
特に結城湊斗。
あいつはなんなんだ?
一体何がしたい?
私に対して、何を求めてる?
わからない。まったく、わからない。
復讐などという訳のわからない説得をされてモヤモヤした気持ちのまま、オリエンテーションに参加してしまったのを少し後悔する。
「もう……良いや」
次も授業の一環で何やらグループ毎で別れてゲームをするようだが、そんな気分には到底なれなかった。
矢渕はムカつくし、柊はウザいし、結城は意味がわからない。
あんな奴らと一緒にいて一体何があるというのか。
……もしかして私に嫌がらせをするのが復讐だとでも?
だとしたら、大成功だ。
こんなにも私は苛立っているのだから。
「……帰りたい」
私は1人、自分の部屋へと続く廊下の壁にそっと背中を預けて座り込んだ。
と、そこへ。
「あれ?なんか見知った顔だと思ったら蟻塚祐絵じゃん。こんなとこで何座ってんの?ウケる」
いかにもギャルっぽい女たちがこちらへ向かって歩いて来る。
1人は中学の頃によく連んでいた旭川文葉だ。
もう1人は知らない。
「なになに?友達?」
「うん、まあ、そんなとこ。中学の時に色々とね」
旭川が飄々とした態度でそう答えると、不敵な笑みを私に向けてクスクスと笑い始めた。
「なに?」
「いや、別に。いつもなら目が合った瞬間に掴みかかってきてたのに今日は随分と大人しいなって。廊下の隅なんかで丸くなっちゃって。陰キャみたい」
「あ?」
私は勢いよく立ち上がって、旭川の胸ぐらを掴みにいく。
だがしかし、パシッ!と私の腕はいとも容易く隣にいた女に掴まれてしまった。
「……!?」
その女は私よりも少し背が低いのにも関わらず、腕を掴むその力は信じられない程に強かった。
「今さ、コイツ旭ちゃんに手を出そうとしてたけどホントに友達?」
「言ったでしょ?色々とね、って」
「ふ~ん。にしてもコイツ細すぎでしょ。喧嘩したって折れちゃうよこれ」
私の腕を掴んだまま、もう1人の女が無遠慮にジロジロと私を観察をしてくる。
「……っ!離せ!」
私は掴まれている腕を強引に振りほどく。
痛い。力強く掴まれていたせいか、腕がジンジンと痛む。
「そういえばあの子はどうしたの?ほら、なんて言ったっけ?えぇっと……そうそう。柊南帆さん。まだ一生懸命虐めてるの?」
「アンタに関係ないでしょ」
「なに?コイツ虐めとかやってんの?もしかして時間とか無駄にすんの好きなタイプ?ンなことするより金持ってる男と遊んだ方がよっぽど有意義でしょ。あ、でもアンタには無理か。だって不細工だし」
「こらこら。そういうのはやめてあげてね。蟻塚祐絵はこう見えて結構傷つきやすい子なんだから」
旭川と名前も知らない女がケラケラと私を馬鹿にするように笑う。
……ああ、もう駄目だ。
コイツらのヘラヘラした態度が私の神経を逆撫でする。
殺してやろうか、今ここで。
「そんなに睨まないでよ。アンタがあんな奴好きになるのがいけないんでしょ?」
「……っ」
「えー?どーゆーこと?」
「この子はさ、好きな男が「柊って奴、可愛いよな」なんて言っちゃったもんだから嫉妬して惨めにも柊南帆を虐め始めちゃったんだよね~。乙女すぎて超かわいいでしょ?」
ププッ、と旭川がわざとらしく笑う。
本当なら掴みかかってぶん殴ってやりたいところだが、余計な女がいてはそれも敵わない。
私はただ耐えて拳を力いっぱい握ることしか出来ず、歯噛みする。
「まあでも、その蟻塚祐絵の好きな男ならもう私が貰っちゃいましたけど」
「……え」
その言葉を一瞬理解出来ず、私はただ呆然とする。
何も考えられなかった。
いや、何も考えたくなかった。
あの人がもう、こんな奴の彼氏などと。
「ホントに分かりやすいよねぇ、蟻塚祐絵って。だからこそ、弄り甲斐があるんだけど」
「……嘘、でしょ?」
「ホントだって。なんなら2人で撮ったプリクラ見る?キスとかしてるけど」
そう言って、旭川が手に持っているスマホをこちらに向ける。
そこには、2人で仲睦まじく肩を寄せ合う男女の姿があった。
女は間違いなく旭川だ。そして、男の方は……。
「……っ」
気付けば走り出していた。
ただ逃げるように。
現実から目を背けるように。
もう……良いや。
何もかも……どうでもいい。
学校も、家族も、友達も。
全て、すべて、消えてしまえばいいのに。
特に結城湊斗。
あいつはなんなんだ?
一体何がしたい?
私に対して、何を求めてる?
わからない。まったく、わからない。
復讐などという訳のわからない説得をされてモヤモヤした気持ちのまま、オリエンテーションに参加してしまったのを少し後悔する。
「もう……良いや」
次も授業の一環で何やらグループ毎で別れてゲームをするようだが、そんな気分には到底なれなかった。
矢渕はムカつくし、柊はウザいし、結城は意味がわからない。
あんな奴らと一緒にいて一体何があるというのか。
……もしかして私に嫌がらせをするのが復讐だとでも?
だとしたら、大成功だ。
こんなにも私は苛立っているのだから。
「……帰りたい」
私は1人、自分の部屋へと続く廊下の壁にそっと背中を預けて座り込んだ。
と、そこへ。
「あれ?なんか見知った顔だと思ったら蟻塚祐絵じゃん。こんなとこで何座ってんの?ウケる」
いかにもギャルっぽい女たちがこちらへ向かって歩いて来る。
1人は中学の頃によく連んでいた旭川文葉だ。
もう1人は知らない。
「なになに?友達?」
「うん、まあ、そんなとこ。中学の時に色々とね」
旭川が飄々とした態度でそう答えると、不敵な笑みを私に向けてクスクスと笑い始めた。
「なに?」
「いや、別に。いつもなら目が合った瞬間に掴みかかってきてたのに今日は随分と大人しいなって。廊下の隅なんかで丸くなっちゃって。陰キャみたい」
「あ?」
私は勢いよく立ち上がって、旭川の胸ぐらを掴みにいく。
だがしかし、パシッ!と私の腕はいとも容易く隣にいた女に掴まれてしまった。
「……!?」
その女は私よりも少し背が低いのにも関わらず、腕を掴むその力は信じられない程に強かった。
「今さ、コイツ旭ちゃんに手を出そうとしてたけどホントに友達?」
「言ったでしょ?色々とね、って」
「ふ~ん。にしてもコイツ細すぎでしょ。喧嘩したって折れちゃうよこれ」
私の腕を掴んだまま、もう1人の女が無遠慮にジロジロと私を観察をしてくる。
「……っ!離せ!」
私は掴まれている腕を強引に振りほどく。
痛い。力強く掴まれていたせいか、腕がジンジンと痛む。
「そういえばあの子はどうしたの?ほら、なんて言ったっけ?えぇっと……そうそう。柊南帆さん。まだ一生懸命虐めてるの?」
「アンタに関係ないでしょ」
「なに?コイツ虐めとかやってんの?もしかして時間とか無駄にすんの好きなタイプ?ンなことするより金持ってる男と遊んだ方がよっぽど有意義でしょ。あ、でもアンタには無理か。だって不細工だし」
「こらこら。そういうのはやめてあげてね。蟻塚祐絵はこう見えて結構傷つきやすい子なんだから」
旭川と名前も知らない女がケラケラと私を馬鹿にするように笑う。
……ああ、もう駄目だ。
コイツらのヘラヘラした態度が私の神経を逆撫でする。
殺してやろうか、今ここで。
「そんなに睨まないでよ。アンタがあんな奴好きになるのがいけないんでしょ?」
「……っ」
「えー?どーゆーこと?」
「この子はさ、好きな男が「柊って奴、可愛いよな」なんて言っちゃったもんだから嫉妬して惨めにも柊南帆を虐め始めちゃったんだよね~。乙女すぎて超かわいいでしょ?」
ププッ、と旭川がわざとらしく笑う。
本当なら掴みかかってぶん殴ってやりたいところだが、余計な女がいてはそれも敵わない。
私はただ耐えて拳を力いっぱい握ることしか出来ず、歯噛みする。
「まあでも、その蟻塚祐絵の好きな男ならもう私が貰っちゃいましたけど」
「……え」
その言葉を一瞬理解出来ず、私はただ呆然とする。
何も考えられなかった。
いや、何も考えたくなかった。
あの人がもう、こんな奴の彼氏などと。
「ホントに分かりやすいよねぇ、蟻塚祐絵って。だからこそ、弄り甲斐があるんだけど」
「……嘘、でしょ?」
「ホントだって。なんなら2人で撮ったプリクラ見る?キスとかしてるけど」
そう言って、旭川が手に持っているスマホをこちらに向ける。
そこには、2人で仲睦まじく肩を寄せ合う男女の姿があった。
女は間違いなく旭川だ。そして、男の方は……。
「……っ」
気付けば走り出していた。
ただ逃げるように。
現実から目を背けるように。
もう……良いや。
何もかも……どうでもいい。
学校も、家族も、友達も。
全て、すべて、消えてしまえばいいのに。
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